09:45 〜 10:00
[R12-O-3] 亀裂の連結性評価と亀裂の連結性が岩石物性に与える影響について
キーワード:亀裂連結性、弾性波速度、電気伝導度
地下深部の水の存在は地震波速度構造や比抵抗構造によって検知されている[1].では,その流体の経路や貯留を担う孔隙はどのような構造を持って岩石の中に収まっているのだろうか?高温・高圧の環境であっても,岩石の浸透率は高く10-14 m2もの値が保たれていることが地震活動や地震波の減衰の周期的な時間変化から推察されている[2].しかし10-14 m2もの高い浸透率は,多孔質砂岩のような岩石でなければ保てず,そのような多孔質の岩石が数10 kmもの地下深部に存在できるとは考えにくい.むしろ亀裂が流体の経路となっていると考えるほうが自然であろう.亀裂は固体地球内における水循環の経路として重要な役割を担う.また,流体の移動を妨げる帽岩との組み合わせにより,亀裂のネットワークは貯留層としての役割も担う.亀裂を通って上昇し貯留される水は地下深部の熱エネルギーを浅部へ運び熱資源としての価値を持つ.また地下深部の水は断層や地殻の強度を低下させると考えられている.このように,岩石中の亀裂の連結性の評価は,固体地球における水循環,熱資源としての利用,地殻の変形などを議論する上で重要である.この研究では岩石の各種物性と亀裂の分布の間の関係を明らかにするべく,熱クラックにより人工的に亀裂を生成させた稲田花崗岩試料を用意し,弾性波速度・電気伝導度等の各種物性との比較を試みる.要旨では主にCT画像から亀裂の連結性を定量評価する方法を述べるが,発表にて亀裂連結性と弾性波速度・電気伝導度との関係まで議論する予定である.
稲田花崗岩は外径25.8mm長さ25mmの円柱に整形し,2℃/分の速度で550℃もしくは650℃まで昇温した炉の中で2時間放置後,氷水に投入することで生成した.また,亀裂生成前後で孔隙率の測定,弾性波速度の測定,マイクロフォーカスX線CT撮影による亀裂の分布の把握を行った.550℃に比べ650℃から急冷した試料ほど生成される孔隙率は増加し,それに伴い弾性波速度の低下が見られた.まず,CT画像の画像処理による亀裂連結性の定量評価を試みる.ここで重要なのが,8ビットグレースケールのCT画像から亀裂のみを,いかに正確かつ客観的に抽出できるようにするか,である.下記に主な画像処理の手順を示す.まず,石英粒子と思われる部分のみ抽出し,それらグレーレベルの平均値を試料ごとに算出後,基準とした試料の平均値との差をそれぞれの試料の画像に加えることで全試料のCT画像の色味をそろえた.次にFiji (ImageJ)のプラグイン,Trainable Weka Segmentation [3]を用い,CT画像から亀裂を抽出した.この手法は機械学習の手法を応用し,対象の分離を行うものである.この手法を用いるにあたって,最も亀裂が明瞭に観察できた稲田花崗岩試料のCT画像のごく一部を,亀裂とマトリックスに詳細に分離したデータを教師データとした.この分離により,probability map(亀裂と認識される確率が高いほど白色となる8ビットグレースケール画像)が作られる.このprobability mapを二値化し,亀裂の連結性を評価するための画像の用意ができたことになる.二値化における閾値の決定もまた,様々な手法があるが,ここではTextured Renyi entropy法[4] を用いた.亀裂のみ抽出した画像をスケルトン化し,1本の亀裂あたりに交差する他の亀裂の本数の平均値ξを計測する.亀裂連結の確率pとξの間にはp =ξ /(ξ+2)の関係が成立している[5].発表では,亀裂連結の確率pを求め,稲田花崗岩の弾性波速度・電気伝導度との関係から,亀裂連結の進行がバルク物性を急変させる閾値pcについて議論の予定である.
本研究は 科研費基盤研究(C)「亀裂連結性の定量評価手法の開発と亀裂連結性が岩石の物性に与える影響(19K04047)」のサポートを受け実施されております.また,高知大学海洋コア総合研究センター共同利用(20A012, 20B010)の採択を受け,亀裂生成前後のX線CT画像の撮影には同センター共同利用機器Xradiaを,また孔隙率の測定にペンタピクノメーターを使用させていただきました.記して謝辞といたします.
引用文献 1: Ogawa et al., 2001, GRL; 2:Nakajima and Uchida, 2018, Nature Geoscience; 3: Arganda-Carreras et al. 2017, Bioinformatics; 4: Sahoo and Arora, 2004, Pattern Recognition; 5: Hestir and Long, 1990, JGR.
稲田花崗岩は外径25.8mm長さ25mmの円柱に整形し,2℃/分の速度で550℃もしくは650℃まで昇温した炉の中で2時間放置後,氷水に投入することで生成した.また,亀裂生成前後で孔隙率の測定,弾性波速度の測定,マイクロフォーカスX線CT撮影による亀裂の分布の把握を行った.550℃に比べ650℃から急冷した試料ほど生成される孔隙率は増加し,それに伴い弾性波速度の低下が見られた.まず,CT画像の画像処理による亀裂連結性の定量評価を試みる.ここで重要なのが,8ビットグレースケールのCT画像から亀裂のみを,いかに正確かつ客観的に抽出できるようにするか,である.下記に主な画像処理の手順を示す.まず,石英粒子と思われる部分のみ抽出し,それらグレーレベルの平均値を試料ごとに算出後,基準とした試料の平均値との差をそれぞれの試料の画像に加えることで全試料のCT画像の色味をそろえた.次にFiji (ImageJ)のプラグイン,Trainable Weka Segmentation [3]を用い,CT画像から亀裂を抽出した.この手法は機械学習の手法を応用し,対象の分離を行うものである.この手法を用いるにあたって,最も亀裂が明瞭に観察できた稲田花崗岩試料のCT画像のごく一部を,亀裂とマトリックスに詳細に分離したデータを教師データとした.この分離により,probability map(亀裂と認識される確率が高いほど白色となる8ビットグレースケール画像)が作られる.このprobability mapを二値化し,亀裂の連結性を評価するための画像の用意ができたことになる.二値化における閾値の決定もまた,様々な手法があるが,ここではTextured Renyi entropy法[4] を用いた.亀裂のみ抽出した画像をスケルトン化し,1本の亀裂あたりに交差する他の亀裂の本数の平均値ξを計測する.亀裂連結の確率pとξの間にはp =ξ /(ξ+2)の関係が成立している[5].発表では,亀裂連結の確率pを求め,稲田花崗岩の弾性波速度・電気伝導度との関係から,亀裂連結の進行がバルク物性を急変させる閾値pcについて議論の予定である.
本研究は 科研費基盤研究(C)「亀裂連結性の定量評価手法の開発と亀裂連結性が岩石の物性に与える影響(19K04047)」のサポートを受け実施されております.また,高知大学海洋コア総合研究センター共同利用(20A012, 20B010)の採択を受け,亀裂生成前後のX線CT画像の撮影には同センター共同利用機器Xradiaを,また孔隙率の測定にペンタピクノメーターを使用させていただきました.記して謝辞といたします.
引用文献 1: Ogawa et al., 2001, GRL; 2:Nakajima and Uchida, 2018, Nature Geoscience; 3: Arganda-Carreras et al. 2017, Bioinformatics; 4: Sahoo and Arora, 2004, Pattern Recognition; 5: Hestir and Long, 1990, JGR.