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[R2-P-10] (エントリー)佐賀県,神埼地域に産する苦鉄質変成岩類の原岩の推定
キーワード:神埼地域、苦鉄質変成岩、中央海嶺玄武岩、オフィオライト
北部九州には白亜紀に活動した花崗岩類の分布域に変成岩類が点在している.これら変成岩類について,唐木田(1969)は高圧低温型変成作用を受けた後,白亜紀花崗岩類による接触変成作用を受けた複変成岩であるとした.一方,小山内ほか(1997)は,雷山地域の変成岩類が変成組織と鉱物組み合わせから接触変成作用を受ける前に低圧高温型の広域変成作用を被ったとした.その後,低圧高温型変成作用を受けた変成岩類が北部九州から多数報告されてきた.また,Adachi et al. (2012) は浮嶽地域に分布する泥質グラニュライトから120–100Maのモナズ石Th–U–Pb化学年代と105±2MaのLA–ICP–MSジルコンU–Pb年代を報告した.天山地域の東方延長に位置する神埼地域にも変成岩類が分布する.
このように北部九州に点在する変成岩類については,変成作用の特徴や変成年代についてのデータは増えつつあるが,原岩の化学的特徴やそれに基づいた形成場については未解決な問題である.こうした課題を解決することで,東アジア東縁における白亜紀以前のテクトニックセッティングはより明確なることが期待される.そこで本発表では神埼地域に分布する角閃岩類を対象に野外での産状,鏡下観察の結果,および全岩化学組成のデータをもとに原岩について議論する.
神埼地域に産する角閃岩類は,一般に東西系の走向で,南北に50〜80 度傾斜している.変成岩類は主に角閃岩で岩相の違いから角閃岩IとIIに区分される.角閃岩Ⅰは細粒な鉱物の定向配列が顕著で,石灰珪質岩の薄層を伴う.一方,角閃岩IIは角閃岩Iに比べて粗粒で,石灰珪質岩をほとんど伴わない.また,角閃岩Iはしばしば珪質片岩を伴い,角閃岩IIは集積岩起源の蛇紋岩を伴う. 角閃岩Iは顕著なネマトブラスティック組織を示し,主にホルンブレンドと斜長石から構成され,少量の石英を含む.ホルンブレンドは顕著な累帯構造を示し,コアで淡緑色,マントルで緑褐色,そしてリムでまた淡緑色へと変化する.石灰珪質部には,それらの鉱物に加えて単斜輝石や緑簾石,そしてカルサイトが共存する.副成分鉱物としてイルメナイトとチタン石そしてアパタイトを含む.角閃岩IIは角閃岩Iに比べて粗粒で,鉱物の配列が弱い.主にホルンブレンドと斜長石から構成され,少量の黒雲母とカリ長石そして石英を含む.ホルンブレンドの累帯構造はほとんど認められない.カリ長石はアンチパーサイト状に産する.ホルンブレンドは,しばしば斜長石や石英をポイキリティックに包有する.副成分鉱物としてイルメナイトとチタン石,そしてアパタイトを含む.角閃岩IとIIの関係は不明だが,細粒で石灰珪質岩の薄層を伴う角閃岩Iは表層岩で,粗粒でしばしばポイキリティック組織を示す角閃岩IIは貫入岩起源と考えられる.
角閃岩I 15試料と角閃岩II 15試料を蛍光X線分析装置で全岩化学組成を分析した.角閃岩Iはソレアイト質玄武岩,角閃岩IIはソレアイト質玄武岩〜玄武岩質安山岩の組成を示す.測定した試料から集積作用の効果を除き比較的未分化な組成を選定し,HFS元素による各種地球化学的判別図を使って原岩の化学的特徴を検討した.その結果,角閃岩I, IIは主に中央海嶺玄武岩(MORB)組成で,一部火山弧玄武岩組成に類似した特徴を示す.
以上の組成的特徴や構成岩石を考慮すると,角閃岩I, IIはMORBを形成する環境で形成された玄武岩質マグマに由来し,白亜紀以前のオフィオライトを構成していた可能性が高い.
【引用文献】
Adachi, T., Osanai, Y., Nakano, N., and Owada, M. (2012) LA-ICP-MS U-Pb zircon and FE-EPMA U-Th-Pb monazite dating of pelitic granulites from the Mt. Ukidake area, Sefuri Mountains, northern Kyusyu. Journal of the Geological Society of Japan, 118, 39-52.
