[PC36] 教育脳の探求(2)
教育動機の個人差との関連
キーワード:教育学習, 脳機能, 個人差
背景と問題
教育による学習」(以下「教育学習」)は,学習者が指示・説明・評価など他者からの利他的介入をてがかりに行う社会学習であり,学習者が他個体とは独立に独力で行う「個体学習」,あるいは(利他的介入ではない)他者の行動を観察し模倣する「観察学習」と対比される(Ando, 2009; Ando, 2016)。前研究報告で,教育学習が個体学習や観察学習とどのように異なるかを機能的画像法(以下 fMRI)を用いて比較した(安藤,染谷;2017 日本教育心理学会第59回総会)。
本研究は,学習行動に伴うヒトの学習方略の選好性の個人差が,学習前後の安静時脳機能の変化に影響しうるか検討を行った。
方 法
対象者:健康な右利きの大学生27人(男性15人,女性12人,平均年齢20.7歳 標準偏差0.91)とし,全ての被験者に対し本実験に関する十分な説明をし,同意を得た。
手続き:解剖学的画像および運動学習時の脳機能画像の測定を 静磁場強度3TのMRI(Magnetom Trio, A Tim system, Siemens)を用いて実施した。
脳機能測定 運動学習前後で安静時脳機能画像(resting state fMRI,以下rs-fMRI)を測定し比較検討を行った。rs-fMRI測定時,被験者は仰臥位で開眼してヘッドコイル上のミラーに投射された固視点に注目,安静を保った。
運動学習 親指を除く4指の上げ下げの異なる組み合わせ4パターンの系列を記憶再生する課題 を,個体学習,観察学習,教育学習の三種類の学習様式で実行した(安藤,染谷;2017 日本教育心理学会第59回総会)。
質問紙調査 脳機能測定前,支援志向の教育学習,啓蒙志向の教育学習,独学志向の教育学習の各学習方略の選好性のスコアを測定する質問紙調査を測定室外で行った。
画像処理及び統計解析 fMRI測定によって得られた画像について体動補正,ノイズ除去,標準脳に非線形変換を行い統計解析を行った。本研究ではrs-fMRIの分析にグラフ解析の手法を用い,全脳を解剖学的及び機能的な見地から166の区画に分割して隣接行列を作成し,それぞれの関係性を検討した。 全ての処理はCONN(Whitfield & Nieto, 2012)を用いた。
結果と考察
1)運動学習後の脳の機能領野間のネットワーク指標が優位に変化した(P<0.05, FDR corrected)。比較検討に用いたネットワーク指標は,次数(degree),クラスタリング係数(clustering coefficient),平均経路長(Average Path Length),コスト,媒介中心性(betweenness centrality),局所効率(local efficiency),全体効率(global efficiency)であった。変化が認められた領域は前頭,側頭,角回,被殻,視床及び小脳を中心とした運動及び系列学習に関連した領域であった。
2)質問紙調査の結果,対象者は,「独学スコアが,啓蒙スコアより高い」クラスタと「啓蒙スコアが,独学スコアより高い」クラスタに分けることができた。
3)運動学習後に有意に変化した,脳の機能領野間のネットワーク指標と対象者のクラスタが相関した領域は前頭,側頭,角回,被殻,視床及び小脳であった(p<0.05)。
4)運動学習後に有意差が認められなかった脳の機能領野間のネットワーク指標と対象者のクラスタが相関した領域は,visualネットワーク,salienceネットワーク,左下前頭回を含む言語ネットワークであった。
教育による学習」(以下「教育学習」)は,学習者が指示・説明・評価など他者からの利他的介入をてがかりに行う社会学習であり,学習者が他個体とは独立に独力で行う「個体学習」,あるいは(利他的介入ではない)他者の行動を観察し模倣する「観察学習」と対比される(Ando, 2009; Ando, 2016)。前研究報告で,教育学習が個体学習や観察学習とどのように異なるかを機能的画像法(以下 fMRI)を用いて比較した(安藤,染谷;2017 日本教育心理学会第59回総会)。
本研究は,学習行動に伴うヒトの学習方略の選好性の個人差が,学習前後の安静時脳機能の変化に影響しうるか検討を行った。
方 法
対象者:健康な右利きの大学生27人(男性15人,女性12人,平均年齢20.7歳 標準偏差0.91)とし,全ての被験者に対し本実験に関する十分な説明をし,同意を得た。
手続き:解剖学的画像および運動学習時の脳機能画像の測定を 静磁場強度3TのMRI(Magnetom Trio, A Tim system, Siemens)を用いて実施した。
脳機能測定 運動学習前後で安静時脳機能画像(resting state fMRI,以下rs-fMRI)を測定し比較検討を行った。rs-fMRI測定時,被験者は仰臥位で開眼してヘッドコイル上のミラーに投射された固視点に注目,安静を保った。
運動学習 親指を除く4指の上げ下げの異なる組み合わせ4パターンの系列を記憶再生する課題 を,個体学習,観察学習,教育学習の三種類の学習様式で実行した(安藤,染谷;2017 日本教育心理学会第59回総会)。
質問紙調査 脳機能測定前,支援志向の教育学習,啓蒙志向の教育学習,独学志向の教育学習の各学習方略の選好性のスコアを測定する質問紙調査を測定室外で行った。
画像処理及び統計解析 fMRI測定によって得られた画像について体動補正,ノイズ除去,標準脳に非線形変換を行い統計解析を行った。本研究ではrs-fMRIの分析にグラフ解析の手法を用い,全脳を解剖学的及び機能的な見地から166の区画に分割して隣接行列を作成し,それぞれの関係性を検討した。 全ての処理はCONN(Whitfield & Nieto, 2012)を用いた。
結果と考察
1)運動学習後の脳の機能領野間のネットワーク指標が優位に変化した(P<0.05, FDR corrected)。比較検討に用いたネットワーク指標は,次数(degree),クラスタリング係数(clustering coefficient),平均経路長(Average Path Length),コスト,媒介中心性(betweenness centrality),局所効率(local efficiency),全体効率(global efficiency)であった。変化が認められた領域は前頭,側頭,角回,被殻,視床及び小脳を中心とした運動及び系列学習に関連した領域であった。
2)質問紙調査の結果,対象者は,「独学スコアが,啓蒙スコアより高い」クラスタと「啓蒙スコアが,独学スコアより高い」クラスタに分けることができた。
3)運動学習後に有意に変化した,脳の機能領野間のネットワーク指標と対象者のクラスタが相関した領域は前頭,側頭,角回,被殻,視床及び小脳であった(p<0.05)。
4)運動学習後に有意差が認められなかった脳の機能領野間のネットワーク指標と対象者のクラスタが相関した領域は,visualネットワーク,salienceネットワーク,左下前頭回を含む言語ネットワークであった。