10:00 〜 12:00
[PD68] 高校生の学校不適応感と役割充足感に関する研究
役割充足感が学校不適応感に与える影響
キーワード:高校生, 学校不適応, 役割充足感
目 的
近年,学校場面において予防的観点から不適応徴候を示す生徒を早期に発見し対応することが求められてきている。鈴木・石黒(2015)は,不適応にいたるまでのプロセスに着目した学校不適応感尺度を開発した。なお学校適応においては,生徒が日々感じている部活動やクラスにおける役割ならびに級友等との関係における役割に対する充足感が影響を与えている可能性が考えられる。Kato & Suzuki(2017)は,社会的役割充足感と内的役割充足感からなる役割充足感尺度を開発したが,学校不適応感との関連については調査していない。
そこで,本研究では高校生における役割充足感が学校不適応感に与える影響過程について探索的に検証を行うことを目的とする。
方 法
調査時期と対象:2016年6月に担任が高校1~3年生1016名(男子539名,女子477名)を対象に集合調査形式による調査を行った。なお本研究は成績評価には一切関係なく,自由意思での回答等を説明し,倫理的面についても十分配慮した。
調査内容:役割充足感尺度(Kato & Suzuki,2017)の下位尺度である社会的役割充足感5項目,内的役割充足感5項目,計10項目を用いた。高校生版学校不適応感尺度(鈴木・石黒,2015)の<社会的コンピテンスの不足>段階であるコミュニケーションの不足6項目と対人問題解決スキルの不足3項目,<被受容感の乏しさ>段階である友人関係の不安4項目と承認欲求の高さ6項目,<不適応徴候>段階である不適応徴候(情緒面)5項目と不適応徴候(行動・身体面)7項目,計31項目を用いた。「全く当てはまらない(1点)」から「よく当てはまる(5点)」までの5件法で尋ねた。
結 果
学校不適応感と役割充足感との相関 学校不適応感の下位因子(不適応徴候:情緒面,不適応徴候:行動・身体面,友人関係の不安,承認欲求の高さ,コミュニケーションスキルの不足,対人問題解決スキルの不足)と役割充足感の下位因子(社会的役割充足感,内的役割充足感)において相関分析を実施した。その結果,学校不適応感の各因子は社会的役割充足感・内的役割充足感と全て有意な負の相関(r=-.12~-.35, p<.01)が見られた。
役割充足感が学校不適応感に与える影響 役割充足感が学校不適応プロセスに影響を及ぼすモデルを設定し,パス解析を行った(Figure1)。その結果,適合指標は統計学的な許容水準を満たしており,モデルの妥当性が確認された。パス解析より,社会的コンピテンスの不足が社会的役割充足感に負の影響を与え,社会的役割充足感が内的役割充足感を媒介して不適応徴候に負の影響を与えていることが示された。しかし,パスの値は有意ではあったものの値が低いものも見られた。
考 察
本結果より,社会的コンピテンスが不足することにより,社会的役割充足感が低下し,内的役割充足感を持てず,不適応徴候を示している可能性 についても示唆された。しかしながら,一部のパス値については高くないものもあるため,その背景について縦断的研究や事例研究を行うことにより,今後さらにモデルを精緻化していく必要がある。
本研究はJSPS科研費(若手研究B)26780404の助成を受けたものです。
近年,学校場面において予防的観点から不適応徴候を示す生徒を早期に発見し対応することが求められてきている。鈴木・石黒(2015)は,不適応にいたるまでのプロセスに着目した学校不適応感尺度を開発した。なお学校適応においては,生徒が日々感じている部活動やクラスにおける役割ならびに級友等との関係における役割に対する充足感が影響を与えている可能性が考えられる。Kato & Suzuki(2017)は,社会的役割充足感と内的役割充足感からなる役割充足感尺度を開発したが,学校不適応感との関連については調査していない。
そこで,本研究では高校生における役割充足感が学校不適応感に与える影響過程について探索的に検証を行うことを目的とする。
方 法
調査時期と対象:2016年6月に担任が高校1~3年生1016名(男子539名,女子477名)を対象に集合調査形式による調査を行った。なお本研究は成績評価には一切関係なく,自由意思での回答等を説明し,倫理的面についても十分配慮した。
調査内容:役割充足感尺度(Kato & Suzuki,2017)の下位尺度である社会的役割充足感5項目,内的役割充足感5項目,計10項目を用いた。高校生版学校不適応感尺度(鈴木・石黒,2015)の<社会的コンピテンスの不足>段階であるコミュニケーションの不足6項目と対人問題解決スキルの不足3項目,<被受容感の乏しさ>段階である友人関係の不安4項目と承認欲求の高さ6項目,<不適応徴候>段階である不適応徴候(情緒面)5項目と不適応徴候(行動・身体面)7項目,計31項目を用いた。「全く当てはまらない(1点)」から「よく当てはまる(5点)」までの5件法で尋ねた。
結 果
学校不適応感と役割充足感との相関 学校不適応感の下位因子(不適応徴候:情緒面,不適応徴候:行動・身体面,友人関係の不安,承認欲求の高さ,コミュニケーションスキルの不足,対人問題解決スキルの不足)と役割充足感の下位因子(社会的役割充足感,内的役割充足感)において相関分析を実施した。その結果,学校不適応感の各因子は社会的役割充足感・内的役割充足感と全て有意な負の相関(r=-.12~-.35, p<.01)が見られた。
役割充足感が学校不適応感に与える影響 役割充足感が学校不適応プロセスに影響を及ぼすモデルを設定し,パス解析を行った(Figure1)。その結果,適合指標は統計学的な許容水準を満たしており,モデルの妥当性が確認された。パス解析より,社会的コンピテンスの不足が社会的役割充足感に負の影響を与え,社会的役割充足感が内的役割充足感を媒介して不適応徴候に負の影響を与えていることが示された。しかし,パスの値は有意ではあったものの値が低いものも見られた。
考 察
本結果より,社会的コンピテンスが不足することにより,社会的役割充足感が低下し,内的役割充足感を持てず,不適応徴候を示している可能性 についても示唆された。しかしながら,一部のパス値については高くないものもあるため,その背景について縦断的研究や事例研究を行うことにより,今後さらにモデルを精緻化していく必要がある。
本研究はJSPS科研費(若手研究B)26780404の助成を受けたものです。