[PE08] 青年期における心理的自立と経済的自立との関連
キーワード:青年, 心理的自立, 経済的自立
問題と目的
自立は青年期の発達課題であり,青年を理解する上で不可欠な概念である。自立は一般的に,身体的自立,認知的自立,生活的自立,経済的自立,社会的自立,心理的自立などに分類されており(渡邊,1990),これまで心理学においては,心理的自立について尺度作成が行われ,精神的健康や適応との関連が検討されてきた(高坂・戸田,2006a,2006b; 山田,2011など)。
一方,心理的自立と他の自立との関連は検討されておらず,自立概念について総合的な議論が行われていない。そこで,本研究では,大学生を対象に,心理的自立と経済的自立との関連について検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 東京都内の大学生285名(男性144名,女性140名,不明1名;平均年齢19.6±1.5歳)を対象者とした。
調査内容 ①心理的自立尺度(PJS-2;高坂・戸田,2006b):「将来志向」,「適切な対人関係」,「価値判断・実行」,「責任」,「社会的視野」,「自己統制」の6下位尺度各5項目を使用した(7件法),②経済的自立尺度:山路他(2014)の経済的自立7側面のうち,大学生一般に該当すると思われる「稼ぐ」,「使う」,「貯める」,「リスクマネジメント」,「ライフデザイン」の5側面について各3項目を作成した(5件法)。
調査時期 2014年6月に集団で実施・回収した。
結果と考察
経済的自立尺度の因子分析 経済的自立尺度30項目について,最尤法・promax回転による因子分析を行い,「無計画な消費行動」,「経済的リスクマネジメント」,「十分な収入」の3因子を抽出した。それぞれに高い負荷量を示した項目の平均を算出し,各下位尺度得点とした。
心理的自立と経済的自立との関連 心理的自立や日本における就労・経済状況の男女差,男女における社会的期待の差異が指摘されているため,男女別に心理的自立6得点と経済的自立3得点との相関を算出した(Table 1,Table 2)。
その結果,男性では心理的自立6得点すべてが「経済的リスクマネジメント」と有意な正の相関を示した。対して,女性では,心理的自立6得点すべてが「無計画な消費行動」と有意な負の相関を示した。「経済的リスクマネジメント」が将来における経済的リスクに対する知識や想定であるのに対し,「無計画な消費行動」は現時点における経済的計画性や節約を意味するものである。ここから,男性においては将来における損失を,女性においては現在における損失を防ぐことが,心理的自立と関連していることが明らかにされた。この際は,途切れることなく就労しつづけることが期待される男性と,家計を任されることが多い女性との差異であると考えられる。
自立は青年期の発達課題であり,青年を理解する上で不可欠な概念である。自立は一般的に,身体的自立,認知的自立,生活的自立,経済的自立,社会的自立,心理的自立などに分類されており(渡邊,1990),これまで心理学においては,心理的自立について尺度作成が行われ,精神的健康や適応との関連が検討されてきた(高坂・戸田,2006a,2006b; 山田,2011など)。
一方,心理的自立と他の自立との関連は検討されておらず,自立概念について総合的な議論が行われていない。そこで,本研究では,大学生を対象に,心理的自立と経済的自立との関連について検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 東京都内の大学生285名(男性144名,女性140名,不明1名;平均年齢19.6±1.5歳)を対象者とした。
調査内容 ①心理的自立尺度(PJS-2;高坂・戸田,2006b):「将来志向」,「適切な対人関係」,「価値判断・実行」,「責任」,「社会的視野」,「自己統制」の6下位尺度各5項目を使用した(7件法),②経済的自立尺度:山路他(2014)の経済的自立7側面のうち,大学生一般に該当すると思われる「稼ぐ」,「使う」,「貯める」,「リスクマネジメント」,「ライフデザイン」の5側面について各3項目を作成した(5件法)。
調査時期 2014年6月に集団で実施・回収した。
結果と考察
経済的自立尺度の因子分析 経済的自立尺度30項目について,最尤法・promax回転による因子分析を行い,「無計画な消費行動」,「経済的リスクマネジメント」,「十分な収入」の3因子を抽出した。それぞれに高い負荷量を示した項目の平均を算出し,各下位尺度得点とした。
心理的自立と経済的自立との関連 心理的自立や日本における就労・経済状況の男女差,男女における社会的期待の差異が指摘されているため,男女別に心理的自立6得点と経済的自立3得点との相関を算出した(Table 1,Table 2)。
その結果,男性では心理的自立6得点すべてが「経済的リスクマネジメント」と有意な正の相関を示した。対して,女性では,心理的自立6得点すべてが「無計画な消費行動」と有意な負の相関を示した。「経済的リスクマネジメント」が将来における経済的リスクに対する知識や想定であるのに対し,「無計画な消費行動」は現時点における経済的計画性や節約を意味するものである。ここから,男性においては将来における損失を,女性においては現在における損失を防ぐことが,心理的自立と関連していることが明らかにされた。この際は,途切れることなく就労しつづけることが期待される男性と,家計を任されることが多い女性との差異であると考えられる。