[PG043] 他者軽視傾向や自尊感情は観察学習の効果にどのように影響するか
キーワード:観察学習, 他者軽視, 自尊感情
目的
大概の社会的学習は実生活のモデルを観察することによってなされる(バンデュラ,1975)。富岡・皆川(2013)は,先行研究と同様に,大学生が観察学習によって自分に似たモデルの行動からポジティブな気づきを得ることにより自己効力感を高め,「私も頑張ろう」と動機づけられていることを示唆した。しかし,一様にモデルの行動を観察しても,自己効力感や動機が高まらない学生もみられた。速水(2006)は,他者軽視傾向がある人は他者を見下すことで自尊感情を維持していると述べている。このような他者軽視傾向がある学生はモデルを見下し,学ぼうとしない可能性があると考えられる。関・兒玉(2012)は,反芻や省察をする人ほど,自尊感情や自己効力感が高いことを明らかにした。自尊感情が高い人は,ネガティブな気づきを得ても,それをきっかけに自分の行動を反芻・省察することで学ぶことができると考えられる。そこで,本研究では観察学習の効果が他者軽視傾向や自尊感情と関係があるかどうかを明らかにすることを目的とする。
方法
関西圏の私立大学1年生288名を対象に,2013年前期のキャリアデザインⅠの授業で,実生活のモデルを観察し最も印象に残った人について記述させるという介入を14回行った。8回目の授業で行った他者軽視傾向尺度,自尊感情尺度と15回目の授業で行った観察学習の振り返り尺度のすべてに回答した208名を対象に,他者軽視,自尊感情と観察学習の効果の相関関係を求めた。
他者軽視尺度 学生の他者軽視傾向の測定には,Hayamizu et al.(2004)の他者軽視尺度(ACS-Version 2)を用い,リッカートの5件法で評定を求めた(M=29.44,SD=6.60,α=.774)。
自尊感情尺度 自尊感情の高さを山本・松井・山成(1982)の自尊感情尺度で求めた(M=28.56,SD=6.75,α=.820)。
観察学習の振り返り尺度 観察学習の効果として観察学習の「注意」,「保持」,「運動再生」のそれぞれの過程が促されたかを確認するため振り返り尺度を作成し,表1の質問に「そう思わない」から「そう思う」のリッカート5件法で回答を得た(α=.787)。
結果と考察
他者軽視尺度,自尊感情尺度,および観察学習の振り返り尺度における変数の分布データの正規性を確認し,Pearsonの相関係数を求めた。その結果,他者軽視傾向は振り返りのQ2と有意な弱い負の相関があった(r =-.222)。また,自尊感情はQ1と有意な弱い正の相関があった(r=.201)。
分析結果から,他者軽視傾向が強い学生は,観察学習を行っても反芻・省察をしない傾向があると言える。他者軽視傾向が高い学生は,せっかくモデルを観察しても,観察しただけで終わり学習につながっていない可能性がある。また,自尊感情が高い学生ほど,よく周囲に目を向けて観察学習に取り組んだと言える。しかし,今回の分析では自尊感情が高い学生がどの程度学習できたかは確認できていない。今後は,他者軽視傾向がある学生に反芻・省察を促す介入方法と,学習の効果についてさらに検討する必要がある。
大概の社会的学習は実生活のモデルを観察することによってなされる(バンデュラ,1975)。富岡・皆川(2013)は,先行研究と同様に,大学生が観察学習によって自分に似たモデルの行動からポジティブな気づきを得ることにより自己効力感を高め,「私も頑張ろう」と動機づけられていることを示唆した。しかし,一様にモデルの行動を観察しても,自己効力感や動機が高まらない学生もみられた。速水(2006)は,他者軽視傾向がある人は他者を見下すことで自尊感情を維持していると述べている。このような他者軽視傾向がある学生はモデルを見下し,学ぼうとしない可能性があると考えられる。関・兒玉(2012)は,反芻や省察をする人ほど,自尊感情や自己効力感が高いことを明らかにした。自尊感情が高い人は,ネガティブな気づきを得ても,それをきっかけに自分の行動を反芻・省察することで学ぶことができると考えられる。そこで,本研究では観察学習の効果が他者軽視傾向や自尊感情と関係があるかどうかを明らかにすることを目的とする。
方法
関西圏の私立大学1年生288名を対象に,2013年前期のキャリアデザインⅠの授業で,実生活のモデルを観察し最も印象に残った人について記述させるという介入を14回行った。8回目の授業で行った他者軽視傾向尺度,自尊感情尺度と15回目の授業で行った観察学習の振り返り尺度のすべてに回答した208名を対象に,他者軽視,自尊感情と観察学習の効果の相関関係を求めた。
他者軽視尺度 学生の他者軽視傾向の測定には,Hayamizu et al.(2004)の他者軽視尺度(ACS-Version 2)を用い,リッカートの5件法で評定を求めた(M=29.44,SD=6.60,α=.774)。
自尊感情尺度 自尊感情の高さを山本・松井・山成(1982)の自尊感情尺度で求めた(M=28.56,SD=6.75,α=.820)。
観察学習の振り返り尺度 観察学習の効果として観察学習の「注意」,「保持」,「運動再生」のそれぞれの過程が促されたかを確認するため振り返り尺度を作成し,表1の質問に「そう思わない」から「そう思う」のリッカート5件法で回答を得た(α=.787)。
結果と考察
他者軽視尺度,自尊感情尺度,および観察学習の振り返り尺度における変数の分布データの正規性を確認し,Pearsonの相関係数を求めた。その結果,他者軽視傾向は振り返りのQ2と有意な弱い負の相関があった(r =-.222)。また,自尊感情はQ1と有意な弱い正の相関があった(r=.201)。
分析結果から,他者軽視傾向が強い学生は,観察学習を行っても反芻・省察をしない傾向があると言える。他者軽視傾向が高い学生は,せっかくモデルを観察しても,観察しただけで終わり学習につながっていない可能性がある。また,自尊感情が高い学生ほど,よく周囲に目を向けて観察学習に取り組んだと言える。しかし,今回の分析では自尊感情が高い学生がどの程度学習できたかは確認できていない。今後は,他者軽視傾向がある学生に反芻・省察を促す介入方法と,学習の効果についてさらに検討する必要がある。