[PH32] アクティブ・ラーニングとしての対話活動
学習形態が児童の認知的理解に及ぼす影響
キーワード:アクティブ・ラーニング, 対話活動, 学習形態
問題と目的
有元(1989)と上野(1990)の報告した,学校での学習内容を自らの日常の実践へと関連づけていくことができない学校教育特有の問題について,菅井(2017)は有元と上野の調査を参考に,学校での児童の問題解決過程に対話活動を取り入れることは学習内容を自らの日常の実践へと関連づけることに影響するのか,という点を実証的に検討した。菅井は,問題解決過程で対話活動を取り入れたことによって日常の実践への関連づけに大きな影響があったことを示し,対話活動によって生じた他者とのインタラクションが,児童の学習に質的な変容をもたらしたことを報告した。
しかし,菅井の調査では,問題解決過程における対話活動の有無の差を比較したに過ぎず,対話活動の質的な側面については検討されていない。児童が日常の実践へ関連づけていくためには,対話活動の質的な側面に着目した学習法が検討されることが望ましい。そこで本研究では,児童の対話活動にアクティブ・ラーニングとしてグループ活動を取り入れ,その影響について検討を行う。
方 法
2016年3月,神奈川県内の私立小学校3年生2学級を自由対話群37名とグループ対話群39名に分類し調査を実施した。学校と日常との関連づけを測るための課題問題として,有元と上野の調査を参考に,かけ算の文章問題10問を採用した。10問のうち,5問は日常の実践へと関連づけが可能な,いわゆる適正な文章問題であり,残りの5問のうち2問は計算したとしても何の意味も持たないような問題,或いは計算の意味を持つ状況を探しにくい問題であった。また,他の2問はありえない条件や前提を持つために日常的な実践的感覚から外れた問題であり,残りの1問は正答を導くための条件が文章問題内に揃っていない問題であった。これら「無意味問題」「非現実的数値問題」「条件不備問題」の日常の実践への関連づけができないと判断される問題が,10問中5問を構成した。これらの文章問題10問は順序不同であり,文章問題10問のうち,問2と問8が「無意味問題」であった。また,問6と問10が「非現実的数値問題」であり,問7が「条件不備問題」であった。
自由対話群の児童37名へは,離席し自由に対話してもよいことを学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であったが,休み時間のように対話と離席に制限がない学習形態とした。グループ対話群の児童39名へは給食や清掃などの活動を日常的に共にする5名或いは6名の班ごとに対話をしながらグループ活動で取り組むように学級担任が教示し,調査が実施された.グループ対話群の児童は,児童同士が班ごとに机を向かい合わせる配置で,着席しながら課題問題へ取り組む学習形態であった.調査は対象校の20分間の休み時間帯に実施され,同一時間内での解答内容を比較するため,解答の制限時間を設けた。文章問題の数と内容から検討し,15分で解答を打ち切ることにした。
結果と考察
分析では,日常の実践への関連づけができない課題問題について,文章問題の非日常性を指摘して解答ができないと答えていることを,関連づけができているとみなし比較した。その結果,自由対話群がグループ対話群より日常の実践へ関連づけながら問題解決を図ることが確認された(Table 1)。対話活動においてアクティブ・ラーニングとしてグループ活動を取り入れることで,児童の学習に質的な変容がもたらされることが示された。対話活動においては児童の主体性に併せて,教師が共に学習環境をデザインしていくことが必要であると捉えられる。
有元(1989)と上野(1990)の報告した,学校での学習内容を自らの日常の実践へと関連づけていくことができない学校教育特有の問題について,菅井(2017)は有元と上野の調査を参考に,学校での児童の問題解決過程に対話活動を取り入れることは学習内容を自らの日常の実践へと関連づけることに影響するのか,という点を実証的に検討した。菅井は,問題解決過程で対話活動を取り入れたことによって日常の実践への関連づけに大きな影響があったことを示し,対話活動によって生じた他者とのインタラクションが,児童の学習に質的な変容をもたらしたことを報告した。
しかし,菅井の調査では,問題解決過程における対話活動の有無の差を比較したに過ぎず,対話活動の質的な側面については検討されていない。児童が日常の実践へ関連づけていくためには,対話活動の質的な側面に着目した学習法が検討されることが望ましい。そこで本研究では,児童の対話活動にアクティブ・ラーニングとしてグループ活動を取り入れ,その影響について検討を行う。
方 法
2016年3月,神奈川県内の私立小学校3年生2学級を自由対話群37名とグループ対話群39名に分類し調査を実施した。学校と日常との関連づけを測るための課題問題として,有元と上野の調査を参考に,かけ算の文章問題10問を採用した。10問のうち,5問は日常の実践へと関連づけが可能な,いわゆる適正な文章問題であり,残りの5問のうち2問は計算したとしても何の意味も持たないような問題,或いは計算の意味を持つ状況を探しにくい問題であった。また,他の2問はありえない条件や前提を持つために日常的な実践的感覚から外れた問題であり,残りの1問は正答を導くための条件が文章問題内に揃っていない問題であった。これら「無意味問題」「非現実的数値問題」「条件不備問題」の日常の実践への関連づけができないと判断される問題が,10問中5問を構成した。これらの文章問題10問は順序不同であり,文章問題10問のうち,問2と問8が「無意味問題」であった。また,問6と問10が「非現実的数値問題」であり,問7が「条件不備問題」であった。
自由対話群の児童37名へは,離席し自由に対話してもよいことを学級担任が教示し,調査を実施した。机の配置は講義形式であったが,休み時間のように対話と離席に制限がない学習形態とした。グループ対話群の児童39名へは給食や清掃などの活動を日常的に共にする5名或いは6名の班ごとに対話をしながらグループ活動で取り組むように学級担任が教示し,調査が実施された.グループ対話群の児童は,児童同士が班ごとに机を向かい合わせる配置で,着席しながら課題問題へ取り組む学習形態であった.調査は対象校の20分間の休み時間帯に実施され,同一時間内での解答内容を比較するため,解答の制限時間を設けた。文章問題の数と内容から検討し,15分で解答を打ち切ることにした。
結果と考察
分析では,日常の実践への関連づけができない課題問題について,文章問題の非日常性を指摘して解答ができないと答えていることを,関連づけができているとみなし比較した。その結果,自由対話群がグループ対話群より日常の実践へ関連づけながら問題解決を図ることが確認された(Table 1)。対話活動においてアクティブ・ラーニングとしてグループ活動を取り入れることで,児童の学習に質的な変容がもたらされることが示された。対話活動においては児童の主体性に併せて,教師が共に学習環境をデザインしていくことが必要であると捉えられる。