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[R13-O-10] 南部沖縄トラフ八重山リフト南部の熱流量の特徴
キーワード:沖縄トラフ、IODP掘削、熱流量、背弧拡大
沖縄トラフの拡大は2Ma以降とされ,南部沖縄トラフではその中軸部付近に八重山中央地溝帯が存在し,その活動が0.1Ma以降とされる.これまでの構造探査では沖縄トラフ海底に海洋地殻は存在しないと報告されており,したがって沖縄トラフは,(古い)大陸地殻のリフティングの段階にあると考えられる.その仮説を検証するデータの一つが熱流量である.八重山中央地溝帯(YR)内部ではほぼすべての熱流量が40 mWm-2と非常に低い.一方その外側の沖縄トラフではデータがほとんどなく,系統的な議論が不可能な状況である.KH21-03 Leg1航海では,本海域において反射法地震探査・ピストンコア採取・熱流量測定・ドレッジ試料採取等が実施された(大坪ほか,本大会).ここでは熱流量測定結果を報告する.YR南側斜面から沖縄トラフ南部にかけて,ヒートフロー付ピストン4点,ヒートフロー4サイト(13点)にて熱流量の暫定値を得た.温度―深度分布は,全サイトとも直線的であり,流体移動や水温変動などの擾乱の影響は見られず,表層では熱伝導による放熱が卓越していると考えられる.熱伝導率は全サイトで概ね 1 W m-1K-1 であり,典型的な海底表層堆積物の値と一致している. YR南部での熱流量データが増加したが,その値は到底一様とはいいがたく,既存値と合わせて40 mWm-2以下から120 mWm-2まで,大きくばらついている.YR南斜面での低熱流量は,おそらく現在の高速堆積の影響によるものであろう.あるいはYR内部で現在進行している可能性のある熱水循環の流入域にあたるのかもしれない.一方八重山海丘と石垣海丘の中間では8点のデータが得られた.ここはArai et al. (2017JGR)により「magmatic uplift」と名付けられた地形的高まりと,海底下4㎞のメルトレンズがある.今回海底地形調査の結果,比高100m程度の海山が2個東西に並んでいることを発見した.熱流量は,西側の海山の何縁および北縁に沿って計測したが,北縁では東に向かって徐々に値が増加することが分かった.特に2つの海山の中間地点では120 mWm-2とこの付近で最も高い値を記録した.同時に実施した構造探査では,海底下200-800msec(往復走時)のあたりに異常反射面が検出され,Araiによるメルトと関連した何等かの熱的活動の存在が示唆される. トラフ底のベース熱流量値は,現時点では明瞭に提示できない.南縁で70mWm-2程度でありこれがベース値とも考えられるが,この地点は南側からのタービダイト供給の影響があり得るため,基盤からの熱流量が擾乱を受けている可能性の検討が必要である. 今回は,掘削の事前調査という目的があり,局所的な特徴というよりは,沖縄トラフ全域の傾向を得ることが主目的ではあった.しかしながら,新たにマッピングされた地形高まりの周辺で局所的な熱流量異常が検出されたことは大きな成果である.そのため,当初の予測(どこでも一様な熱流量)から大いにはずれた結果を得た.今後観測・解析を行い,沖縄トラフの成因に迫っていきたい.