日本地質学会第128年学術大会

講演情報

口頭発表

R16[レギュラー]ジュラ系+

[3ch211-11] R16[レギュラー]ジュラ系+

2021年9月6日(月) 11:30 〜 11:45 第2 (第2)

座長:佐野 晋一

11:30 〜 11:45

[R16-O-1] 太平洋―環太平洋地域における遠洋域,浅海域,陸域のジュラ・白亜系境界の広域対比と国際深海掘削計画

*松岡 篤1、黒田 潤一郎2、田中 えりか3、安川 和孝4 (1. 新潟大学理学部、2. 東京大学大気海洋研究所、3. 海洋研究開発機構、4. 東京大学大学院工学系研究科)

キーワード:ジュラ・白亜系境界、広域対比、放散虫、深海掘削、北西太平洋

【はじめに】  ジュラ・白亜系境界(JKB)の国際境界模式層断面とポイント (Global Boundary Stratotype Section and Point: GSSP)の策定は,顕生累代で唯一GSSPが未決定の系境界であるため,緊急の課題となっている.この策定に対して大きな力をもつ国際白亜系層序小委員会(ISCS)のベリアシアン作業部会(BWG)の活動について紹介する.このことに関連して,北西太平洋域における国際深海掘削計画についても触れる.
【ジュラ・白亜系境界GSSP策定の現状】 JKB のGSSP策定に際し,BWGはCalpionella alpina 亜帯の下限を主要マーカーと定め,その候補として南フランスのTre Marouaセクションを2019年に提案した.しかしながら,ISCSのvoting memberによる票決の結果,この提案は支持されなかった.こうした状況を受けて,2021年1月に新たにBWGが組織されることとなった.新しい委員長は,ポーランド地質研究所のJacek Grabowskiである.2021年6月時点で17名の委員のうちアジアからの委員は,松岡と南京地質古生物研究所のLi Gangの2人である.この作業部会の使命は,これまでのBWGと同様に,JKBを定義する主要マーカーを定めることと,ベリアシアンのGSSPを提案することにある.BWGは2月に初回のオンライン会議をもち,これからの活動方針を決めるとともに,定期的にオンライン会議をもつことを合意した.これまで,GSSPの関連で検討されてこなかった中南米のセクションを検討項目に加えるとともに,パンサラサの遠洋域における各種層序をレビューするということも方針に加えられた.これには,大洋底堆積物における微化石層序や古地磁気層序のレビューも含まれる.
【今後の方向性】 第1回目のBWGオンライン会議は2021年2月11日に開催された.そこでは,アルゼンチンのNeuquen Basinの研究成果が発表された.アンデス山脈の東側の高地に分布する背弧海盆堆積物には島弧からの火山灰も挟まれておりジルコンU-Pb年代が精度よく求められている.この結果によると,これまでのJKBの数値年代よりも5 m.y.程度若い年代が得られている.今後,アルゼンチンのセクションがGSSPの有力な候補となることが予想される.これまで,日本のジュラ・白亜系の層序は,テチス海沿いに対比を繋いでヨーロッパの層序と比較することが多かった.今後は,パンサラサを挟んで対岸の中南米のセクションとの対比が重要性を増す.北西太平洋の遠洋域深海の堆積層は,生層序,化学層序,古地磁気層序などの層序対比に関して高い潜在能力をもつ.西太平洋の遠洋域で得られた層序は,海成層と陸成層とが交互に累重する日本の層序を介して,アジア内陸部の非海成層との対比へと展開しうる.JOIDES Resolution号が太平洋域の戻ってくるタイミングを計って,北西太平洋域におけるIODPによる深海掘削を提案している.