日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R11[レギュラー]石油・石炭地質学と有機地球化学

[1ch203-05] R11[レギュラー]石油・石炭地質学と有機地球化学

2021年9月4日(土) 09:00 〜 10:00 第2 (第2)

座長:山口 悠哉、三瓶 良和

09:45 〜 10:00

[R11-O-3] 東京都大田区および神奈川県横浜市に掘削された温泉井の最上部新生界石灰質ナンノ化石層序

*千代延 俊1、佐久山 直起1 (1. 秋田大学国際資源学部)

キーワード:最上部新生界、上総層群、石灰質ナンノ化石

東京を中心とする関東地域では,都市部における地震災害に対応する防災の観点から,平野地下に厚く堆積する三浦層群や上総層群に相当する地層の分布や基盤構造が注目されている.本講演で対象とする両層群およびその相当層は房総半島のみならず,東京から埼玉一帯にかけて広く分布するものの,人口が密集する東京およびその近郊では地表に露出することはほとんどない.そのため,関東平野の地下地質を明らかにするには掘削調査が不可欠である.しかし,一般的に両層群相当層は層厚や岩相の側方変化が激しいため,掘削調査により得られたコア,カッティングスおよび物理検層記録による地層対比は困難である.したがって,微化石による詳細な坑井間対比が必要とされるが,掘削調査地点の偏りなどが原因で,広域における詳細な年代データに乏しい.これまでに千代延ほか(2007)により,石灰質ナンノ化石層序に基づいた東京都中央部の新第三系地下層序区分が明らかにされたが,やはり広域的な情報は少なく,三浦層群および上総層群相当層の平面的な分布形態や層厚変化を含めた三次元構造は明らかとなっていない.
以上の点を踏まえ,講演者らは東京都大田区および神奈川県横浜市で温泉開発を目的に1000 m以上の掘削が行われている坑井試料の石灰質ナンノ化石を検討した.本講演では,神奈川県横浜市の二坑井(戸塚温泉井,瀬谷温泉井)および東京都大田区の一坑井(下丸子温泉井)の岩相層序と石灰質ナンノ化石層序の調査結果に基づいて,関東平野南部地域の堆積盆地埋積過程について報告する.
岩相は,各坑井ともに全層準を通じて細粒〜極細粒砂岩および砂質シルト岩を主とし,礫岩および凝灰岩を豊富に含む.また,一部の深度で礫岩中に花崗岩が顕著に認められる.石灰質ナンノ化石層序結果は,これらの地層が房総半島に分布する安房層群(三浦層群相当)安野層から上総層群黄和田層に相当し,およそ1.2〜3.8 Maの年代を示した.堆積速度の検討からは,全層準を通じて明瞭な堆積間隙は認められず,全坑井において速度変化はあるものの連続的な累重が指摘された.また,関東平野南部の層厚の変化に注目すると,2.2から1.7 Maを境にして,堆積の中心が現在の神奈川地域(西部地域)から東京〜千葉地域(東部地域)へ大きく移動したことが明らかとなった.また,その変化パターンは西部から東部への前進的な堆積盆の埋積および陸化過程を表す.

引用文献
千代延俊・佐藤時幸・石川憲一・山﨑誠, 2007: 東京都中央部に掘削された温泉井の最上部新生界石灰質ナンノ化石層序. 地質雑, 113 (6), 223-232.