第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O11] 家族看護1

2022年6月12日(日) 13:00 〜 14:10 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:中橋 厚子(健和会大手町病院)

13:00 〜 13:12

[O11-01] 急性重症患者の終末期治療に対して救急・集中治療領域の看護師が行う代理意思決定支援の実践と影響要因

○小﨑 麗奈1、中村 美鈴1 (1. 東京慈恵会医科大学大学院 医学研究科看護学専攻 先進治療看護学分野 クリティカルケア看護学領域)

キーワード:代理意思決定支援、終末期治療、急性重症患者

【目的】終末期治療に対する代理意思決定は,急性重症患者の家族に重責で(清水他,2018),その支援は看護師の重要な役割である.終末期ケアに関する組織的な体制が十分に整備されていない課題(立野他,2014)や看護師の認識は,代理意思決定支援の実践に影響する.そこで本研究では,急性重症患者の終末期治療に対して救急・集中治療領域の看護師が行う家族への代理意思決定支援の実践と実践に影響する要因を明らかにする.
【方法】 研究デザイン:仮説検証型研究デザイン.研究対象者:全国3次救急医療機関290施設の救急・集中治療領域の部署で,過去1年以内に急性重症患者の終末期治療に対する代理意思決定支援を実践した看護師. データ収集項目:先行研究より抽出した組織的な要因・看護師の特性,下地他(2017)の救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度(以下実践とする)による実践. データ収集方法:2021年6月14日~11月30日の期間に書類を郵送し,対象者の無記名質問票への回答・返送により収集した. 分析方法:有意水準を5%とし,統計ソフトSPSS Ver.26を用いてMann–WhitneyのU検定や二項ロジスティック回帰分析を行った. 倫理的配慮:所属大学倫理委員会の承認を得た上で実施した.
【結果】69施設中689名の返送があり(回収率30.2%)612名(有効回答率88.8%)を分析対象とした.対象者の平均年齢は37.9±8.0歳,平均臨床経験は15.3±8.0年であった.救急・集中治療領域の終末期治療における代理意思決定支援実践尺度の平均総得点は49.4±9.6点,得点率では,偏りのない姿勢と説明の確認に関する実践度が79.3%と高く,代理意思決定の準備に関する実践度が58.1%で低かった.組織的な要因のうち,代理意思決定支援に関する評価や振り返りのカンファレンスの有無,手順書やマニュアルの有無,院内教育を受ける機会の頻度,上司や同僚からの知識の助言や精神的なサポートの頻度が実践に有意な差を認めた(p<0.001).また,上司や同僚からの知識の助言や精神的なサポートの頻度が実践に最も影響していた(オッズ比3.26,p<0.001).看護師の特性のうち学習経験の程度(p<0.001)などが実践と有意な差を認めた.
【考察】対象者は,俯瞰的な視点をもちながら(反保,酒井,2019),家族の代理意思決定する場面に同席し意図的に家族とかかわっていたために偏りのない姿勢と説明の確認に関する実践度が高かった(町田,中村,2016).一方,人的資源の不足をサポートする体制がないため,代理意思決定の準備に関する実践度が低いと考える(上澤,中村,2013).また,上司や同僚からの知識の助言や精神的なサポートの頻度が実践に最も影響した理由には, 上司からの承認や,関係性にもとづく発達が柔軟に対応できる実践力につながるためと考えられた(佐野,2014; 武内他,2009).救急・集中治療領域の終末期治療に対する代理意思決定支援の質の向上のために,人的資源の不足や代理意思決定支援に関する情報共有の充実にむけた課題を見出した.課題解決には,病棟間応援体制の構築や資格保有者による役割の発揮が示唆された.
【結論】急性重症患者の終末期治療に対して救急・集中治療領域の看護師が行う代理意思決定支援の実践は,偏りのない姿勢と説明の確認に関する実践度が高く,組織的な要因が影響し仮説は立証された.実践の質の向上には,病棟間応援体制の構築や資格保有者の役割発揮が示唆された.