唐木田芳文・山本博達・宮地貞憲・大島恒彦・井上保 (1969) 九州の点在変成岩類の特徴と構造地質学的位置.地質学論集,4,3-21.
小山内康人・濱本拓志・大和田正明・亀井淳志・加々美寛雄・吉原靖 (1997) 肥後変成帯の帰属はなにか?―東アジアの広域変成岩との関連性について―.九州テクトニクスワーキンググループ研究連絡誌, 11, 11-18.
このように北部九州に点在する変成岩類については,変成作用の特徴や変成年代についてのデータは増えつつあるが,原岩の化学的特徴やそれに基づいた形成場については未解決な問題である.こうした課題を解決することで,東アジア東縁における白亜紀以前のテクトニックセッティングはより明確なることが期待される.そこで本発表では神埼地域に分布する角閃岩類を対象に野外での産状,鏡下観察の結果,および全岩化学組成のデータをもとに原岩について議論する.
神埼地域に産する角閃岩類は,一般に東西系の走向で,南北に50〜80 度傾斜している.変成岩類は主に角閃岩で岩相の違いから角閃岩IとIIに区分される.角閃岩Ⅰは細粒な鉱物の定向配列が顕著で,石灰珪質岩の薄層を伴う.一方,角閃岩IIは角閃岩Iに比べて粗粒で,石灰珪質岩をほとんど伴わない.また,角閃岩Iはしばしば珪質片岩を伴い,角閃岩IIは集積岩起源の蛇紋岩を伴う. 角閃岩Iは顕著なネマトブラスティック組織を示し,主にホルンブレンドと斜長石から構成され,少量の石英を含む.ホルンブレンドは顕著な累帯構造を示し,コアで淡緑色,マントルで緑褐色,そしてリムでまた淡緑色へと変化する.石灰珪質部には,それらの鉱物に加えて単斜輝石や緑簾石,そしてカルサイトが共存する.副成分鉱物としてイルメナイトとチタン石そしてアパタイトを含む.角閃岩IIは角閃岩Iに比べて粗粒で,鉱物の配列が弱い.主にホルンブレンドと斜長石から構成され,少量の黒雲母とカリ長石そして石英を含む.ホルンブレンドの累帯構造はほとんど認められない.カリ長石はアンチパーサイト状に産する.ホルンブレンドは,しばしば斜長石や石英をポイキリティックに包有する.副成分鉱物としてイルメナイトとチタン石,そしてアパタイトを含む.角閃岩IとIIの関係は不明だが,細粒で石灰珪質岩の薄層を伴う角閃岩Iは表層岩で,粗粒でしばしばポイキリティック組織を示す角閃岩IIは貫入岩起源と考えられる.
角閃岩I 15試料と角閃岩II 15試料を蛍光X線分析装置で全岩化学組成を分析した.角閃岩Iはソレアイト質玄武岩,角閃岩IIはソレアイト質玄武岩〜玄武岩質安山岩の組成を示す.測定した試料から集積作用の効果を除き比較的未分化な組成を選定し,HFS元素による各種地球化学的判別図を使って原岩の化学的特徴を検討した.その結果,角閃岩I, IIは主に中央海嶺玄武岩(MORB)組成で,一部火山弧玄武岩組成に類似した特徴を示す.
以上の組成的特徴や構成岩石を考慮すると,角閃岩I, IIはMORBを形成する環境で形成された玄武岩質マグマに由来し,白亜紀以前のオフィオライトを構成していた可能性が高い.
【引用文献】
Adachi, T., Osanai, Y., Nakano, N., and Owada, M. (2012) LA-ICP-MS U-Pb zircon and FE-EPMA U-Th-Pb monazite dating of pelitic granulites from the Mt. Ukidake area, Sefuri Mountains, northern Kyusyu. Journal of the Geological Society of Japan, 118, 39-52.
唐木田芳文・山本博達・宮地貞憲・大島恒彦・井上保 (1969) 九州の点在変成岩類の特徴と構造地質学的位置.地質学論集,4,3-21.
小山内康人・濱本拓志・大和田正明・亀井淳志・加々美寛雄・吉原靖 (1997) 肥後変成帯の帰属はなにか?―東アジアの広域変成岩との関連性について―.九州テクトニクスワーキンググループ研究連絡誌, 11, 11-18.