日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC05] 学習時の反復検索が幼児の転移テスト時の説明内容に及ぼす影響

堀田千絵1, 多鹿秀継2 (1.関西福祉科学大学, 2.神戸親和女子大学)

キーワード:反復検索, 幼児, 説明

目  的
 反復検索による学習が検索した当該学習内容の成績を高めること,転移を促すことについては成人や一部幼児を対象に確認されてきた。この背景には,学習時の検索が知識の長期定着のみならず,なぜそのような答えになるのか等の幼児なりの回答の理由づけや説明にも影響を与える可能性を示唆するものであるが直接的に検討が成されてはいない。そこで本研究は,学習時の反復検索が転移テストにおける回答の説明にどのように影響を与えるか,幼児を対象に,通常の反復学習と比較することによって検討することを目的とする。

方  法
(1) 参加者:30名の5~6歳児を対象とし,来室した順に交互に反復検索あるいは反復学習条件に割り当てた。一週間後テストでは反復学習条件の3名が欠席したため,結果的に反復検索条件は15名,反復学習条件は12名となった。(2) 材料:学習材料は著者らによって作成された食物連鎖であった。特定の場面での捕食に関する一定のルールに基づく課題であった。テスト材料は学習材料とは場面の異なる転移テストと学習材料と同一のテストであった。(3) 手続き:3段階から構成された。①事前テスト段階であり,学習前にこれから学習する材料についてどの程度の知識をもっているか確認した。②反復検索/反復学習段階:両条件ともに,①とは異なる場面の課題に対して食物連鎖について教えられた。次に反復検索条件の幼児は,当該課題について繰り返し回答が求められた。例えば,「アザラシは何を食べるのかな?」といった具合である。一方,反復学習条件の幼児は,実験者から回答を教えられるというものであった。例えば,「アザラシは魚を食べるよ」といった具合である。いずれの条件も3回集中的に行った。③事後テスト段階:一週間後に,回答の教えられていない①で実施したテスト(転移テスト)と②で集中的に行った同一テストを行い,転移テスト時になぜそう思うのか理由を答えるように求めた。

結果と考察
 正答は各課題において4点満点でありTable 1には各条件におけるテスト段階の平均正答数を示した。右段には一週間後での成績の上昇率を差分で示した。先行研究に一致し反復検索条件の幼児において転移が認められた。そのことを踏まえ,各条件において転移がみられた幼児の回答への理由説明をみてみた。その結果,反復検索条件において転移が認められた12名中食物連鎖のルールについて言及した幼児は5名であり,「自分より小さいから食べる」というものであった。一方,反復学習条件において,転移が認められた6名中食物連鎖のルールについて言及できていた幼児は1名であり,「サメはエビよりもマグロの方がでっかいから食べる」であった。残りの幼児は,「わからない」「おいしいから」等であった。反復検索条件において回答を検索したにすぎないが食物連鎖のルールに言及する幼児の割合が多かった。これらについて今後も継続的に検討する予定である。

付  記
本研究は基盤研究B(16H03743)の支援を受けて実施した。