日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-76)

2018年9月17日(月) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PG01] 児童生徒のいじめ体験と自傷念慮・自傷行為経験の関連

小学生・中学生を対象とした質問紙調査から

穴水ゆかり1, 加藤弘通2, 太田正義3 (1.釧路短期大学, 2.北海道大学, 3.常葉大学)

キーワード:自傷行為, いじめ, 児童生徒

問  題
 リストカット等の自傷行為は,中高生を中心とする若者の間でみられ,学校現場においてもしばしば深刻な問題となっている。また,自傷といじめとの関連が指摘されているが,国内ではその実情を明らかにする研究はあまりみられず,さらに小学生の自傷の実態についても,ほとんど明らかになっていない。
そこで本研究では,自傷初発年齢の前後と考えられる小学校中学年児童から中学生を対象に,自傷念慮及び自傷行為の経験と,いじめ体験の関連について分析し,児童生徒の自傷といじめ体験の関連について検討することを目的とする。

方  法
 1) 調査協力者:A市の小学4年生~中学3年生の男女児童生徒39,167名。
 2)調査の時期と方法:2017年11月に自記式質問票調査を実施した。調査に際しては、各学級にて質問紙と封筒を配付し、答えたくない項目には回答する必要がないことを口頭で伝えた。児童生徒が自宅で記入、封をした回答用紙を、学校にて回収した。回収率は99.6%だった。
 3)調査内容:①対象者の属性:学校種,学年,性 ②自傷念慮及び自傷行為の経験:阿江ほか(2012)を引用した。自傷行為を「したことはないがしようと思った(自傷念慮)」「1回経験」「数回以上経験」等の4件法で回答を求めた。 ③いじめの被害・加害・目撃経験:「平成27年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)を参考とし,さらに性被害に関する項目を加えて作成した。各8項目について5件法(『まったくない』~『週に何度もある』)で回答を求めた。
 4)倫理的配慮:北海道大学倫理審査委員会において審査を受け,承認を得ている。その上で,教育委員会及び各学校長の承認を得た。

結果と考察
(1)全体では「自傷念慮」経験12.1%,「1回」の自傷経験4.6%,「数回以上」の自傷経験3.3%だった。性差でみると,自傷念慮は小学5年生以降では女子のほうが多くなり,自傷経験は小学6年生までは男子,中学2年生以降は女子のほうが多かった(Figure1)。
(2)いじめの被害経験は全体の38.6%,加害経験32.0%,目撃経験39.2%だった。目撃経験のみ,女子は42.9%で男子よりも高かった(χ2=216.181, p<.001)。
(3)いじめ経験の有無により,自傷経験に差があるのかを検討するため,自傷経験を独立変数に,いじめ被害経験8項目の回答を点数化したものを従属変数に分散分析を行った。その結果,有意差がみられ,中程度の効果量であることが明らかになった(F(3,36047)= 911.957,p<.001, n2=.07)。多重比較の結果からは「自傷念慮」と「1回」の自傷経験以外ではすべての水準で有意差がみられ,いじめの経験は自傷経験と関連あることが明らかになった。