日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

2016年10月10日(月) 13:00 〜 15:00 展示場 (1階展示場)

[PH12] いざこざ場面における幼児の謝罪に関する研究

丸山絢子 (兵庫教育大学大学院)

キーワード:幼児, 謝罪, いざこざ

目   的
 様々な活動時間を観察し,幼児の謝罪の実態を知ることが目的である。また,各事例のエピソード分析を行うことで,詳細を検討していくこととする。
方   法
【対象】4歳児30名,5歳児29名。
【手続き】2014年11月から12月の中で9日間。午前中の保育時間における幼児のいざこざ場面を観察した。いざこざが始まり,何らかの終結を迎えるまでを1つの事例とし,記録を行った。また,明らかないざこざとは認められない場合であっても,謝罪が行われた際には観察し,記録を行った。
結果と考察
 収集した事例は80事例であり,謝罪が行われたものは30事例,行われなかったものは50事例であった。年齢別にみると,4歳児の謝罪率は43%(42事例中18事例),5歳児の謝罪率は32%(38事例中12事例)であり,4歳児の方が謝罪率は高かった。エピソード分析から同様の場面であっても年齢により謝罪の有無が異なることが分かった。5歳児は謝罪以外の声掛けや弁償によっていざこざ場面を解決する姿が見られた。
【年齢と活動時間からみた謝罪】保育時間を「全体活動」,「自由時間」,「その他」の3つに分類し,年齢との関係を検討した(Table 1)。先行研究では自由時間に焦点を絞った観察が多かったが,保育内容に関わらず全保育時間に幼児の謝罪行動が見られることが示された。4歳児の謝罪率は,「全体活動」が43%,「自由時間」が46%,「その他」が29%であった。5歳児の謝罪率は,「全体活動」が40%,「自由時間」が26%,「その他」が40%であった。活動時間による謝罪生起率にはあまり差異が見られなかった。
【年齢と意図の有無からみた謝罪】いざこざのきっかけを「偶発」,「意図なし」,「意図あり」の3つに分類し,年齢との関係を検討した(Table 2)。4歳児の謝罪率は,「偶発」が80%,「意図なし」が39%,「意図あり」が11%であった。5歳児の謝罪率は,「偶発」が40%,「意図なし」が33%,「意図あり」が14%であった。4歳児ではいざこざ原因の意図の有無が謝罪に影響を与える可能性が示された。また,どちらの年齢においても「偶発」が原因である場合は謝罪に至ることが多く,最も謝罪率が低いのは「意図あり」であった。この結果から,加害者が進んでいざこざを引き起こした場合には,謝罪が行われにくい可能性が示された。
【いざこざ未満】明らかないざこざは生じていないとされる場面で謝罪が用いられる事例は3事例であった。相手に伝える意図をもたない謝罪,コミュニケーションとしての謝罪,いざこざ回避のために事前に行われる謝罪である。この結果から,幼児は謝罪が怒り緩和以外の効果を持つことを認識している可能性が示された。
【謝罪と許容の関係】いくつかの事例では謝罪後に相手からの許容が見られた。中には,機械的に許容を行う事例や,謝罪に対して第三者が許容を促す事例があった。この結果から,現場において謝罪や許容が機械的に行われている可能性が示された。