日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PB(65-87)

ポスター発表 PB(65-87)

2016年10月8日(土) 13:00 〜 15:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PB66] 漢字に親しむアプリ「かんじダス」の開発(3)

漢字パズルの追加と使用感の検証

阿子島茂美1, 野川中#2, 遊佐規子#3, 漆澤恭子#4, 関口洋美5, 高岩亜輝子#6, 益子紗緒里#7, 吉村浩一#8 (1.十文字学園女子大学, 2.明星大学, 3.柏市立第三小学校, 4.植草学園短期大学, 5.大分県立芸術文化短期大学, 6.富山大学附属病院, 7.行徳総合病院, 8.法政大学)

キーワード:読み書き障害, 漢字, アプリ

目   的
 漢字に親しむアプリ「かんじダス」は,漢字が表語文字であることを体感できるように象形文字からなる「絵―漢字あわせ」ゲームから作成した。さらに,漢字は部分によって形成されていることを理解させるために,バラバラになった漢字を組みなおす「漢字パズル」機能を追加した。本研究では,新たに追加した「漢字パズル」について,小学校2年生を対象に,パズルの使用感を検討した。
方   法
体験者:公立小学校の通常学級の2年生31名。
調査者:大学教員2名と,訓練を受けた大学生10名が調査者1名と記録者1名でペアを形成し,6組が同時進行で調査を行った。
調査実施日:2016年3月11日。
手続き:ゲームは,横に分かれる漢字(体・顔・紙・切・池),縦に分かれる漢字(空・岩・雪・青・星),3つに分かれる漢字(親・海・花・船・晴)の15文字で,漢字→読み仮名→絵の順で表示され,漢字がバラバラになったあと,再度組み立てるというものである。タブレット端末はApple社のiPadを使用した。iPadを児童の正面に置き,調査者が調査手順に従って指示をし,体験者が操作する。質問紙は調査者による聞き取りとした。
質問紙:おもて面は操作データとの照合のためのユーザー名・性別・利き手の項目と,練習3画面+15文字それぞれにおいて使用した手と指,言動や気になった操作などの特記事項を記入する欄,全体でのメモ欄を設けた。うら面は,“漢字が部分に分かれていると思うか”の質問,「星」を提示し“どこで分かれているか”を問う質問,“ゲームは面白かったか?”“ゲームはやりやすかったか?”“ゲームに出てきた漢字は難しかったか?”“またやってみたいか?”をそれぞれ5段階で問う質問,“どうしたらもっとやりたくなるか?”について自由に答えてもらう質問を設けた。質問紙とは別に,対象となった児童に実施した漢字テストの結果について,高得点者と低得点者の情報を得た。
結果と考察
アプリを使用する手と指:利き手調査では2人が両手利き,1人が左利きで他は右利きであったが,アプリの操作においては全員が右手を使用していた。使用する指は,多くの児童が人さし指であったが,一貫して中指を使用した児童が1人,人さし指・中指・親指をおりまぜて使用する児童が1人いた。
アプリ使用時の様子:特記欄に書かれた内容の傾向として,声を出しながら操作する児童が多くみられた。漢字の部分を動かす際に,書き順に従って組み合わせる児童と,必ずしもそうでない児童がいた。一貫して書き順どおりの児童と,あえて順番どおりにしない児童とがいた。
漢字が部分にわかれることについて: “漢字が部分に分かれていると思いますか?”の問いに対して,「はい」が26人(83.9%),「いいえ」が4人 (12.9%),欠損者が1人(3.2%)いた。また,「はい」と回答した児童に対する“いつ知りましたか?”という問いには,「前から知っていた」が23人(88.5%),「このゲームで知った」が2人(7.7%),欠損者1人(3.8%)いた。多くの児童が漢字は部分に分かれることを知っていたという結果であった。次にその検証として「星」がどのような部分に分かれるかを尋ねた質問では,30人が指で指示したり口頭で回答するなど,「日」と「生」に分かれることを示した。1人だけ「下から」と口頭で答えただけで,正しい回答ができなかった児童がいた。
アプリを使ったことへの感想:アプリに対する感想については,以下の表の通りであった。いずれの項目でも高評価であった。
本アプリへの要求:改善点を問うための,“どうしたらもっとやりたくなりますか?”という質問に対し,以下のような意見があった。
・もっと漢字を増やしてほしい
・もっと難しい漢字にしてほしい
・算数もやってみたい
 なお,本アプリにはすでに音も設定されているが,本調査では消音設定で操作してもらったため,「音があるといい」という意見も出た。