日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB029] 現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(1)

児童・生徒観および学習指導行動に関する尺度の作成

崎濱秀行1, 藤田正2, 林龍平3 (1.阪南大学, 2.奈良教育大学, 3.大阪教育大学)

キーワード:現職教員および教員志望学生, 児童・生徒観, 学習指導行動

【問題と目的】
近年,我が国では「生きる力」の育成をはじめ,学習者が主体的に学習に取り組む態度を養うことが重視されている(文部科学省,2011)。このような態度を養う上で,教師の行う学習指導のあり方は大きな影響を与えるものと考えられる。伊藤(1990, 1992)は学習指導について「教師中心的指導」と「学習者中心的指導」の2次元が存在することを述べている。教員養成に携わる上で,学習者の主体性(学習者中心的指導)を意識する学生や教員を育成することは今度ますます求められるであろう。そこで,本研究では,学校教員を目指す学生(大学生・大学院生)および現職教員を対象に,児童・生徒観および指導行動をたずね,尺度を作成することを目的とした。
【方 法】
調査参加者 近畿地方の大学生・大学院生・現職教員370名(男性180名,女性190名,平均年齢21.7歳 年齢は18歳~59歳)であった。
材 料 質問紙(1)児童・生徒観尺度: OECD(2012)中のTALISから学習指導と学習に対する教員の信念に関する8項目,藤田(2000)の「子どもの自発性尊重主義 vs 外発性重視主義」「自己統制尊重主義 vs 子どもの教化主義」の10項目を基に,本研究の目的に合うよう加筆修正を行い,19項目で構成される尺度を作成した。
質問紙(2)学習指導行動尺度:日比(2011)の「授業の仕方や指導観について」の質問紙項目中,「Ⅱ生徒との関わり」「Ⅲ指導スタイル」「Ⅳ授業スタイル」カテゴリーに含まれる26項目から本研究の目的に合う15項目を抽出し,加筆修正した。
なお,両尺度とも4件法で,各項目は,「構成主義的指導観(児童・生徒中心) 対 直接伝統主義的指導観(教師中心)」という対をなしている。評定は,1に近いほど児童・生徒中心の,4に近いほど教師中心の指導観(指導行動)となる。
手続き 調査は,心理学関係の授業の一部を利用して集団で行われた。
【結果と考察】
得られたデータについて,PASW Ver.18.0を用いて,児童・生徒観および教師の指導行動について以下の分析を行った。
1)児童・生徒観尺度,およびその構造の検討
児童・生徒観尺度について因子分析(最尤法)を行い,固有値1以上,寄与率5%以上,因子負荷量0.35以上,固有値の減衰率を考慮し,最終的に3因子を抽出した。第1因子は「学習指導観(9項目)」,第2因子は「自律性(6項目)」,第3因子は「自己統制性(4項目)」と命名した。尺度の内的整合性検討のため,α係数を算出したところ,第1因子から順に,0.74,0.69,0.60となった。
第1因子は「教師が直接答えを教えるのではなく,まず児童・生徒に考えさせることが大切だ―学校での時間は限られているのだから,児童・生徒には問題とその答えを教えるべきだ」などの項目が高い負荷量を示した。第2因子は「児童・生徒は放っておかれると,かえって自分なりに工夫して,勉強していくものだ―児童・生徒は放っておかれると,無駄なことをして時間をつぶしているものだ」などの項目が高い負荷量を示した。第3因子は「特にしつけに気を配らなくても児童・生徒なりに地域や学校できちんと生活できるものだ―しっかりしたしつけをしておかないと,児童・生徒は地域や学校できちんとした生活ができないものだ」などの項目が高い負荷量を示した。
2)学習指導行動尺度,およびその構造の検討
学習指導行動尺度について因子分析を行い,固有値1以上,固有値の減衰状況,寄与率5%以上,因子負荷量0.35以上を基準に分析を行った。その結果,1因子性を示したため,「学習指導行動(11項目)」因子と命名した。なお,尺度の内的整合性検討のため,α係数を算出したところ,α=0.78となった。
3)下位尺度間の関連性の検討
下位尺度間の関連を検討するため,ピアソンの相関係数を算出した。その結果,「自律性と自己統制性」「学習指導観と学習指導行動」の間の相関が有意であり,特に「学習指導観と学習指導行動」との間の相関は0.57と中程度であった。このことから,本研究における参加者の場合,児童・生徒中心の学習指導観を持つほど児童・生徒を中心に据えた学習指導行動を重視していることが考えられる。