日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH50] 文脈的アプローチに基づいた感謝表出スキルの特徴

半構造化面接による予備的検討

酒井智弘1, 相川充2 (1.筑波大学, 2.筑波大学)

キーワード:感謝表出スキル, 文脈的アプローチ, 半構造化面接

目   的
 本研究では,感謝表出行動をソーシャルスキルの観点から捉えて,「感謝表出スキル(skills for expressing gratitude)」という概念を新たに提示する。ある特定の適切なスキルを習得するためには,具体的な対人行動と対人場面を組み合わせてソーシャルスキルを測定する「文脈的アプローチ(Contextual Approach)」が必要である(Warnes et al., 2005)。そこで本研究では,ソーシャルスキルの文脈的アプローチに基づいて,対人感謝場面における感謝表出行動のレパートリーを検討し,感謝表出スキルの特徴を質的に把握することを目的とする。感謝表出スキルは,従来の研究における感謝の定義(Watkins,2007など)と,ソーシャルスキルの定義(相川他,1993)とを組み合わせて,「個人が他者から何らかの利益を受け取ったと認知したことによって生じる感情を,適切かつ効果的に表出するために用いられる言語的・非言語的な行動レパートリー」と定義する。
方   法
 面接者は心理学を専攻する大学院生であった。対象者は大学生40名(男性20名,女性20名)であった。実験室にて半構造化面接を実施した。半構造化面接での質問内容は,主に,対人感謝場面,対人感謝感情,感謝表出行動であった。各質問内容は,同性友人および異性友人ごとに尋ねた。
結   果
 対人感謝場面に関する記述数(同性友人268項目,異性友人130項目),対人感謝感情に関する記述数(同性友人162項目,異性友人100項目),感謝表出行動に関する記述数(同性友人567項目,異性友人333項目)であった。心理学を専攻する大学生2名が,先行研究(藤原他,2013; 蔵永・樋口,2011; 蔵永・樋口,2012; 蔵永・樋口,2013)を参考にして作成されたカテゴリー表に基づいて分類した結果,Table 1のような結果が得られた。
考   察
 本研究は,具体的な対人感謝場面,対人感謝感情,感謝表出行動のレパートリーを明らかにした。本研究の知見は,他者に感謝表出行動をいかに実行すれば良いかという点に,行動レベルの示唆を与えた。本研究の知見は,どのような感謝表出スキルを習得することが良いのかという問いに対する,予備的な資料となりうる。