[PB044] 視覚的素材を用いた診断的評価の有効性の検討(中学校理科)Ⅱ
文章問題による診断的評価との比較による
キーワード:診断的評価, 授業設計, 中学校理科
1 研究の目的
学習者の実態に関して対象とする内容の指導を行う前に的確に把握する有効な方法として診断的評価があげられる。従来から,文章問題による方法(以下文章刺激とする)が主に用いられてきたが,学習者の既存知識の深さや思考の特徴を柔軟に把握することは容易ではなかった。そこで,「視覚的素材を用いた診断的評価の有効性の検討Ⅰ」(以下この評価方法を視覚的刺激とする)を行った。その結果,診断者の想定を超えて有効な情報得る可能性が示唆された(2014 荒尾ら)。今回は,「文章刺激」と「視覚的刺激」の2種類の診断的評価を対象とする生徒に実施し,比較分析することにより,「視覚的刺激による診断的評価」が授業設計にどのように生かせるか,その有効性を引き続き検討することとした。
2 研究方法
診断的評価のための視覚的素材の開発に当たっては前回の実践を元に,以下の要件を満たすものを目指した。
・授業設計に活かすための情報を得られる素材。
・教師にとって予定調和的ではなく,生徒の実態について新たな発見が可能である。
・評価者によって解釈がある程度一致し,評価の基準が設置可能である素材である。
・診断的評価をするための素材づくりが容易である。
具体的には,対象とする学習に必要な既習事項について,教科書等に掲載されている視覚的素材(図,写真)を提示し,「何を調べるのか」「何が分かったのか」と図や写真に獲得している知識や疑問点を自由記述させた。
調査対象は,すべて中学校理科で,3年生「塩化銅の電気分解」(2クラス),1年生「火山灰の観察」(4クラス),2年生「電流の働きはどのように表したらよいのか」(4クラス)。なお,「火山灰の観察」については,学習内容が限定されるため,文章刺激と視覚的刺激は2クラスずつ別に実施し,その他は,文章刺激,視覚的刺激の順に2種類の診断的評価を同じ生徒に実施した。
3 結果と考察
【実践1塩化銅の電気分解】2014年11月実施
この学習では,目の前の現象を説明するためには導線で繋がれていない水溶液の中で電流が流れているはず,それはなぜと既習事項を元に考えるところがポイントである。診断的評価(導線内の電流と自由電子他について)した結果,①文章刺激では84%が両者とも記述でき,②視覚的刺激では,両者が記述できたもの19%,白紙が22%あった(文章刺激で調べた次の時間に実施したにも関わらず)。そのことを元に,授業では,既有の知識を目の前の現象に当てはめて使うことが難しいと推測し,既習の学習内容を示唆するヒントカード等や電流の存在を考える場を用意して授業構成を行った。その結果,実験結果を考察する場面でほぼ予想通り生徒が躓く場面が現れ,適切なKRを返すことにより目の前の現象を基に論理的に推論を進めることができ科学的な結論を導くことができた。
【実践2火山灰の観察】2015年2月末実施
対象の生徒のうち,各クラス約1/3弱の生徒が火山灰の観察を実際に行っていた。診断的評価で火山灰の特徴を指摘できた割合は①文章刺激で46%,視覚的刺激で20%であった。そのことから,文章刺激では,単に知識として獲得しているレベルでも設問に回答することができるが,視覚刺激だと,そのレベルでは回答できないことが分かった。
それを基に,火山灰と流水の働きでできた砂の提示方法(班別に2種類のサンプルのラベルをわざと逆にした)と結果の処理(判断した根拠を合わせて記述)の工夫を入れて授業構成をした。その結果,観察を繰り返したり他の班と比較したりしながら,それぞれの特徴を見極めることができていた。
【実践3電流の働きの表し方】2015年2月末~3月実施
対象の生徒は,理科では電力は未履修であるが,技術家庭科では電気エネルギーと電力の相関関係,電力=電圧×電流という知識および計算練習をしている。診断的評価の結果,①文章刺激では,豆球の明るさが,電圧,電流(電気の力も含む)と比例関係にあるとしている(83%)。視覚的刺激では,(60%)②視覚刺激で豆球の明るさと電流値の関係を調べる実験を示した結果,電流値(測定した物)を軸にして考える傾向にあることが分かった。
それを基に,明るさの異なる7つの豆電球(明るさの順に電圧電流値を並べるとどちらも逆転してするようにして)の電圧電流を測定させ。考察させた。再測定や考察に時間がかかると予想し授業設計を行った。診断的結果から予想された通り,明るさと電圧,電流は相関関係がある考えから離れることが難しく,何回も測定しなおす生徒がみられた。電力に自ら気づいた生徒は(1%)であった。詳細な数値データの分析は当日発表の予定である。
