[PD058] イギリスにおける算数困難児への指導
Wave3教材を中心に
キーワード:算数, イギリス, 教材
はじめに
The Department for Education(2013)によると,イギリスでは,ナショナルカリキュラムが1989年に導入されている。年齢による区分をみると,Key Stage 1の一部とKey Stage2が日本の小学校段階にあたる。算数では,1,2年生で「Ma1:数学の利用・応用」「Ma2:数」「Ma3:図形・空間・測定」の三つの内容領域,3~6年生でこれに,「Ma4:データの取り扱い」を加えた四つの内容領域を学習する。Key Stage1では,到達水準の範囲を水準1~3とし,Key Stage1の終わりである7才に水準2に到達していることを目標としている。Dowker(2009)によると,算数の学力低下の対策のために1999年のNational Numeracy Strategyが導入され,国家アセスメントテストにおける小学校の子どもの成績は改善している。その中で特別な支援を要する子どもに対して,子どもに応じた支援を行っている。支援区分の一つとなるのが,次の三つのWaveである。
区分 介入の内容
Wave1 質の高いリテラシーアワーや通常の算数の授業の中で全員のいる場で効果的に学ぶ。
Wave2 学年相応の学力に追いつき,学習が可能になるように少人数グループで学ぶ。
Wave3 学年相応の学力にはかなり遅れており,個別化された支援で学ぶ。具体的な目標の達成に向けて1対1または非常に小さなグループを提供されうる。
そして,Dyscalculiaを含む算数困難児への効果的な介入の一つとして,Wave3教材を使用することが含まれている。いったいどのような教材が含まれるのであろうか。
目的
イギリスで支援を要する子どもが用いているWave3教材の内容を明らかにする。
方法
Wave3に関連する文献を収集し,教材やその使い方を中心に日本の教材と比較し,検討を行う。
内容
Dowker(2009) によると,Wave3教材は,教師のアセスメントを通じて確認されたエラーおよび誤認を訂正するために,子どもたちが使用できるように開発された。これらの中には,算数的な困難をもつ多くの子どもたちが,数や算数操作の言語的,視覚的,抽象的な十分な表現を構築するために失敗しているとの見解に基づいているプログラムもある。そのため,ある一つの感覚を用いた教材で学ぶのではなく,多感覚を用いて学ぶことが強調されている。そこで,数や算数操作の学習のための具体的な教材の例として,カウンター,サイコロ,ドミノ,リンクキューブ,ベース10の棒,10のフレーム,Numiconが挙げられている。教材の与え方も重要であり,教材が最も成功して使用された事例では,専門家による研修を受けた指導者が指導を行っていた。また,指導のためにWave3算数教材のUsing the PackがThe Department for Education and Skillから出されている。
考察
Wave3教材の例を見ると,日本では,取り出し支援や特別支援学級等の個別の学習の際に,全く同じ物ではないが,同様の多感覚を用いた教材が用いられている。イギリスの教材の中にも,日本において効果的に活用できるものがあるではないだろうか。というのも,イギリスにおいて,Wave3教材の有効性の評価については,2005年からは国家レベルでWave3教材を導入してから,学力的に大きな進歩を遂げ,Wave3教材で学んだ子ども達が,より積極的な態度や高い自尊心,算数的な活動に参加する大きな意欲を示している。また,これらの教材の目的に応じた指導法もまとめられているからである。今後の課題として,Wave3教材の成果については,初期段階の報告にとどまっており,さらなる情報収集により,よりよい活用法が得られるものと思われる。
文献
Dowker(2009) What Works for Children with Mathematics Difficulties?
The Department for Education(2013) The national curriculum in England Key stages 1 and 2 framework documentt
The Department for Education(2013)によると,イギリスでは,ナショナルカリキュラムが1989年に導入されている。年齢による区分をみると,Key Stage 1の一部とKey Stage2が日本の小学校段階にあたる。算数では,1,2年生で「Ma1:数学の利用・応用」「Ma2:数」「Ma3:図形・空間・測定」の三つの内容領域,3~6年生でこれに,「Ma4:データの取り扱い」を加えた四つの内容領域を学習する。Key Stage1では,到達水準の範囲を水準1~3とし,Key Stage1の終わりである7才に水準2に到達していることを目標としている。Dowker(2009)によると,算数の学力低下の対策のために1999年のNational Numeracy Strategyが導入され,国家アセスメントテストにおける小学校の子どもの成績は改善している。その中で特別な支援を要する子どもに対して,子どもに応じた支援を行っている。支援区分の一つとなるのが,次の三つのWaveである。
区分 介入の内容
Wave1 質の高いリテラシーアワーや通常の算数の授業の中で全員のいる場で効果的に学ぶ。
Wave2 学年相応の学力に追いつき,学習が可能になるように少人数グループで学ぶ。
Wave3 学年相応の学力にはかなり遅れており,個別化された支援で学ぶ。具体的な目標の達成に向けて1対1または非常に小さなグループを提供されうる。
そして,Dyscalculiaを含む算数困難児への効果的な介入の一つとして,Wave3教材を使用することが含まれている。いったいどのような教材が含まれるのであろうか。
目的
イギリスで支援を要する子どもが用いているWave3教材の内容を明らかにする。
方法
Wave3に関連する文献を収集し,教材やその使い方を中心に日本の教材と比較し,検討を行う。
内容
Dowker(2009) によると,Wave3教材は,教師のアセスメントを通じて確認されたエラーおよび誤認を訂正するために,子どもたちが使用できるように開発された。これらの中には,算数的な困難をもつ多くの子どもたちが,数や算数操作の言語的,視覚的,抽象的な十分な表現を構築するために失敗しているとの見解に基づいているプログラムもある。そのため,ある一つの感覚を用いた教材で学ぶのではなく,多感覚を用いて学ぶことが強調されている。そこで,数や算数操作の学習のための具体的な教材の例として,カウンター,サイコロ,ドミノ,リンクキューブ,ベース10の棒,10のフレーム,Numiconが挙げられている。教材の与え方も重要であり,教材が最も成功して使用された事例では,専門家による研修を受けた指導者が指導を行っていた。また,指導のためにWave3算数教材のUsing the PackがThe Department for Education and Skillから出されている。
考察
Wave3教材の例を見ると,日本では,取り出し支援や特別支援学級等の個別の学習の際に,全く同じ物ではないが,同様の多感覚を用いた教材が用いられている。イギリスの教材の中にも,日本において効果的に活用できるものがあるではないだろうか。というのも,イギリスにおいて,Wave3教材の有効性の評価については,2005年からは国家レベルでWave3教材を導入してから,学力的に大きな進歩を遂げ,Wave3教材で学んだ子ども達が,より積極的な態度や高い自尊心,算数的な活動に参加する大きな意欲を示している。また,これらの教材の目的に応じた指導法もまとめられているからである。今後の課題として,Wave3教材の成果については,初期段階の報告にとどまっており,さらなる情報収集により,よりよい活用法が得られるものと思われる。
文献
Dowker(2009) What Works for Children with Mathematics Difficulties?
The Department for Education(2013) The national curriculum in England Key stages 1 and 2 framework documentt