日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PB

(501)

2014年11月7日(金) 13:30 〜 15:30 501 (5階)

[PB089] 小学校1年生のリテラシーに及ぼす家庭の文字環境の影響(1)

幼児期の文字環境の検討

原孝成1, 白川佳子2, 無藤隆3, 金沢緑4, 奥村智人5 (1.鎌倉女子大学, 2.共立女子大学)

キーワード:リテラシー, 幼児期の文字環境, 包括的領域読み能力検査(CARD)

目的 本研究では,幼児期の家庭における文字環境の差異が小学校入学後のリテラシーにいかなる影響を及ぼすかについて検討することを目的とする.
方法 調査対象:福島県と広島県内の小学校15校の1年生とその保護者.保護者と児童のデータがそろっている597組を本研究の分析対象に用いた.調査時期:2014年1月~3月
調査方法:①児童用読み調査:大阪医科大学奥村研究グループが作成した包括的領域読み能力検査(CARD)の短縮版をクラスごとに実施した.検査内容は,「ことばさがし」,「聞き取り」,「音調べ」,「文の読み①」である.②保護者アンケート:調査協力校から児童を通して各家庭に配付・回収し,学校ごとにまとめて返送してもらった.質問項目は,「幼児期の読み聞かせの程度R」(1.全く読まなかった―6.毎日読んでいた),「読み聞かせの開始月齢」(月齢を記入),「(1日に)読み聞かせを行った時間」(1.5分程度―5.それ以上),「就学前に園から絵本を定期購読したか」(はい1,いいえ0),「就学前に通信販購読で絵本を購入したか」(はい1,いいえ0),「就学前に(1,2以外で)絵本の購入した程度R」(1.全くなかった―4.非常によくあった),「就学前の家庭の子ども向けの本の冊数」(1.ない―7.100冊以上),「就学前の家庭の子ども向けDVD,CDの枚数」(1.ない―7.100枚以上),「就学前の図書館の利用頻度R」(1.1度も連れていっていない―6.1週間に1回以上),「就学前の1か月あたりの平均的な借り出し冊数」(冊数を記入),「就学前の週当たりの習い事の回数」(回数を記入)であった.
結果と考察 小学校1年時のリテラシーと幼児期の文字環境の関係を明らかにするために,「ことばさがし」,「聞き取り」,「音調べ」,「文の読み①」のそれぞれの得点を平均点で折半し平均点より高い群をH群,平均点よりも低い群をL群として幼児期の文字環境に関する各質問項目に対してt検定を行った(Table 1参照).その結果,「ことばさがし」では有意差はみられなかった.また,「文読み①」では,「就学前に絵本の購入をした程度」で有意差がみられたのみであった.それに対して,「聞き取り」と「音調べ」では「幼児期の読み聞かせの程度」,「就学前の家庭の子ども向けの本の冊数」,「図書館の利用頻度R」,「週当たりの習い事の回数」,及び「聞き取り」においては「就学前に絵本の購入した程度R」で有意差がみられた.このことから,小学校1年時の「聞き取り」や「音調べ」のような聴覚的なリテラシーH群はL群と比べて,幼児期に読み聞かせの頻度も多く,就学前の絵本の冊数や購入数,図書館の利用頻度などの文字環境が豊かであったことが示された.
本研究は,科学研究費補助金基礎研究(C)「小学校1年生の読み書き能力に関する幼児教育環境の検討(25350942)代表:白川佳子」の助成を受けたものである.