日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD83] 異なる学部のプログラミング入門教育におけるモチベーションのCS分析結果の比較

モチベーションの向上を目指すために

土肥紳一1, 宮川治2, 今野紀子3 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学, 3.東京電機大学)

キーワード:モチベーション, CS分析, プログラミング入門教育

目   的
 筆者らはプログラミング入門教育を対象に,受講者のモチベーションを向上する教授法(SIEM:ジーム)とSIEMアセスメント尺度を開発し継続的に実践している。SIEMは情報環境学部で開発した教授法であるが,工学部第二部電気電子工学科の授業でも活用している。母集団や授業実施環境の違いが,モチベーションのCS分析結果にどのような影響を与えるのか,2016年の授業を対象に探る。
方   法
 分析対象の授業は,情報環境学部のコンピュータプログラミングA(コンプロAと略),工学部第二部電気電子工学科のコンピュータ基礎Ⅱ(基礎Ⅱと略)である。授業の前期,中期,後期にモチベーションの測定を行う。SIEMアセスメント尺度の各評価項目に対して,「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」「どちらともいえない」「ややそう思う」「強くそう思う」の5つを設け1から5の評価値とする。モチベーションは評価項目の「重要度」と「期待度」の積と定義している。モチベーションは1から25の値に定量化され[1],さらにCS分析を行う。CS分析によって,授業改善度指数(ILI:Improvement Level Index)が算出でき,ILIが高いものは改善すべき項目である。特に5以上は要改善,10以上は即改善項目と考えられる。
結   果
 コンプロAの中期のCS分析結果から「自己目標の明確度(ILI=8.7)」「将来への有用度(ILI=5.0)」が改善項目として指摘された。紙面の都合で,中期のCSグラフのみをFigure 1に示す。具体的な改善策は,(1)自分の到達すべき学習の目標を見失っている学生のため,再度,授業の意義や目的を明示し,目標を立てさせる,(2)現在学習している内容がどのように将来に役立つのかを折にふれ教えるなどが有効と考えられる。
 基礎Ⅱの中期のCS分析結果から「自己目標の明確度(ILI=10.9)」「自己コントロール度(ILI=9.7)」が改善項目として指摘された。中期のCSグラフをFigure 2に示す。具体的な改善策は,(1)コンプロAと同じ,(2)最初はできそうな課題で「やればできる」という感覚をつかませながら,馴れた頃にチャレンジ精神をくすぐるような課題に挑戦させることで,学生に自らの工夫を生かした成功体験を与えることなどが有効と考えられる。
考   察
 中期から後期に向けた授業改善策は,「自己目標の明確度」が共通に指摘された。授業の意義や目的を明示し,目標を立てさせる工夫が必要である。さらにコンプロAでは「将来への有用度」が指摘された。将来,どのように役立つのかを十分認識できるように授業を工夫する必要がある。基礎Ⅱでは「自己コントロール度」が指摘された。二部の学生諸君は昼間働いている方が多く,授業時間外にプログラミングを試す余裕が無いことが窺がえる。異なる学部のプログラミング入門教育におけるモチベーションは,その特徴がCS分析によって示された。今後は,指摘された改善を行いながら,さらなるモチベーションの向上に努力したい。
参考文献
(1)導入教育におけるモチベーション分布の分析,土肥紳一,宮川 治,今野紀子,情報科学技術フォーラム,一般講演論文集第4分冊,pp.489-490,2009