一般社団法人日本老年歯科医学会 第35回学術大会

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

2024年6月28日(金) 14:40 〜 16:10 ポスター会場 (大ホールC)

[認定P-19] 広範囲の脳梗塞により胃瘻造設となった患者に対し,多職種連携により3食経口摂取可能となった症例

○大塚 あつ子1、谷口 裕重1 (1. 朝日大学歯学部口腔病態医療学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野)

【緒言・目的】
  脳幹部の脳梗塞では,重度の嚥下障害や呼吸不全を合併し,治療が難渋することがあるとの報告がある。今回,胃瘻造設後(37病日目)に摂食嚥下リハビリテーション目的で当科へ紹介となり,重度摂食機能障害と診断された患者が,包括的アプローチをすることで,3食経口摂取が可能となったため報告する。
【症例および経過】
  68歳女性。小脳・延髄・視床梗塞で入院となった(NIHSS14点)。初診時SGA高リスク,Alb3.5 g/dL,BMI18.13㎏/m2,CC24㎝,FIM21点,聴診にて慢性的な唾液誤嚥を疑う湿性音が聴取された。41病日目のVEでは左側声帯麻痺があり,小脳運動失調のため体幹失調と,延髄梗塞による左側上部食道入口部通過障害の影響で唾液誤嚥と中間とろみ水での誤嚥を認め,重度摂食機能障害と診断された。体幹保持可能となり49病日目にVFを実施したところ,食塊は右側のみ通過し,左側食道入口部通過障害が認められた。中間とろみ水では誤嚥はなく,ゼリーは喉頭侵入を認めたが,体幹右側傾斜,頸部左側回旋をしたところ,喉頭侵入は回避できたため,直接訓練可能と判断し看護師とSTで訓練を行った。76病日目のVEで,粥ゼリー・ミキサーで食事開始となり,食道入口部開大不全が残存してみられたため,バルーン法を多職種で情報共有し開始した。105病日目のVFでは,軟飯・きざみとろみ・中間とろみ水の摂取が可能となり(Alb3.9 g/dL,FIM81点,mRS3)自宅退院となった。1か月後に外来にてフォローし,在宅での食事や訓練指導を実施した。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例では,体幹失調と上部食道入口部開大不全があり,経口摂取困難であったが,胃瘻による栄養管理ができていたため,リハビリテーションを強化することができた。今回,体幹調整で代償的アプローチが可能であることを看護師・STに共有したこと,バルーン法を摂食嚥下障害看護認定看護師・STも実施したことで,より多くの訓練回数を確保でき,結果的に3食経口摂取が可能となったと推察する。退院後も定期的に食事および栄養指導を実施し,最終的には胃瘻を抜去することができた症例である。多職種で退院後にも継続した介入ができたことが摂食機能改善に繋がったと考える。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)