学習者の実態に関して対象とする内容の指導を行う前に的確に把握する有効な方法として診断的評価があげられる。従来から,文章問題による方法(以下文章刺激とする)が主に用いられてきたが,学習者の既存知識の深さや思考の特徴を柔軟に把握することは容易ではなかった。そこで,「視覚的素材を用いた診断的評価の有効性の検討Ⅰ」(以下この評価方法を視覚的刺激とする)を行った。その結果,診断者の想定を超えて有効な情報得る可能性が示唆された(2014 荒尾ら)。今回は,「文章刺激」と「視覚的刺激」の2種類の診断的評価を対象とする生徒に実施し,比較分析することにより,「視覚的刺激による診断的評価」が授業設計にどのように生かせるか,その有効性を引き続き検討することとした。
2 研究方法
診断的評価のための視覚的素材の開発に当たっては前回の実践を元に,以下の要件を満たすものを目指した。
・授業設計に活かすための情報を得られる素材。
・教師にとって予定調和的ではなく,生徒の実態について新たな発見が可能である。
・評価者によって解釈がある程度一致し,評価の基準が設置可能である素材である。
・診断的評価をするための素材づくりが容易である。
具体的には,対象とする学習に必要な既習事項について,教科書等に掲載されている視覚的素材(図,写真)を提示し,「何を調べるのか」「何が分かったのか」と図や写真に獲得している知識や疑問点を自由記述させた。
調査対象は,すべて中学校理科で,3年生「塩化銅の電気分解」(2クラス),1年生「火山灰の観察」(4クラス),2年生「電流の働きはどのように表したらよいのか」(4クラス)。なお,「火山灰の観察」については,学習内容が限定されるため,文章刺激と視覚的刺激は2クラスずつ別に実施し,その他は,文章刺激,視覚的刺激の順に2種類の診断的評価を同じ生徒に実施した。
3 結果と考察
【実践1塩化銅の電気分解】2014年11月実施
この学習では,目の前の現象を説明するためには導線で繋がれていない水溶液の中で電流が流れているはず,それはなぜと既習事項を元に考えるところがポイントである。診断的評価(導線内の電流と自由電子他について)した結果,①文章刺激では84%が両者とも記述でき,②視覚的刺激では,両者が記述できたもの19%,白紙が22%あった(文章刺激で調べた次の時間に実施したにも関わらず)。そのことを元に,授業では,既有の知識を目の前の現象に当てはめて使うことが難しいと推測し,既習の学習内容を示唆するヒントカード等や電流の存在を考える場を用意して授業構成を行った。その結果,実験結果を考察する場面でほぼ予想通り生徒が躓く場面が現れ,適切なKRを返すことにより目の前の現象を基に論理的に推論を進めることができ科学的な結論を導くことができた。
【実践2火山灰の観察】2015年2月末実施
対象の生徒のうち,各クラス約1/3弱の生徒が火山灰の観察を実際に行っていた。診断的評価で火山灰の特徴を指摘できた割合は①文章刺激で46%,視覚的刺激で20%であった。そのことから,文章刺激では,単に知識として獲得しているレベルでも設問に回答することができるが,視覚刺激だと,そのレベルでは回答できないことが分かった。
それを基に,火山灰と流水の働きでできた砂の提示方法(班別に2種類のサンプルのラベルをわざと逆にした)と結果の処理(判断した根拠を合わせて記述)の工夫を入れて授業構成をした。その結果,観察を繰り返したり他の班と比較したりしながら,それぞれの特徴を見極めることができていた。
【実践3電流の働きの表し方】2015年2月末~3月実施
対象の生徒は,理科では電力は未履修であるが,技術家庭科では電気エネルギーと電力の相関関係,電力=電圧×電流という知識および計算練習をしている。診断的評価の結果,①文章刺激では,豆球の明るさが,電圧,電流(電気の力も含む)と比例関係にあるとしている(83%)。視覚的刺激では,(60%)②視覚刺激で豆球の明るさと電流値の関係を調べる実験を示した結果,電流値(測定した物)を軸にして考える傾向にあることが分かった。
それを基に,明るさの異なる7つの豆電球(明るさの順に電圧電流値を並べるとどちらも逆転してするようにして)の電圧電流を測定させ。考察させた。再測定や考察に時間がかかると予想し授業設計を行った。診断的結果から予想された通り,明るさと電圧,電流は相関関係がある考えから離れることが難しく,何回も測定しなおす生徒がみられた。電力に自ら気づいた生徒は(1%)であった。詳細な数値データの分析は当日発表の予定である。