[PC12] 幼稚園教諭にとって気になる子どもの情緒問題と人間関係
キーワード:幼稚園教諭, 発話分析, 感情抑制
問題と目的
幼児の情動発達について子どもや母親を対象にした様々な研究がなされているが,幼稚園教諭を対象とし,その視点から,親・先生・友人等との人間関係の中でどのような情動の発達や阻害が起こっているのかを捉えた研究は少ない。本研究では幼稚園教諭にとって気になる子どもの情緒問題と,その問題に最も重要な影響を及ぼしている人間関係について検討する。
研究方法
調査対象者:K県内N幼稚園在職の幼稚園教諭5名(女性5名/平均勤続年数21年/平均年齢42歳)
半構造化面接調査:幼稚園教諭から見た子どもの身近な人間関係の中であらわれた気になる情緒問題と人的環境要因について捉える為①感情・情緒面で気になる子どもで心に残っている子のエピソードや抱えていた問題②気になる子どもの親子関係といったアタッチメントを含む人間関係の中で,その感情・情緒面の問題に最も重要な影響を及ぼしていると思うことについて尋ねた。幼児期の子どもを客観的に側で観察している幼稚園教諭に,自然に発話して貰えるよう時間制限を設けず自由に語ってもらった。(最少30分~最大90分,平均45分程度)面接場所はK県内N幼稚園の応接室を使用,発話中の音声は筆者本人がICレコーダーで録音し録音データは遂語的に書き起こした。
感情言語化数分析:書き起こしたデータの中から子どもの情緒問題に関する発話と主な人間関係についての発話を抽出し4つの視点を大カテゴリー,15の視点を下位カテゴリーとしたカテゴリー定義判定基準表を作成した。その内容はTable1に示す。その後各参加者が語った言語内容をあらためて各カテゴリーに評定し頻度を数えて全参加者分の数値を集計した。発話中全く感情言語が出現しなければその数は0であり最大値に上限は無い。カテゴリー評定は著者と修士課程の大学院生1名とが事前にカテゴリーの定義判定基準表を確認し個別に評定を行った。全データの10%を検討したところ2者の一致率は87.5%であった。不一致については話し合いでデータを一致させた。
結 果
幼稚園教諭5名の合計発話数は170発話であった。Table 1のカテゴリーと結果数値より,幼稚園教諭から見た気になる子どもの情緒問題として一番発話数が多かったのが「子どもの過度な感情抑制場面」に関することで40発話(23.5%),具体的には「(幼児なんて空気が読めなくて当たり前なのに)読めちゃっている子が多くて,先生の思いとか,お母さんの思いとかを結構感じて,動くとか」といった内容の発話であった。第二に「子どもの感情抑制不能場面」に関することで17発話(10%)であった。また子どもの情緒問題に影響する人間関係についての殆どが母親に関する内容で,一番発話数が多かったのが「母親の非柔軟的態度」に関することで16発話(9.4%),具体的には「多分昔のお母さんも(しっかりしなさいと)言っていたのですけれど,その基準が凄く厳しくなっている気がします」といった内容の発話であった。第二に「母親が語る夫婦喧嘩」に関することで15発話(8.8%),第三に「母親の非受容的態度」に関することで13発話(7.6%),具体的には「(母親が子どもに対して)もう手間かけさせないでよ,じゃないですけれど総てがもう嫌になっちゃう」といった発話内容であった。
考 察
幼稚園教諭にとって気になる子どもは感情抑制に問題がある傾向にあり,その要因は母親との関係性にあることが示唆される。
幼児の情動発達について子どもや母親を対象にした様々な研究がなされているが,幼稚園教諭を対象とし,その視点から,親・先生・友人等との人間関係の中でどのような情動の発達や阻害が起こっているのかを捉えた研究は少ない。本研究では幼稚園教諭にとって気になる子どもの情緒問題と,その問題に最も重要な影響を及ぼしている人間関係について検討する。
研究方法
調査対象者:K県内N幼稚園在職の幼稚園教諭5名(女性5名/平均勤続年数21年/平均年齢42歳)
半構造化面接調査:幼稚園教諭から見た子どもの身近な人間関係の中であらわれた気になる情緒問題と人的環境要因について捉える為①感情・情緒面で気になる子どもで心に残っている子のエピソードや抱えていた問題②気になる子どもの親子関係といったアタッチメントを含む人間関係の中で,その感情・情緒面の問題に最も重要な影響を及ぼしていると思うことについて尋ねた。幼児期の子どもを客観的に側で観察している幼稚園教諭に,自然に発話して貰えるよう時間制限を設けず自由に語ってもらった。(最少30分~最大90分,平均45分程度)面接場所はK県内N幼稚園の応接室を使用,発話中の音声は筆者本人がICレコーダーで録音し録音データは遂語的に書き起こした。
感情言語化数分析:書き起こしたデータの中から子どもの情緒問題に関する発話と主な人間関係についての発話を抽出し4つの視点を大カテゴリー,15の視点を下位カテゴリーとしたカテゴリー定義判定基準表を作成した。その内容はTable1に示す。その後各参加者が語った言語内容をあらためて各カテゴリーに評定し頻度を数えて全参加者分の数値を集計した。発話中全く感情言語が出現しなければその数は0であり最大値に上限は無い。カテゴリー評定は著者と修士課程の大学院生1名とが事前にカテゴリーの定義判定基準表を確認し個別に評定を行った。全データの10%を検討したところ2者の一致率は87.5%であった。不一致については話し合いでデータを一致させた。
結 果
幼稚園教諭5名の合計発話数は170発話であった。Table 1のカテゴリーと結果数値より,幼稚園教諭から見た気になる子どもの情緒問題として一番発話数が多かったのが「子どもの過度な感情抑制場面」に関することで40発話(23.5%),具体的には「(幼児なんて空気が読めなくて当たり前なのに)読めちゃっている子が多くて,先生の思いとか,お母さんの思いとかを結構感じて,動くとか」といった内容の発話であった。第二に「子どもの感情抑制不能場面」に関することで17発話(10%)であった。また子どもの情緒問題に影響する人間関係についての殆どが母親に関する内容で,一番発話数が多かったのが「母親の非柔軟的態度」に関することで16発話(9.4%),具体的には「多分昔のお母さんも(しっかりしなさいと)言っていたのですけれど,その基準が凄く厳しくなっている気がします」といった内容の発話であった。第二に「母親が語る夫婦喧嘩」に関することで15発話(8.8%),第三に「母親の非受容的態度」に関することで13発話(7.6%),具体的には「(母親が子どもに対して)もう手間かけさせないでよ,じゃないですけれど総てがもう嫌になっちゃう」といった発話内容であった。
考 察
幼稚園教諭にとって気になる子どもは感情抑制に問題がある傾向にあり,その要因は母親との関係性にあることが示唆される。