日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

2018年9月17日(月) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH58] 不登校ゼロ達成

不登校を激減した方法7

工藤弘 (安曇野市立豊科東小学校)

キーワード:不登校, 自己効力感

はじめに
 2010年の日本教育心理学会総会以降のポスターやシンポジウムにおいて,「不登校を激減させた方法1~6」の実証研究を発表してきた。
 市川・工藤(2017)では,これらの実証研究をもとに,各学校や教育委員会レベルで実践しやすいように紹介した。
 その中で,「不登校激減法の8つのポイント」,「これまでの不登校指導の問題点と不登校激減法の導入」,「不登校・登校しぶりが起きたときの6段階対応法」,「校内中間教室での取り組み」,「クラス復帰のプロセスの可視化」,「全教職員による全校指導体制の構築」,「不登校・登校しぶりが起きるのを予測する」,「登校しぶりを未然に防止する学級づくり」,として標準的な指導のモデルを提案した。
 不登校について関心の高い各県や学校で研修会等を実施してきた。成果が出ているという報告がある一方,本実践研究での戦略用語である「タッチ登校」の言葉が各学校での実践に広まりつつあるが言葉が一人歩きしているという懸念もあるのが実情である。

目  的
 この不登校激減法を6年間継続して行ってきたA小学校(児童数約1000人)の不登校児童数の変化を検証する。
 6年間の完全実施は,A小学校の全児童が入学からこの方法の下に学校生活を送っていることになる。同様に,早期発見・対応のシステムが教職員間にも十分浸透し,支援会議で生徒指導主任から解決志向型の提案があるのが当然という職員間の雰囲気ができるのに十分といえるからである。
 また,激減法同様に,問題行動についても段階的生徒指導による支援会議のシステムを取り入れてきた。この点にも触れたい。

仮  説
 不登校激減法を6年間完全実施することで,不登校児童人数が減り全国平均を下回るだろう。
 また,同様に生徒指導上の諸問題,特にいじめや校内暴力についても効果があるのではと考えた。
 
方  法
 A小学校,全校児童約1000人。6年間,不登校激減法を実践する中で,次の2点を検証する。①不登校児童数が何名になったか。②今年度生徒指導での校内暴力,いじめが何件あったか。

結  果
 不登校児童数はゼロになった。職員行動ルールにかかわって,8名の支援会議があったがいずれも年間30日以上の欠席に至らなかった。うち4件はすでに学級完全復帰となった。
 一方,生徒指導での校内暴力,いじめについてもゼロであった。

考  察
 不登校について効果があることが実証された。この激減法で確実に全国平均を下回るといえる。
 また,この方法を6年間実施することによって,不登校ばかりでなく,生徒指導上の諸問題についても,同様に効果があるのかもしれない。詳細な検討は,今後の課題である。

付  記
 登校支援チームの先生方,学級担任,学年主任,6年間の歴代学校長教頭をはじめ,関係の皆様に心より感謝申し上げます。

参考文献
市川千秋・工藤弘 2017.不登校は必ず減らせる。6段階の対応で取り組む不登校激減法,学事出版