The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PA

Wed. Aug 26, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PA075] プラニングと実行機能がスクリプトの変更方略に与える影響の発達的検討

柳岡開地 (京都大学大学院)

Keywords:スクリプト, 実行機能, 幼児

【問 題】
日常生活で繰り返される出来事の行動系列に関する知識のことをスクリプト(Schank& Abelson,1977)と呼ぶ。発達研究では,3歳ころから熟知性の高い出来事に関して,何が起こるのかを因果的,時間的関係に従って述べることができることが示されている。しかし,現実の生活では,様々なレベルで加えられる変化により “いつもと異なる” 状況がもたらされる。子どもがそれらの様々な変化に対して,スクリプトをどのように利用,実行できるかどうかを検討した研究として柳岡 (2014)がある。しかし,この研究では,スクリプトの変更方略として後戻り以外の方略が検討されていない。そのため,本研究では,後戻り以外の2つのスクリプトを変更方略の使用の発達的変化について検討することを目的とした。
【方 法】
参加児 園児77名(男児38名,女児39名)を対象に個別実験をおこなった。その内訳は,年少児26名(男児14名,平均年齢 3 ; 8),年中児25名(男児12名,平均年齢 4 ; 9),年長児26名(男児12名,平均年齢 5 ; 7)であった。
手続き 課題の数が多いことから2回に分けて実験をおこなった。1回目は,オリジナルの人形課題と抑制を測定する赤/青課題,絵画語彙検査を実施した。実施時間は,20分~25分程度であった。2回目は,Zelazo, Frye, &Rapus(1996)に改善を加えたシフティングを測定する修正版DCCS,プラニングを測定するケーキ課題(柳岡,2014)とアップデーティングを測定する9ボックス課題を実施した。実施時間は,15分程度であった。
人形課題 はじめに “幼稚園服を着るスクリプト” および “公園に行く服を着るスクリプト”を幼児に実際に人形で行ってもらうスクリプト確認問題を実施した。次に,スクリプト変更問題を実施した。スクリプト変更問題では,対象とした園の参加児にはなじみのある自由登園の設定を使い,はじめに “メルちゃん(人形の名前)は幼稚園と公園のどちらでも行ける日です。メルちゃんはどちらにも行きたいです。◯◯ちゃん(対象児名)がどちらか行けるようにかごにあるお洋服を着せてあげてください” と教示した。スクリプト変更問題では,予め,参加児が選択したスクリプトのかごに入っているアイテムを2つ除き,自らが選択したスクリプトを実行し終えることができない状況を提示した。
【結 果】
採点方法は,参加児が人形に着せた服の状態を分類基準とした。はじめに選択したスクリプトから別のスクリプトへと変更した参加児を変更群とした。次に,別のスクリプトのかごからアイテムを1つでも補い,下位要素の変更した群を組み合せ群とした。最後に,はじめに参加児が選択したスクリプトのかごのみからアイテムをとって着せる群を誤答群とした。
Table 1に,学齢群ごとの各解答群の分布を示した。学齢群の分布の差を分析した結果,有意な差があった(χ2(4)=9.94,p=.041)。残差分析の結果,年少児では誤答群が有意に多く,組み合せ群は有意に少なかった(p<.05)。年中児では組み合せ群が有意に多かった(p<.05)。
次に,プラニングおよび実行機能の3つの下位機能のうちどれがスクリプト変更問題の成績を予測するのか検討した。スクリプト変更問題の3群の解答群を従属変数として,多項ロジスティック回帰分析を行ったところ,DCCS(1回目)とケーキ課題の成績が有意な独立変数となった。誤答群に対して,組み合せ群では有意にDCCS(1回目)の成績のオッズ比が有意に高く,変更群ではケーキ課題の成績のオッズ比が有意に高かった。
【考 察】
まず,スクリプトの下位要素を変更する組み合わせ方略は年少児から年中児にかけて増加し,実行機能の下位機能のうちシフティングと関連することが示された。また,プラニングの成績が高い方が,組み合わせ方略よりも前もって別のスクリプトに変更することも明らかとなった。そのため,本研究では,今まで未検討であった2つのスクリプト変更方略間の発達的変化を明らかにすることができた