[PC066] 教師と児童の“授業ルール”認識のズレの特徴とその解消(2)
授業ルールに関わる相互行為に着目して
キーワード:授業ルール, 教室談話, 注意
問題意識
「授業ルール」(Shultzら, 1983; 有馬, 2000)について教師と児童の間にズレがあることは教室の秩序だけでなく,学級生活にも負の影響を与える (笹屋ら, 2014)。ズレの解消のために,教師の示す授業ルールを児童が理解するとともに(Boostrom, 1991),教師も児童が従っている授業ルールを理解することが重要であろう。
そこで,本研究では,教師と児童の授業ルール認識のズレを顕在化・解消するための相互行為について示唆を得ることを目的とする。ズレの存在が明示されることが予想されるため,教師による注意場面を事例として採り上げる。なお,本研究は「教師と児童の“授業ルール”認識のズレの特徴とその解消(1)」と一連の研究である。
方法
研究協力者 (1)に同じ。
授業観察 2013年10月から12月まで1日4授業,毎週1日観察した。 教師の注意場面における教室談話を抽出した。児童名は仮名とした。
結果と考察
1抽出された事例 分析対象とした5事例のうち, ズレが顕在化した2事例では,教師の注意に児童がすぐには従わなかった(本稿で考察)。一方,3事例では,名前を呼ばれるなどの注意を受けた児童が,なぜ注意されたか自分で考え,教師の求める授業ルールにすぐに従っていた。そのため,求めていた授業ルールが何か言語化されなかった。
2事例における相互行為の特徴 事例は, 児童の質問に教師が答える活動中である。
教師は「授業内容と関わらない発言はしない」授業ルールに従い,仁科に対し,授業を進めていく上で関係のない話を行わないよう注意した。しかし,仁科「はなしをとぎらせない」授業ルールに従い,質問内容を述べ始めた。
それに対し,教師は「授業内容に関わらないと前置きした発言はしない」授業ルールに従い, 前置きの変更を求めた。仁科は発話を途切れさせ,前置きを変更することで質問が許可された。
教師と児童の両者が自らの主張する授業ルールを一部変更することにより,お互いの授業ルールの目的が果たされる形で相互行為を遂行することができたと考えられる。つまり,この事例において,児童は「発言を最後までする」という目的が,教師は教室の秩序に関わる「関係ない発言を防ぐ」という目的が果たせている。
3全事例に対する考察 児童が教師の示す授業ルールにすぐには従わずに,教師と相互行為をすことで,教師の授業ルールが言語化され,児童の考える授業ルールとのズレが顕在化した。 顕在化はズレの解消の前提条件となる。教師の求める授業ルールに従わない児童と,お互い目的を尊重した相互行為をすることで授業ルールのズレが解消される可能性が示唆された。
「授業ルール」(Shultzら, 1983; 有馬, 2000)について教師と児童の間にズレがあることは教室の秩序だけでなく,学級生活にも負の影響を与える (笹屋ら, 2014)。ズレの解消のために,教師の示す授業ルールを児童が理解するとともに(Boostrom, 1991),教師も児童が従っている授業ルールを理解することが重要であろう。
そこで,本研究では,教師と児童の授業ルール認識のズレを顕在化・解消するための相互行為について示唆を得ることを目的とする。ズレの存在が明示されることが予想されるため,教師による注意場面を事例として採り上げる。なお,本研究は「教師と児童の“授業ルール”認識のズレの特徴とその解消(1)」と一連の研究である。
方法
研究協力者 (1)に同じ。
授業観察 2013年10月から12月まで1日4授業,毎週1日観察した。 教師の注意場面における教室談話を抽出した。児童名は仮名とした。
結果と考察
1抽出された事例 分析対象とした5事例のうち, ズレが顕在化した2事例では,教師の注意に児童がすぐには従わなかった(本稿で考察)。一方,3事例では,名前を呼ばれるなどの注意を受けた児童が,なぜ注意されたか自分で考え,教師の求める授業ルールにすぐに従っていた。そのため,求めていた授業ルールが何か言語化されなかった。
2事例における相互行為の特徴 事例は, 児童の質問に教師が答える活動中である。
教師は「授業内容と関わらない発言はしない」授業ルールに従い,仁科に対し,授業を進めていく上で関係のない話を行わないよう注意した。しかし,仁科「はなしをとぎらせない」授業ルールに従い,質問内容を述べ始めた。
それに対し,教師は「授業内容に関わらないと前置きした発言はしない」授業ルールに従い, 前置きの変更を求めた。仁科は発話を途切れさせ,前置きを変更することで質問が許可された。
教師と児童の両者が自らの主張する授業ルールを一部変更することにより,お互いの授業ルールの目的が果たされる形で相互行為を遂行することができたと考えられる。つまり,この事例において,児童は「発言を最後までする」という目的が,教師は教室の秩序に関わる「関係ない発言を防ぐ」という目的が果たせている。
3全事例に対する考察 児童が教師の示す授業ルールにすぐには従わずに,教師と相互行為をすことで,教師の授業ルールが言語化され,児童の考える授業ルールとのズレが顕在化した。 顕在化はズレの解消の前提条件となる。教師の求める授業ルールに従わない児童と,お互い目的を尊重した相互行為をすることで授業ルールのズレが解消される可能性が示唆された。