[PC020] 家庭における言葉かけが中学生のテスト不安と学習時間に及ぼす影響
キーワード:言葉かけ, 特定の他者の重要度, テスト不安
問題と目的
テスト不安は,学習者に,成績の低下などの負の影響を及ぼすと考えられている(Cassady, 2004)。先行研究においては,テスト不安に対する即時的な効果が期待される介入方法の1つとして,フィードバックなどの言葉かけが取り上げられてきた(e.g., Ruthig, Perry, Hall, & Hladkyj, 2004)。しかし,これらの研究における手続きは,実験室実験や実験者による介入など,日常的な学習環境とは相違がみられるため,より身近な場面を用いた検討が必要である。そこで本研究では,家庭における言葉かけがおこなわれる場面とその内容が,テスト不安と学習時間に及ぼす影響を明らかにする。また,学習者がもっている,言葉かけをおこなう人物に対する重要度の認知によって,言葉かけの影響が変化するかについても明らかにする。
方 法
調査対象者 山梨県の公立中学校2校を対象に,2年生計228名。
使用尺度 過去に受けた英語の定期試験のおおよその平均得点,学習のことについて最もよく話をしている特定の他者,その特定の他者が自分自身に期待していると思うおおよその得点,特定の他者に対する重要度の認知,英語の定期試験結果・普段の英語学習に対する言葉かけ,Cassady & Johnson(2001)を参考にしたテスト不安尺度,英語・英語以外の学習時間に関して回答を求めた。テスト不安尺度は,因子分析の結果,テスト場面全般に対する不安と,テストの特定の要素に対する不安という2つの下位尺度が得られた。
結 果
テスト不安尺度の2つの下位尺度,英語・英語以外の学習時間の4つの変数を目的変数とした階層的重回帰分析をおこなった。Step 1では各言葉かけと重要度を投入し,Step 2では各言葉かけ×重要度の交互作用項を投入した。その結果,各場面において,各言葉かけ,重要度の有意な主効果が多くみられる結果となった。さらに,普段の学習場面に対する言葉かけにおいて,習得回避的言葉かけと,重要度の交互作用が有意であった(b=-.13, p<.01)。±1SDに基づく単純傾斜分析をおこなった結果,重要度が高い場合において,習得回避的言葉かけの効果がみられた(b=3.07, p<.05)。
考 察
習得回避目標的言葉かけは,“学んだ内容がきちんと身についていないということを少なくすることが重要だ”という内容である。このことから,学習者が特定の他者を重要であると感じている場合,習得回避的言葉かけが,結果よりも過程を重視するものとして認知されていることが想定される。そのことが,定期試験の一時点における誤りや他者との比較よりも,その結果をどのように活かすかを意識することにつながり,テストの特定の要素への不安を軽減する可能性が示された。
さらに,多くの目的変数に対して,言葉かけと同時に,特定の他者の重要度の有意な主効果がみられたことから,他者からの働きかけについて言及する際には,他者に対する重要度も考慮すべき要因であるということが示唆されたといえる。
テスト不安は,学習者に,成績の低下などの負の影響を及ぼすと考えられている(Cassady, 2004)。先行研究においては,テスト不安に対する即時的な効果が期待される介入方法の1つとして,フィードバックなどの言葉かけが取り上げられてきた(e.g., Ruthig, Perry, Hall, & Hladkyj, 2004)。しかし,これらの研究における手続きは,実験室実験や実験者による介入など,日常的な学習環境とは相違がみられるため,より身近な場面を用いた検討が必要である。そこで本研究では,家庭における言葉かけがおこなわれる場面とその内容が,テスト不安と学習時間に及ぼす影響を明らかにする。また,学習者がもっている,言葉かけをおこなう人物に対する重要度の認知によって,言葉かけの影響が変化するかについても明らかにする。
方 法
調査対象者 山梨県の公立中学校2校を対象に,2年生計228名。
使用尺度 過去に受けた英語の定期試験のおおよその平均得点,学習のことについて最もよく話をしている特定の他者,その特定の他者が自分自身に期待していると思うおおよその得点,特定の他者に対する重要度の認知,英語の定期試験結果・普段の英語学習に対する言葉かけ,Cassady & Johnson(2001)を参考にしたテスト不安尺度,英語・英語以外の学習時間に関して回答を求めた。テスト不安尺度は,因子分析の結果,テスト場面全般に対する不安と,テストの特定の要素に対する不安という2つの下位尺度が得られた。
結 果
テスト不安尺度の2つの下位尺度,英語・英語以外の学習時間の4つの変数を目的変数とした階層的重回帰分析をおこなった。Step 1では各言葉かけと重要度を投入し,Step 2では各言葉かけ×重要度の交互作用項を投入した。その結果,各場面において,各言葉かけ,重要度の有意な主効果が多くみられる結果となった。さらに,普段の学習場面に対する言葉かけにおいて,習得回避的言葉かけと,重要度の交互作用が有意であった(b=-.13, p<.01)。±1SDに基づく単純傾斜分析をおこなった結果,重要度が高い場合において,習得回避的言葉かけの効果がみられた(b=3.07, p<.05)。
考 察
習得回避目標的言葉かけは,“学んだ内容がきちんと身についていないということを少なくすることが重要だ”という内容である。このことから,学習者が特定の他者を重要であると感じている場合,習得回避的言葉かけが,結果よりも過程を重視するものとして認知されていることが想定される。そのことが,定期試験の一時点における誤りや他者との比較よりも,その結果をどのように活かすかを意識することにつながり,テストの特定の要素への不安を軽減する可能性が示された。
さらに,多くの目的変数に対して,言葉かけと同時に,特定の他者の重要度の有意な主効果がみられたことから,他者からの働きかけについて言及する際には,他者に対する重要度も考慮すべき要因であるということが示唆されたといえる。