[PC041] 議論力育成を組み込んだ理科授業に対する大学生の評価
質問紙調査による分析1
キーワード:議論力育成授業, 大学生の認識, 思考力育成
科学的内容を扱う議論力育成は、科学技術に関する議論に参加する市民の育成にも、科学を進化し続けるものとして深く理解するためにも重要で、教育実践が広がるためにはその意義が理解される必要もある。西垣他(2013)は大学1 年生向けの授業で、議論力育成を組み込んだ理科授業を紹介しその反応を分析した。受講生の多くは実践に反対はしないが、約半数は慎重姿勢を示した。賛同派の学生には思考力伸長への期待を示す傾向が、慎重派の学生には児童・教師・学校の事情による実現困難に言及する傾向があった。本研究では、議論力育成授業への評価の背景をより明確に把握するため、質問紙法を用いて検討する。
方 法
調査協力者 4 年制国立大学の教育・発達系学部の1 年生281 名。分析対象は262 名。
調査票 A4裏表1 枚で、「受講前の科学的リテラシーの指導に対する賛否」を尋ねた後、「受講後の小学校での実践に対する賛否」「中学・高校での実践に対する賛否」をそれぞれ4 件法で尋ね、理由記述も求めた(以上表面)。
裏面は3つの大項目から成り、(1)実施時期は「小から高まで継続的」「中高生以上」「小学のみ」の3 択、(2)効果は思考力・知識獲得・応用活用・意見形成・理科全般・能動性・興味関心・協調性に「そう思う」から「そう思わない」の4 件法で、(3)問題点は知識獲得支障、受験支障、時間消費、小学生困難、無意義に4 件法で回答を求めた。
手順 2013/04/26 と05/17 に第2 著者が実施した授業の終わりに質問紙を配布、回収した。回答時間は約5分。授業は「生きるための知識や技能を育てる教育実践―科学的リテラシーを育成する実践と成果評価」と題し、理科の学習内容や科学と関連する社会の諸問題について議論する力の育成を目ざした小学校授業実践を紹介した。
結果と考察
【賛否】実践への賛否人数と実施時期質問の回答をTable1 に示す。中高のほうが小学よりも有意に高い賛同を得ていた(t(261)=3.4, p<.001)。
小・中高両方に賛成の者(賛同群)が127 人、いずれかで賛成しない者(慎重群)が135 人で、受講前の認識と連関があった(χ2(2)=7.4, p<.05)。この結果は西垣他(2013)と同様であった。
【賛同-慎重群比較】実践の効果と問題点に関する13 項目に因子分析(最尤法、Promax)を行ったところ、「理科学力」、「波及効果」、「少意義」の3因子が抽出され、前2 因子間に有意な相関があった。一方で各項目の評定点をBonferroni 検定したところ、両群で有意差があったのは、応用活用・意見形成・能動性・興味関心・小学困難・無意義の6 項目で、思考力や知識獲得では有意差がなく、西垣他(2013)とは異なる傾向の結果であった。2 つの研究成果をまとめると、賛同群は能動性などの波及効果を高く認め、理由記述では思考力育成にも言及するのだが、慎重群は議論力育成授業に時間を使う意義と可能性に否定的でそれを理由として記述するが、思考力には言及しないだけで育成できないとも思っていないと推測されうる。
この点は理由記述のテキスト分析を併用して確認する必要がある。
方 法
調査協力者 4 年制国立大学の教育・発達系学部の1 年生281 名。分析対象は262 名。
調査票 A4裏表1 枚で、「受講前の科学的リテラシーの指導に対する賛否」を尋ねた後、「受講後の小学校での実践に対する賛否」「中学・高校での実践に対する賛否」をそれぞれ4 件法で尋ね、理由記述も求めた(以上表面)。
裏面は3つの大項目から成り、(1)実施時期は「小から高まで継続的」「中高生以上」「小学のみ」の3 択、(2)効果は思考力・知識獲得・応用活用・意見形成・理科全般・能動性・興味関心・協調性に「そう思う」から「そう思わない」の4 件法で、(3)問題点は知識獲得支障、受験支障、時間消費、小学生困難、無意義に4 件法で回答を求めた。
手順 2013/04/26 と05/17 に第2 著者が実施した授業の終わりに質問紙を配布、回収した。回答時間は約5分。授業は「生きるための知識や技能を育てる教育実践―科学的リテラシーを育成する実践と成果評価」と題し、理科の学習内容や科学と関連する社会の諸問題について議論する力の育成を目ざした小学校授業実践を紹介した。
結果と考察
【賛否】実践への賛否人数と実施時期質問の回答をTable1 に示す。中高のほうが小学よりも有意に高い賛同を得ていた(t(261)=3.4, p<.001)。
小・中高両方に賛成の者(賛同群)が127 人、いずれかで賛成しない者(慎重群)が135 人で、受講前の認識と連関があった(χ2(2)=7.4, p<.05)。この結果は西垣他(2013)と同様であった。
【賛同-慎重群比較】実践の効果と問題点に関する13 項目に因子分析(最尤法、Promax)を行ったところ、「理科学力」、「波及効果」、「少意義」の3因子が抽出され、前2 因子間に有意な相関があった。一方で各項目の評定点をBonferroni 検定したところ、両群で有意差があったのは、応用活用・意見形成・能動性・興味関心・小学困難・無意義の6 項目で、思考力や知識獲得では有意差がなく、西垣他(2013)とは異なる傾向の結果であった。2 つの研究成果をまとめると、賛同群は能動性などの波及効果を高く認め、理由記述では思考力育成にも言及するのだが、慎重群は議論力育成授業に時間を使う意義と可能性に否定的でそれを理由として記述するが、思考力には言及しないだけで育成できないとも思っていないと推測されうる。
この点は理由記述のテキスト分析を併用して確認する必要がある。