[PF40] 父親の育児家事参加と母親の育児不安の検討2
家庭内ゲートキーパーに着目して
キーワード:育児不安、父親の育児家事参加、ゲートキーパー
問題と目的
本研究では,アメリカを中心に研究されたMaternalGatekeepingという概念を捉えなおし,父親の育児家事参加がどう影響を与え,母親自身の育児不安とどう関連しているかを検討した。父親の育児家事行動を抑制または促進する母親の信念と行動を家庭内ゲートキーパーと定義し,父親の育児家事参加,母親自身の育児不安との関連を調べるため,以下の仮説をたてて検証を行った。父親の育児家事参加は母親の家庭内ゲートキーパー行動と関連がある(仮説1)。父親の育児家事行動が長いほど母親の育児不安が低く,短いほど母親の育児不安は高い(仮説2)。家庭内ゲートキーパーは母親自身の育児不安と関連がある(仮説3)。
方 法
A県内の幼稚園に通う3歳から5歳の子をもつ母親計270名を対象に質問紙調査を行い,209名から回答があった。2014年12月に調査を実施した。父親の育児家事参加の時間について尋ね,家庭内ゲートキーパー尺度と家庭生活感尺度(今村,2015)を使用して質問紙調査を行った。
結 果
父親の育児家事参加時間を独立変数とし,家庭内ゲートキーパーの下位尺度を従属変数とした一元配置の分散分析を行った結果,父親の育児家事参加は母親の配慮と支援行動を促進し,諦めの感情を抑制することが明らかになった。一方父親の育児家事参加時間が中程度の時に母親の家事否定と縄張り意識の平均得点が高くなった。仮説1「父親の育児家事参加は母親の家庭内ゲートキーパー行動と関連がある」は支持された。
父親の育児家事参加時間を独立変数とし,家庭生活感の下位尺度を従属変数とした一元配置の分散分析を行った。その結果,父親の育児家事参加は母親の家庭満足感を高め,一方で父親の育児家事参加が少ないほど母親の家庭責任感と不平等感および育児不安が高まった。父親の留守中に子育てに一人で向き合う母親のかかえる不安をあらわす結果となった。仮説2の「父親の育児家事行動が長いほど母親の育児不安が低く,短いほど母親の育児不安は高い」は一部支持された。
家庭内ゲートキーパーの下位尺度を独立変数とし,家庭生活感を従属変数とした一元配置の分散分析を行った。夫の育児家事行動に対して配慮と支援を怠らない母親は家庭満足感が高く,夫に対して諦めの感情をもつ母親は家庭満足感が低かった。また夫の家事参加に対して否定的な態度をとる母親は夫婦間の育児家事分担に不満を抱いており,育児不安が高く,責任感が強い傾向にあった。縄張り意識の強い母親は,不平等感と育児不安が高かった。仮説3「家庭内ゲートキーパーは母親の育児不安と関連がある」は支持された。
考 察
父親の育児家事参加は母親の「配慮と支援」に影響を与えており,父親の家事参加は母親の父親に対する否定的な態度を抑制する可能性が示唆された。また,父親の育児家事参加が少ないほど母親の「諦め」の念が強くなり,夫に対する不満や育児不安が高まった。諦めが強い母親は家庭満足感が低く,より強い責任感をもっていた。「縄張り意識」は,父親の家事参加が中程度のときが最も強くなり,父親の家事参加が母親の縄張り意識を抑制する可能性が示唆された。家庭生活感との関連においては,縄張り意識が高い母親は夫に対する強い不平等感を抱き,育児不安が高かった。自分で育児家事の領域を囲い込んで父親に明け渡さず,結果として不平等感と育児不安を募らせるという,自縄自縛ともいえる母親像が明らかになった。
本研究では,アメリカを中心に研究されたMaternalGatekeepingという概念を捉えなおし,父親の育児家事参加がどう影響を与え,母親自身の育児不安とどう関連しているかを検討した。父親の育児家事行動を抑制または促進する母親の信念と行動を家庭内ゲートキーパーと定義し,父親の育児家事参加,母親自身の育児不安との関連を調べるため,以下の仮説をたてて検証を行った。父親の育児家事参加は母親の家庭内ゲートキーパー行動と関連がある(仮説1)。父親の育児家事行動が長いほど母親の育児不安が低く,短いほど母親の育児不安は高い(仮説2)。家庭内ゲートキーパーは母親自身の育児不安と関連がある(仮説3)。
方 法
A県内の幼稚園に通う3歳から5歳の子をもつ母親計270名を対象に質問紙調査を行い,209名から回答があった。2014年12月に調査を実施した。父親の育児家事参加の時間について尋ね,家庭内ゲートキーパー尺度と家庭生活感尺度(今村,2015)を使用して質問紙調査を行った。
結 果
父親の育児家事参加時間を独立変数とし,家庭内ゲートキーパーの下位尺度を従属変数とした一元配置の分散分析を行った結果,父親の育児家事参加は母親の配慮と支援行動を促進し,諦めの感情を抑制することが明らかになった。一方父親の育児家事参加時間が中程度の時に母親の家事否定と縄張り意識の平均得点が高くなった。仮説1「父親の育児家事参加は母親の家庭内ゲートキーパー行動と関連がある」は支持された。
父親の育児家事参加時間を独立変数とし,家庭生活感の下位尺度を従属変数とした一元配置の分散分析を行った。その結果,父親の育児家事参加は母親の家庭満足感を高め,一方で父親の育児家事参加が少ないほど母親の家庭責任感と不平等感および育児不安が高まった。父親の留守中に子育てに一人で向き合う母親のかかえる不安をあらわす結果となった。仮説2の「父親の育児家事行動が長いほど母親の育児不安が低く,短いほど母親の育児不安は高い」は一部支持された。
家庭内ゲートキーパーの下位尺度を独立変数とし,家庭生活感を従属変数とした一元配置の分散分析を行った。夫の育児家事行動に対して配慮と支援を怠らない母親は家庭満足感が高く,夫に対して諦めの感情をもつ母親は家庭満足感が低かった。また夫の家事参加に対して否定的な態度をとる母親は夫婦間の育児家事分担に不満を抱いており,育児不安が高く,責任感が強い傾向にあった。縄張り意識の強い母親は,不平等感と育児不安が高かった。仮説3「家庭内ゲートキーパーは母親の育児不安と関連がある」は支持された。
考 察
父親の育児家事参加は母親の「配慮と支援」に影響を与えており,父親の家事参加は母親の父親に対する否定的な態度を抑制する可能性が示唆された。また,父親の育児家事参加が少ないほど母親の「諦め」の念が強くなり,夫に対する不満や育児不安が高まった。諦めが強い母親は家庭満足感が低く,より強い責任感をもっていた。「縄張り意識」は,父親の家事参加が中程度のときが最も強くなり,父親の家事参加が母親の縄張り意識を抑制する可能性が示唆された。家庭生活感との関連においては,縄張り意識が高い母親は夫に対する強い不平等感を抱き,育児不安が高かった。自分で育児家事の領域を囲い込んで父親に明け渡さず,結果として不平等感と育児不安を募らせるという,自縄自縛ともいえる母親像が明らかになった。