日本地質学会第128年学術大会

講演情報

シンポジウム

S1.[シンポ]球状コンクリーションの科学–理解と応用-(一般公募なし)

[2ch101-09] S1.[シンポ]球状コンクリーションの科学–理解と応用-(一般公募なし)

2021年9月5日(日) 09:30 〜 12:30 第1 (第1)

座長:勝田 長貴、吉田 英一、長谷川 精

11:45 〜 12:00

[S1-O-8] (招待講演)コンクリ―ション化プロセスの工学的応用

*丸山 一平1,2、吉田 英一1、山本 鋼志1、野口 貴文2 (1. 名古屋大学、2. 東京大学)

キーワード:コンクリート、コンクリーション、工学的応用、炭酸カルシウムコンクリート

コンクリートは、地球上で工業製品として、工業用水についで大量に利用されている物質であり、高い生産性を有する都市構築において必要不可欠な材料である。コンクリートは、(ポルトランド)セメント、水、砂、砂利、および化学混和剤等からなる材料で、高い圧縮強度、耐久性、耐火性、可塑性、などの観点から有益な材料である。水和して硬化するためには、もとの鉱物と水の体積に対して、低密度な物質をつくるなどの一定の条件を満たす必要があるが、Ca系の水和物は、この条件を満たすものを作りやすい。そのため、炭酸カルシウムより、カルシネーションしてCaを取り出して用いることが一般的に行われ、ポルトランドセメントはこの恩恵を大きく受けている。そのため、近年の脱炭素の流れの中でポルトランドセメントは、大きな分岐点に立たせられている。

1.炭酸カルシウムコンクリートへの応用可能性
コンクリーションの生成プロセスを工業的製造プロセスに応用することを目的として考えると、いくつかの工業的応用可能性が考えられる。本発表では、炭酸カルシウムコンクリーションの生成プロセスから学んだカルシウムとCO2を濃集するという観点から見た応用の実例として、NEDO・ムーンショット事業において、廃コンクリートを模擬したセメント硬化体粉末に対して、重炭酸カルシウムを用いて粉末間に炭酸カルシウムを析出させて硬化させることに成功した。

2.鉄コンクリーション生成メカニズムの応用可能性
既往研究[1]において、炭酸カルシウムコアと酸性の2価の鉄を有する溶液を接触させて、炭酸カルシウムコンクリーションの周囲に酸化鉄皮膜を生成し、ユタで発見された鉄コンクリーションの似た性状のものを人工的に生成することに成功した。この概念を応用し、閉山を目論む鉱山から出される酸性の水について、岩石の亀裂等をシーリングする手法、ならびに、岩石の亀裂等をシーリングする手法、ならびに、pH変化を用いた鉄等の沈殿作用を用いた鉱山の閉山を想定した重金属固定や鉄酸化物沈殿による流水制御の可能性を明らかにした[2]。これらは、セメントの新たな用途展開ならびに先の炭酸カルシウムコンクリートの応用展開につながる成果である。

[参考文献]
[1]Yoshida et al. (2018) Science Advances, [2]吉田ら、名古屋大学博物館報告2021, in press