日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(501)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 501 (5階)

[PD098] 大学生の生と死に対する態度とゲーム体験の関連

小花和ライト尚子1, 中谷有里2 (1.武庫川女子大学, 2.湘南美容外科クリニック)

キーワード:死に対する態度, 生に対する態度, ゲーム体験

目的 生命や死に対する態度には性差があり,個人的な経験によって影響を受けると指摘されている(隈部, 2006;木田, 2008)。ゲーム機やパソコンあるいはネットを通じたゲーム体験の中で,死んでも再び生き返るキャラクターを見る機会によって影響を受ける可能性も指摘されている(小松, 2000)。一方,ゲーム上でキャラクターを育成する経験は,生き物を擬似的に育成する体験となるため,生や死について理解を深める機会になる可能性もある。本研究では大学生を対象に,生と死に対する態度とゲーム体験との関連を検討した。
方法 調査協力者:近畿圏内の大学生162名(男性79名,M = 20.7歳)に個別に配布し回収(有効回答151名)。調査内容:①ゲーム体験:「1日最低でも1回」,「1週間に数回」,「これまでにしたことがある」,「したことがない」から1つ選択。したことがある場合にはゲーム名称の記入を依頼。②生と死に対する態度:田中(2012)から「死に対する恐怖」9項目,「生を全うさせる意思」7項目,「人生に対して死が持つ意味」6項目,「死後の生活の存在への信念」4項目,「生に対する態度」6項目について「非常にそう思う」から「全くそう思わない」までの5件法。③信仰する宗教・入院経験・死別経験の有無:2件法。
結果 ゲーム中に殺傷がある「残虐性」,キャラクターの育成がある「育成性」,キャラクターが死んでも生き返る「復活性」の有無によってゲームを分類した (Table 1)。ゲーム経験がない2名を除外し,性によるゲーム特徴の偏りを検討した結果,残虐性 (p = .006),復活性 (p = .000) があるゲーム体験は,男性に多いことが示された。
生と死に対する態度の下位尺度「生を全うさせる意志」,「生に対する態度」では十分な信頼性が得られなかったため (α < .60),各1項目を除外して得点を算出した。信仰する宗教があった10名は分析から除外し,入院経験および死別経験による各下位尺度得点への影響を検討した結果,主効果,交互作用ともに認められなかった (F(1, 135)≦ 3.34)。ゲームの特徴に性との関連が認められたため,生と死に対する態度の下位尺度得点ごとに,各特徴と性による分散分析を行った。「生を全うさせる意志」得点では,残虐性と性による交互作用が有意であり (F(1,135) = 6.98, p = .009),残虐性がある場合には男性は女性よりも得点が高く,女性では残虐性がない場合に得点が高かった。「人生に対して死が持つ意味」得点では,育成性と性による交互作用が有意であり (F(1,135) = 4.35, p = .039),育成性がある場合には女性は男性よりも得点が高かった (Figure 1)。いずれのゲームの特徴との組合せでも,性による主効果が「人生に対して死が持つ意味」得点 (F(1,135) ≧ 4.27, p≦ .041),「死後の生活の存在への信念」得点 (F(1,135) ≧ 7.64, p ≦ .006),「生に対する態度」得点 (F(1,135) = 16.67, p = .000) で有意であり,女性の得点が男性よりも高かった。ゲーム体験による生と死に対する態度への影響というよりも,生と死に対する態度によって,選択されたゲームの特徴が異なる可能性も考えられた。