[PA065] 幼児における快感情を伴う出来事に関する報告の分析
キーワード:幼児, 感情
(問 題)
幼児期の子どもたちにおける話す力や聞く力に加えて,伝える力の重要性への認識が高まっているといえよう。就学前に,子どもたちは自分の感情を伴う出来事についてどのように報告することができるのであろうか。
幼児が自分の感情を伴う出来事をどのように自発的,自律的に語るのかに関する研究は感情理解研究においても,談話研究においても少ない(尾中・仲,2013)。本研究では,幼稚園年少児,年中児,年長児を対象に,自分自身の感情を伴う出来事を,子どもたちは身近な他者に対していかに自発的に自律的に話すことができるのかについて,発話量と発話内容から検討することを目的とする。
(方 法)
参加者 幼稚園年少児25名(平均年齢4歳2ヶ月),年中児27名(平均年齢5歳3ヶ月),年長児22名(6歳0ヶ月)。
手続き 保育者に名前を呼ばれた幼児が保育者の横に立ち,保育者は,「今日,楽しかったことをみんなにお話してください。」と問いかけ,対象者はクラスの他児全員の方を向いて話した。
(結果と考察)
発話量について(Table 1)
分散分析を行ったところ,文字数(F (2,71)=3.11,p<.10)およびIU数(F (2,71)=2.81,p<.10)について有意傾向がみられた。また,助詞の産出数についても有意差がみられたため(F (2,71)=4.55,p<.05),Tukey法による検定を行ったところ,年中児と年長児の差が5%水準で有意であった。話しことばの発達については,4歳になれば日常生活の中で比較的自由に日常的な言語を使うことができるようになるといわれているが,自分の感情を伴う出来事を1つのまとまった談話として構成し報告すること幼児期を通して獲得されるといえよう。
発話内容について(Table 2)
発話内容については,「どこで」にあたる「場所」,「誰と」にあたる「共同行為者」,「何を」にあたる「活動」,および自発的に言い方を変える「自発的訂正」をカウントした。
分散分析の結果,「場所」(F (2,71)=5.18,p<.01),「共同行為者」(F (2,71)=4.23,p<.05),「活動」(F (2,71)=7.34,p<.01),「自発的訂正」(F (2,71)=4.98,p<.01)について有意差がみられた。
年長になると,活動の内容や経験を共にした他者に関する情報だけでなく,「場所」という周辺情報ではあるが他者に理解してもらうために有効な情報について言及することが増えることが示された。また,年長児は年少児や年中児よりも「自発的訂正」にあたる発話が多かった。藤崎(1982)は,村田(1969)の分類に準じて幼児の生活発表場面における発話を分析し,語句・文法レベルのみでなく内容の構成レベルでも編集が行われていたことの反映と考えられる「停滞現象」として「語の長音化」「音添加」「反復」「語中のとぎれ」「いいさし」「いい直し」「つなぎ」をあげている。
年長になると,聞き手を意識し,自分の経験をより正確に聞き手に伝えようとする行動が増えることが明らかとなった。
幼児期の子どもたちにおける話す力や聞く力に加えて,伝える力の重要性への認識が高まっているといえよう。就学前に,子どもたちは自分の感情を伴う出来事についてどのように報告することができるのであろうか。
幼児が自分の感情を伴う出来事をどのように自発的,自律的に語るのかに関する研究は感情理解研究においても,談話研究においても少ない(尾中・仲,2013)。本研究では,幼稚園年少児,年中児,年長児を対象に,自分自身の感情を伴う出来事を,子どもたちは身近な他者に対していかに自発的に自律的に話すことができるのかについて,発話量と発話内容から検討することを目的とする。
(方 法)
参加者 幼稚園年少児25名(平均年齢4歳2ヶ月),年中児27名(平均年齢5歳3ヶ月),年長児22名(6歳0ヶ月)。
手続き 保育者に名前を呼ばれた幼児が保育者の横に立ち,保育者は,「今日,楽しかったことをみんなにお話してください。」と問いかけ,対象者はクラスの他児全員の方を向いて話した。
(結果と考察)
発話量について(Table 1)
分散分析を行ったところ,文字数(F (2,71)=3.11,p<.10)およびIU数(F (2,71)=2.81,p<.10)について有意傾向がみられた。また,助詞の産出数についても有意差がみられたため(F (2,71)=4.55,p<.05),Tukey法による検定を行ったところ,年中児と年長児の差が5%水準で有意であった。話しことばの発達については,4歳になれば日常生活の中で比較的自由に日常的な言語を使うことができるようになるといわれているが,自分の感情を伴う出来事を1つのまとまった談話として構成し報告すること幼児期を通して獲得されるといえよう。
発話内容について(Table 2)
発話内容については,「どこで」にあたる「場所」,「誰と」にあたる「共同行為者」,「何を」にあたる「活動」,および自発的に言い方を変える「自発的訂正」をカウントした。
分散分析の結果,「場所」(F (2,71)=5.18,p<.01),「共同行為者」(F (2,71)=4.23,p<.05),「活動」(F (2,71)=7.34,p<.01),「自発的訂正」(F (2,71)=4.98,p<.01)について有意差がみられた。
年長になると,活動の内容や経験を共にした他者に関する情報だけでなく,「場所」という周辺情報ではあるが他者に理解してもらうために有効な情報について言及することが増えることが示された。また,年長児は年少児や年中児よりも「自発的訂正」にあたる発話が多かった。藤崎(1982)は,村田(1969)の分類に準じて幼児の生活発表場面における発話を分析し,語句・文法レベルのみでなく内容の構成レベルでも編集が行われていたことの反映と考えられる「停滞現象」として「語の長音化」「音添加」「反復」「語中のとぎれ」「いいさし」「いい直し」「つなぎ」をあげている。
年長になると,聞き手を意識し,自分の経験をより正確に聞き手に伝えようとする行動が増えることが明らかとなった。