日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PE010] 学級集団及び仲間集団アイデンティティが学級内の向社会的行動に与える影響

堀井和朗 (上越教育大学)

キーワード:学級集団アイデンティティ, 仲間集団アイデンティティ, 向社会的行動

問題と目的
思春期の児童生徒にとっては,仲間集団の重要性が高まる。そのため,仲間関係を維持しようとするがゆえに関わり合いが狭い範囲にとどまる傾向があると考えられる。本研究で扱う向社会的行動に関しても例外ではないだろう。しかし,学級で共に生活するうえで,学級の中で困っている人がいれば,相手が誰であれ手を差し伸べられる状態が望ましい。そこで,集団アイデンティティ(以下ID)の視点から,上位の集団を意識させることで,下位集団間を協力関係に変化させられることを示したDovidio, Gaertner, & Validzic (1998) の共通内集団アイデンティティモデルに着目した。本研究では,上位の集団である学級集団ID・下位の集団である仲間集団IDと向社会的行動の関連を明らかにする。
方法
対象 中学1,2年生(男子334名,女子315名)を対象に,4月下旬~5月上旬に調査を実施した。
質問紙の構成
①向社会的行動 西村・村上・櫻井(2012)を参考に,6項目を選定し,行動の対象が「仲間グループの人」「仲間グループ以外のクラスの人」の2通り計12項目(4件法)の質問項目を作成した。
②集団ID 早瀬・坂田・高口(2011), 越(2007)を参考に,7項目を選定し,学級集団IDと仲間集団IDの2通り計14項目(4件法)の質問項目を作成した。
結果と考察
学級集団ID・仲間集団IDをそれぞれ高・中・低群に分け独立変数とし,仲間集団以外への向社会的行動を従属変数とした2要因の分散分析を行った。各群の人数は,学級低・仲間低群187名,学級低・仲間中群が38名,学級低・仲間高群が49名,学級中・仲間低群が37名,学級中・仲間中群が54名,学級中・仲間高群が31名,学級高・仲間低群が22名,学級高・仲間中群が64名,学級高・仲間高群が176名であった。
分析の結果,学級集団ID,仲間集団IDそれぞれの主効果が見られ,学級集団,仲間集団IDが高いほど,仲間集団以外への向社会的行動を行うことが示された。交互作用は見られなかった。群間の違いを明らかにするために1要因9水準の分散分析を行った(Figure1)。その結果,学級高・仲間低群よりも学級高・仲間高群の向社会的行動得点が有意に高かった。仲間集団IDが低い状態で,たとえ学級集団に高いIDをもつことができたとしても,仲間集団以外への向社会的行動が行われにくいと考えられる。
以上より,上位の集団である学級集団IDが高いほど,仲間以外への向社会的行動を行えること,その際に仲間集団IDは低くないことが重要であることが示された。したがって,生徒が仲間集団を含め,学級全体のつながりを感じられる指導が重要だと考えられる。