一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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連携医療・地域医療

[P一般-042] 認知症患者の義歯清掃指導経験

○稲富 みぎわ1、早川 里奈2、岩田 美由紀3、赤木 郁生2、庄島 慶一3、秋山 悠一1、氷室 秀高2 (1. 医療法人社団秀和会 水巻歯科診療所、2. 医療法人社団秀和会 小倉南歯科医院、3. 医療法人社団秀和会 小倉北歯科医院)

(緒言)

今回私たちは認知症患者の義歯の保清について介護者との協働を経験し.介護負担を考慮した指導を行い良好な結果を得たので報告する. なお今回の発表はご家族・施設に説明・同意を得て,当法人倫理委員会の承認を得て作成した(承認番号2001).

(症例)

 某特別養護老人ホーム入所中85才女性.アルツハイマー型認知症(軽度).ADLは自立.上下総義歯を装着していた.床下粘膜の発赤を認め歯科医師から義歯清掃を指導するよう指示を受けた.義歯を洗浄しようとすると手を叩き暴言を吐くなどの不適応行動があった.

(経過)

義歯の清掃は可能な時に,昼食後に機械的清掃が行われているのみであった.また夜間洗浄のため義歯を外しておくと義歯を求め徘徊がみられるとのことで化学的洗浄は省略されていた.そこで介護負担の軽減の観点から夜間装着することを許可し,介護力が豊富な日中に十分なケアを行うことを目標に指導した.

まず昼食後,おやつの時間までの化学的洗浄が可能となるようにアプローチした.歯科衛生士が週2回の訪問し,昼食後,機械的清掃を行い2時間の化学的清掃を行った.約1か月で不適応行動が消失した.そこで,このケアを施設職員へ毎日行うよう指導した.また義歯を口腔内に戻す際は,入れ歯がきれいになったねなどの賞賛を行うよう指導した.歯科衛生士による週2回の指導は継続し介護職員へも褒める指導を心がけた.

2週間足らずで歯科衛生士が関与しなくてもケアが可能なった.粘膜面のカンジダは(⧺)から(+)となったが床下面の発赤が持続するため洗浄不足と考えられた.そこで,まず夜間就寝時の水中保管を試みたが,徘徊が見られたため中止した.次におやつの後に昼寝をする習慣があることから,おやつ後にもケアを開始.不適応行動は認められなかった.義歯を渡すと自立でスムーズに装着できた.この程度なら介護負担にならないとのことでおやつ後のケア洗浄追加を継続.カンジダは(-)となり床下粘膜の異常は消失した.

(考察)

義歯の不衛生は容易に口腔内カンジダを増殖させ認知症患者の食べる機能に影響を及ぼす.一方で認知症患者では口腔衛生に対する協力が得にくい.記銘力低下により指導の効果が短時間しか持続せず,管理に難渋することも多い.生活をサポートしている介護職に受け入れ可能な方法の中で最善の方法をとることが指導の定着に必要であると思われた.