[PE35] 他者の性格の評価が,その人を好きか嫌いかでどのように変化するか
キーワード:対人魅力、性格、対人好悪
目 的
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人,嫌いな人とどのように類似するのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。その結果,評価が,好き,自分,嫌い,の順になった。だが,ここには,評価対象者に対する好悪が影響したと考えられた。そこで,実在の好きともっとも望ましい好き,実在の嫌いともっとも望ましくない嫌いを比較することで,実際に好きな人と嫌いな人の性格を,どのように評価しているのかを調べた。
方 法
調査対象者 女性118名と男性83名の201名の通信制大学生を調査の対象とした。平均年齢は,48.2歳(SD=10.9歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による主要5因子性格検査における,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切った。
手続き はじめに主要5因子の説明をしたあと,その5項目について,対象者に,自分の友人として,想定されるもっとも好きなタイプ(好・想)と嫌いなタイプ(嫌・想)を,5段階で評価させた。その,約24時間後に,対象者自身(自分)と,実際にもっとも好きな人(好・実)と嫌いな人(嫌・実)の三者を,同じ項目について5段階で評価させた。評価の順序は,自分,好き,嫌い,による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
各因子の評価スコアを,左から右へ1点から5点とし,評価対象ごとに,5因子の5段階評価のスコアを合計し,その平均値を求めた(Table 1)。これらの値について,因子ごとに,1要因5水準の対象者内計画の分散分析を行った。その結果,評価対象の効果は5因子のすべてで有意であった。そこで,LSD法による多重比較を行った結果,好・実と好・想は,外向性で,好・実>好・想,協調性と勤勉性で,好・実=好・想,情緒安定と知性で,好・実<好・想,となった。嫌・実と嫌・想は,すべて,嫌・実>嫌・想,となった。また,自分と好・実は,すべてで,自分<好・実,となり,自分と嫌・実は,外向性以外では,自分>嫌・実,であったが,外向性のみ,自分<嫌・実,となった。
考 察
自分が実際に好きあるいは嫌いな人は,想定される最良と最悪そのものではないという結果になった。だが,好きについては,特に,外向性,協調性,勤勉性において,理想像ともいえるような評価がみられた。おそらく,良好な対人関係のもとでは,相手の,外向性,協調性,勤勉性を,より高く評価する傾向があらわれるのかもしれない。
一方,嫌いについては,外向性以外は,スコアがすべて自分よりも低くなった。外向性の高さも,他の低さとの兼ね合いで,ここでは,ネガティブにはたらいたようである。つまり,好きあるいは嫌いであることが,結果的に,好きと自分vs.嫌い,ともいえるような関係を生じさせたと考えられる。
引用文献
Byrne, D., & Nelson, D.(1965).Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements. Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子(2012).対人魅力と性格の類似性との関係 日本心理学会第76回大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子(1999).性格は5次元だった 培風館
他者の魅力を評価するときに,態度や性格の類似度が高まるほど,魅力も高くなることが示されている(Byrne & Nelson, 1965)。そこで,梶原・梶原(2012)は,その逆に,自分の性格が,好きな人,嫌いな人とどのように類似するのかを調べた。その際,主要5因子を性格の評価点にして,調査対象者自身が,自分と好きな人,嫌いな人の三者すべての性格を5段階で評価した。その結果,評価が,好き,自分,嫌い,の順になった。だが,ここには,評価対象者に対する好悪が影響したと考えられた。そこで,実在の好きともっとも望ましい好き,実在の嫌いともっとも望ましくない嫌いを比較することで,実際に好きな人と嫌いな人の性格を,どのように評価しているのかを調べた。
方 法
調査対象者 女性118名と男性83名の201名の通信制大学生を調査の対象とした。平均年齢は,48.2歳(SD=10.9歳)であった。
調査内容 村上・村上(1999)による主要5因子性格検査における,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性を評価項目とした。外向性は,内向的と外向的,協調性は,冷たいと暖かい,勤勉性は,怠惰と勤勉,情緒安定性は,神経質と気楽,知性は,浅はかと思慮深い,を両端として5段階に区切った。
手続き はじめに主要5因子の説明をしたあと,その5項目について,対象者に,自分の友人として,想定されるもっとも好きなタイプ(好・想)と嫌いなタイプ(嫌・想)を,5段階で評価させた。その,約24時間後に,対象者自身(自分)と,実際にもっとも好きな人(好・実)と嫌いな人(嫌・実)の三者を,同じ項目について5段階で評価させた。評価の順序は,自分,好き,嫌い,による6通りの順列のいずれかとした。
結 果
各因子の評価スコアを,左から右へ1点から5点とし,評価対象ごとに,5因子の5段階評価のスコアを合計し,その平均値を求めた(Table 1)。これらの値について,因子ごとに,1要因5水準の対象者内計画の分散分析を行った。その結果,評価対象の効果は5因子のすべてで有意であった。そこで,LSD法による多重比較を行った結果,好・実と好・想は,外向性で,好・実>好・想,協調性と勤勉性で,好・実=好・想,情緒安定と知性で,好・実<好・想,となった。嫌・実と嫌・想は,すべて,嫌・実>嫌・想,となった。また,自分と好・実は,すべてで,自分<好・実,となり,自分と嫌・実は,外向性以外では,自分>嫌・実,であったが,外向性のみ,自分<嫌・実,となった。
考 察
自分が実際に好きあるいは嫌いな人は,想定される最良と最悪そのものではないという結果になった。だが,好きについては,特に,外向性,協調性,勤勉性において,理想像ともいえるような評価がみられた。おそらく,良好な対人関係のもとでは,相手の,外向性,協調性,勤勉性を,より高く評価する傾向があらわれるのかもしれない。
一方,嫌いについては,外向性以外は,スコアがすべて自分よりも低くなった。外向性の高さも,他の低さとの兼ね合いで,ここでは,ネガティブにはたらいたようである。つまり,好きあるいは嫌いであることが,結果的に,好きと自分vs.嫌い,ともいえるような関係を生じさせたと考えられる。
引用文献
Byrne, D., & Nelson, D.(1965).Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcements. Journal of Personality and Social Psychology, 1, 659-663.
梶原直樹・梶原和子(2012).対人魅力と性格の類似性との関係 日本心理学会第76回大会発表論文集,2AMB11.
村上宣寛・村上千恵子(1999).性格は5次元だった 培風館