[PD87] ASD傾向学生のための就業力尺度の作成(1)
項目の作成と信頼性の検討
Keywords:見通し力, 就業力, 尺度
目 的
高等教育機関における発達障害のある学生への支援は急務である。就労に関しては,日本学生支援機構の調査で,発達障害のある学生の就職率は障害学生全体よりも低いことが報告されている。また,小川(2005)は知的障害を伴わない高機能広汎性発達障害者の不就労の割合が高いと述べている。ASD傾向をもつ学生はその特性ゆえに就業するためのスキルの獲得が難しく,就職活動やその後の就業でのつまずきが考えられる。高等教育機関においてもそれら学生への支援が要請されており,そのためには支援対象をアセスメントする尺度が必須といえる。
学生のための就業に関するレディネス尺度は多く発表されている。しかし,対象をASD傾向の学生に絞り,早期スクリーニングするための尺度は開発されていない。
本研究では質問項目を作成し,探索的因子分析と尺度の信頼性を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査期間と対象:2014年12月,大学生1~4年生157名(男子88人,女子69人)
調査内容:2014年2月,5月に民間の就労移行支援事業所,同年6月にA県新卒ハローワークに対し,ASDの人の就業における困難さについて聞き取り調査を行った。ここから31項目をプールし,発達障害児・者支援活動(NPO法人アスペ・エルデの会)活動者を含む3名で項目を27項目に精査した。それらを「あてはまる」から「あてはまらない」までの4件法で回答を求めた。
結 果
1.因子分析(主因子法,Promax回転)
因子分析の結果,3因子21項目が抽出された。第Ⅰ因子は職業適性や自分の長所についての項目が多いので,「長所や適性を把握する力」と命名した。第Ⅱ因子は仕事をして生活するイメージについての項目が多いので,「就労をイメージする力」と命名した。第Ⅲ因子は働きかけをしたり,粘り強く取り組むことについての項目が多いので,「前に踏み出す力」と命名した。(Table 1)
2.尺度の信頼性
尺度の信頼性を検討するためα係数を算出した。第1因子α=.794 第2因子α=.791 第3因子α=.701であった。(Table 1)
考 察
結果から抽出された3因子はいずれもASDの特性から考えられる,就業に関する考慮点であるといえる。
因子の信頼性に関しても十分なα係数が得られ,内的整合性が確認された。
今後はASDの傾向を探る「見通し力尺度」(肥田・堀・鈴木,2015)と一体化させた尺度を完成させたい。それによって,ASDの特性を有するゆえに就業に弱点をもつ大学生をより有効な支援につなげることが可能になると考える。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C, 25381147)の助成を受けたものです。
高等教育機関における発達障害のある学生への支援は急務である。就労に関しては,日本学生支援機構の調査で,発達障害のある学生の就職率は障害学生全体よりも低いことが報告されている。また,小川(2005)は知的障害を伴わない高機能広汎性発達障害者の不就労の割合が高いと述べている。ASD傾向をもつ学生はその特性ゆえに就業するためのスキルの獲得が難しく,就職活動やその後の就業でのつまずきが考えられる。高等教育機関においてもそれら学生への支援が要請されており,そのためには支援対象をアセスメントする尺度が必須といえる。
学生のための就業に関するレディネス尺度は多く発表されている。しかし,対象をASD傾向の学生に絞り,早期スクリーニングするための尺度は開発されていない。
本研究では質問項目を作成し,探索的因子分析と尺度の信頼性を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査期間と対象:2014年12月,大学生1~4年生157名(男子88人,女子69人)
調査内容:2014年2月,5月に民間の就労移行支援事業所,同年6月にA県新卒ハローワークに対し,ASDの人の就業における困難さについて聞き取り調査を行った。ここから31項目をプールし,発達障害児・者支援活動(NPO法人アスペ・エルデの会)活動者を含む3名で項目を27項目に精査した。それらを「あてはまる」から「あてはまらない」までの4件法で回答を求めた。
結 果
1.因子分析(主因子法,Promax回転)
因子分析の結果,3因子21項目が抽出された。第Ⅰ因子は職業適性や自分の長所についての項目が多いので,「長所や適性を把握する力」と命名した。第Ⅱ因子は仕事をして生活するイメージについての項目が多いので,「就労をイメージする力」と命名した。第Ⅲ因子は働きかけをしたり,粘り強く取り組むことについての項目が多いので,「前に踏み出す力」と命名した。(Table 1)
2.尺度の信頼性
尺度の信頼性を検討するためα係数を算出した。第1因子α=.794 第2因子α=.791 第3因子α=.701であった。(Table 1)
考 察
結果から抽出された3因子はいずれもASDの特性から考えられる,就業に関する考慮点であるといえる。
因子の信頼性に関しても十分なα係数が得られ,内的整合性が確認された。
今後はASDの傾向を探る「見通し力尺度」(肥田・堀・鈴木,2015)と一体化させた尺度を完成させたい。それによって,ASDの特性を有するゆえに就業に弱点をもつ大学生をより有効な支援につなげることが可能になると考える。
本研究はJSPS科学研究費(基盤研究C, 25381147)の助成を受けたものです。