[PB31] 中学校理科におけるメタ認知の変化
中一ギャップと中一ジャンプのその後
キーワード:学習方略, メタ認知, 中一ギャップ
研究の目的~要求される学習方略の変化と中一ギャップ
「不登校・長期欠席を減らそうとしている教育委員会に役立つ施策に関するQ&A」(平成24年6月:生徒指導・進路指導研究センター)からも示唆されるように,中一ギャップの発生メカニズムには学業不振の問題が密接に関係していると予想される。つまり,複合的な問題ではあるが,カリキュラムや学習方法の質的な変化に生徒が対応できないことによって,中一ギャップが生じている可能性も考えられるのではないかということである。
学習方略から見た中一ジャンプ
特に学習方法の質的な変化に生徒が対応できないことと,中一ギャップの発生は何らかの関係があると想定し,2008年度から仙台市教育委員会と協同で小中の接続に関して実態調査を行ってきた。校種が上がるにつれて落ちこぼれの人数が急増することは既によく知られているが,手応えを感じる生徒がいるのも事実である(平・小野,2015)。本研究では,そのような生徒たちを「中一ジャンプ」を示している生徒たちと呼ぶことにする。中一ギャップの問題へ適切に対応するためにも,この自己効力感が高まる生徒の実態を把握することは重要といえよう。
手 続 き
今回報告する調査では,調査協力校のA中学校において1年生の1学期の5月と2学期の1月(2014年5月,2015年1月),そして2年生の9月(2015年9月)に調査を実施した。これらのデータを比較し,特に学力面での有能感として学習意欲の変化とメタ認知の変動について分析した。また,今回の調査では質問紙調査とあわせて,1月と9月とメタ認知が一貫して下位群のグループ,同様に1月と9月と一貫して上位群であったグループを抽出生徒として聞き取り調査を行い,更にクラス担任の協力のもとで生徒たちの成績データも参照して考察した。本研究で扱う「メタ認知」とは,主に理科の学習に関するメタ認知的判断に関する質問項目群である。例えば「理科の授業がわからないとき,なぜわからないのか,その理由を考える」といった質問が相当する。本調査で1年生1月の調査と2年生9月の調査と続けて参加した生徒は,男子61名,女子68名,合計129名であった。
結果と考察
ANOVAやその他の統計的な分析を行うにあたって,5月の時点での各尺度の一貫性(α係数)を吟味した(表1)。
表2に示したとおり,1年生1月と2年生9月と続けてメタ認知が上位群だった生徒のメタ認知(平均3.8)と続けて下位群になった生徒のメタ認知(平均1.6)の差は非常に大きい。しかし,実際に当該の生徒たちにインタービューした結果,上位群の生徒たちには分かり方が,手続きとして分かるタイプと,内容が分かるタイプの2通りがあることが明らかになった。具体的には,「内容が分かる方法が分かったから,メタ認知が向上した生徒」と,「語呂合わせなど手続きとして理解するような勉強方法が分かったから,向上した生徒」の2種類があることが示唆された。オームの法則の理解の仕方で例を挙げると,比例関係として理解しているのか,計算手続きとして1対1対応的に理解しているかといった違いとなっていた。
「不登校・長期欠席を減らそうとしている教育委員会に役立つ施策に関するQ&A」(平成24年6月:生徒指導・進路指導研究センター)からも示唆されるように,中一ギャップの発生メカニズムには学業不振の問題が密接に関係していると予想される。つまり,複合的な問題ではあるが,カリキュラムや学習方法の質的な変化に生徒が対応できないことによって,中一ギャップが生じている可能性も考えられるのではないかということである。
学習方略から見た中一ジャンプ
特に学習方法の質的な変化に生徒が対応できないことと,中一ギャップの発生は何らかの関係があると想定し,2008年度から仙台市教育委員会と協同で小中の接続に関して実態調査を行ってきた。校種が上がるにつれて落ちこぼれの人数が急増することは既によく知られているが,手応えを感じる生徒がいるのも事実である(平・小野,2015)。本研究では,そのような生徒たちを「中一ジャンプ」を示している生徒たちと呼ぶことにする。中一ギャップの問題へ適切に対応するためにも,この自己効力感が高まる生徒の実態を把握することは重要といえよう。
手 続 き
今回報告する調査では,調査協力校のA中学校において1年生の1学期の5月と2学期の1月(2014年5月,2015年1月),そして2年生の9月(2015年9月)に調査を実施した。これらのデータを比較し,特に学力面での有能感として学習意欲の変化とメタ認知の変動について分析した。また,今回の調査では質問紙調査とあわせて,1月と9月とメタ認知が一貫して下位群のグループ,同様に1月と9月と一貫して上位群であったグループを抽出生徒として聞き取り調査を行い,更にクラス担任の協力のもとで生徒たちの成績データも参照して考察した。本研究で扱う「メタ認知」とは,主に理科の学習に関するメタ認知的判断に関する質問項目群である。例えば「理科の授業がわからないとき,なぜわからないのか,その理由を考える」といった質問が相当する。本調査で1年生1月の調査と2年生9月の調査と続けて参加した生徒は,男子61名,女子68名,合計129名であった。
結果と考察
ANOVAやその他の統計的な分析を行うにあたって,5月の時点での各尺度の一貫性(α係数)を吟味した(表1)。
表2に示したとおり,1年生1月と2年生9月と続けてメタ認知が上位群だった生徒のメタ認知(平均3.8)と続けて下位群になった生徒のメタ認知(平均1.6)の差は非常に大きい。しかし,実際に当該の生徒たちにインタービューした結果,上位群の生徒たちには分かり方が,手続きとして分かるタイプと,内容が分かるタイプの2通りがあることが明らかになった。具体的には,「内容が分かる方法が分かったから,メタ認知が向上した生徒」と,「語呂合わせなど手続きとして理解するような勉強方法が分かったから,向上した生徒」の2種類があることが示唆された。オームの法則の理解の仕方で例を挙げると,比例関係として理解しているのか,計算手続きとして1対1対応的に理解しているかといった違いとなっていた。