[PF008] メダカを用いた実験室外オペラント条件づけ教材開発の試み
キーワード:オペラント条件づけ, メダカ
目的
学習心理学の主要理論の一つである条件づけ理論は,教育心理学や臨床心理学等は勿論のこと,今日では行動分析学や行動経済学などにも応用され多岐に渡って展開されている。心理学を学ぶ者であれば必ず理解すべき理論の一つであるといえよう。しかし2009年度に行われた林の調査(林,2013より)によると,学習心理学を受講した学生の73%が条件づけ理論を難しいと感じている。当該理論はパブロフの犬やスキナーの鳩のように動物実験を通じて発展してきた。教科書等の座学のみでは難しいのは当たり前と言える。実際に動物実験を行うことで理解が促進されよう。
しかし,動物実験を行うためには,被験体の購入や飼育,実験場所,実験用具の整備など,多大な資金や時間,手間などの問題をクリアする必要がある。そこで本研究では,山本・獅々見(1994)が提案した実験室外におけるキンギョのオペラント条件づけ手続きを踏まえ,より扱いやすく安価に入手しやすいであろう被験体としてヒメダカを取り上げ,実験室外において,大学生にオペラント条件づけの動物実験を行わせることとし,実験過程においてどのような問題が生じるか検討し,より良い動物実験教材を開発することを目的とした。
方法
実験参加者 心理学を専攻する大学2年生21名。
被験体 実験室で誕生,育成され,実験経験のないヒメダカ7匹(生後11ヶ月)。
実験水槽 175×105×105mmの市販のプラスチック水槽。水以外は何も入れなかった。
無条件性強化子 イトミミズを原料とする市販のメダカのエサ1~3粒程度。必要に応じて,細かく砕いて用いた。
輪 市販の直径1mmの銀色の針金を用いて,直径5cmの輪を作成した。
実験手続き 学生3名を1グループとしてヒメダカ1匹を与え,以下のような手順でオペラント条件づけを行うよう求めた。
まず,輪くぐり慣らし訓練を行わせた。5cmの輪を20分間水槽に入れっぱなしにし,被験体が輪をくぐるたびに無条件性強化子を与え,輪をくぐる回数と時間を手元に控えさせた。
次に輪くぐり学習訓練として,輪を水中に挿入後,被験体が輪をくぐったら輪を取り出し強化子を与えさせた。くぐるまでの時間を測定し,これを1試行に3回繰り返すよう指示した。5分以上くぐらないときには一旦輪を引き上げてやり直し,2回連続した場合は日を改めることとした。慣らし訓練も学習訓練もビデオで撮影するよう求めた。
結果
結果の処理 2日連続して3回の平均輪くぐり時間が20秒以内なら輪くぐり学習訓練クリアと教示したが,条件を満たした班は1班のみであった。そこで40秒以内としたところ,4班はクリア,3班がクリア出来ていなかった。クリアまでの試行数は,6,9,10,37であった。37試行班を除いた3班をクリア群,残り3班を非クリア群として,両群の分析を行った。
問題行動の生起頻度 輪くぐり学習訓練開始から5日分について各班75回分すなわち各群計225回分を対象に録画ビデオで観察された問題行動の生起頻度をカウントして分析し,表1にまとめた。直接確率計算を行ったところ,非クリア群は実験中であっても友人と話続けていたり(騒音),メダカの怯えや警戒の様子とは関係なしに輪を出し入れしたり実験を開始したりする(状態無視)などの問題行動がクリア群より多く見られた。
考察
クリア条件を緩める必要はあったが,約半分の班はメダカのオペラント条件づけに成功し,本研究の手続きで大学生に心理学的動物実験を体験させることは十分可能であると示された。言語的コミュニケーションの通用しない動物実験を通して,非クリア群の示した問題行動に着目して動物の扱い方を学ぶことは,ヒトを対象とした実験や調査を行う際にも有用であろうと思われる。
学習心理学の主要理論の一つである条件づけ理論は,教育心理学や臨床心理学等は勿論のこと,今日では行動分析学や行動経済学などにも応用され多岐に渡って展開されている。心理学を学ぶ者であれば必ず理解すべき理論の一つであるといえよう。しかし2009年度に行われた林の調査(林,2013より)によると,学習心理学を受講した学生の73%が条件づけ理論を難しいと感じている。当該理論はパブロフの犬やスキナーの鳩のように動物実験を通じて発展してきた。教科書等の座学のみでは難しいのは当たり前と言える。実際に動物実験を行うことで理解が促進されよう。
しかし,動物実験を行うためには,被験体の購入や飼育,実験場所,実験用具の整備など,多大な資金や時間,手間などの問題をクリアする必要がある。そこで本研究では,山本・獅々見(1994)が提案した実験室外におけるキンギョのオペラント条件づけ手続きを踏まえ,より扱いやすく安価に入手しやすいであろう被験体としてヒメダカを取り上げ,実験室外において,大学生にオペラント条件づけの動物実験を行わせることとし,実験過程においてどのような問題が生じるか検討し,より良い動物実験教材を開発することを目的とした。
方法
実験参加者 心理学を専攻する大学2年生21名。
被験体 実験室で誕生,育成され,実験経験のないヒメダカ7匹(生後11ヶ月)。
実験水槽 175×105×105mmの市販のプラスチック水槽。水以外は何も入れなかった。
無条件性強化子 イトミミズを原料とする市販のメダカのエサ1~3粒程度。必要に応じて,細かく砕いて用いた。
輪 市販の直径1mmの銀色の針金を用いて,直径5cmの輪を作成した。
実験手続き 学生3名を1グループとしてヒメダカ1匹を与え,以下のような手順でオペラント条件づけを行うよう求めた。
まず,輪くぐり慣らし訓練を行わせた。5cmの輪を20分間水槽に入れっぱなしにし,被験体が輪をくぐるたびに無条件性強化子を与え,輪をくぐる回数と時間を手元に控えさせた。
次に輪くぐり学習訓練として,輪を水中に挿入後,被験体が輪をくぐったら輪を取り出し強化子を与えさせた。くぐるまでの時間を測定し,これを1試行に3回繰り返すよう指示した。5分以上くぐらないときには一旦輪を引き上げてやり直し,2回連続した場合は日を改めることとした。慣らし訓練も学習訓練もビデオで撮影するよう求めた。
結果
結果の処理 2日連続して3回の平均輪くぐり時間が20秒以内なら輪くぐり学習訓練クリアと教示したが,条件を満たした班は1班のみであった。そこで40秒以内としたところ,4班はクリア,3班がクリア出来ていなかった。クリアまでの試行数は,6,9,10,37であった。37試行班を除いた3班をクリア群,残り3班を非クリア群として,両群の分析を行った。
問題行動の生起頻度 輪くぐり学習訓練開始から5日分について各班75回分すなわち各群計225回分を対象に録画ビデオで観察された問題行動の生起頻度をカウントして分析し,表1にまとめた。直接確率計算を行ったところ,非クリア群は実験中であっても友人と話続けていたり(騒音),メダカの怯えや警戒の様子とは関係なしに輪を出し入れしたり実験を開始したりする(状態無視)などの問題行動がクリア群より多く見られた。
考察
クリア条件を緩める必要はあったが,約半分の班はメダカのオペラント条件づけに成功し,本研究の手続きで大学生に心理学的動物実験を体験させることは十分可能であると示された。言語的コミュニケーションの通用しない動物実験を通して,非クリア群の示した問題行動に着目して動物の扱い方を学ぶことは,ヒトを対象とした実験や調査を行う際にも有用であろうと思われる。