14:20 〜 14:32
[O5-01] COVID-19患者への安全な腹臥位療法を目指して~抜管に成功した2症例を分析して~
キーワード:COVID-19、腹臥位療法、シミュレーション
【目的】A部署でCOVID-19患者へ腹臥位療法を実施前に、シミュレーションを行った上で実践した結果、2症例が回復し退院された。今回の症例を通して、COVID-19患者に対して安全な腹臥位療法を行えた要因を明らかにする。
【方法】研究デザイン:症例報告 倫理的配慮:本研究は対象施設倫理委員会の承認を得た上で実施した。研究対象者へは本研究の主旨について郵送による文書で説明を行い、十分な理解と承認を受けた上で同意を得た。
研究対象者: COVID-19と診断され、気管挿管し人工呼吸器管理を受けている患者。A氏:70歳代、男性、ADL自立、発症6日目に入院、8日目に気管挿管、11日目に腹臥位療法を開始。B氏:70歳代、男性、ADL自立、発症5日目に入院、11日目に気管挿管、14日目に腹臥位療法を開始。
看護の実際:腹臥位療法マニュアルを作成し、それをもとに腹臥位療法実施前に、医師・理学療法士・作業療法士・看護師の多職種メンバーでシミュレーションを実施。メンバー一人が患者役となり、体位変換時に必要となるスタッフ人数や役割、立ち位置、輸液・動脈ラインの位置、手順などを確認した。これを、シミュレーションを経験していないスタッフが加わるごとに繰り返し実施した。1日1回、約6時間腹臥位療法を実施し、実施中はバッキングの度に訪室し、吸引、皮膚トラブルの有無や適切な身体抑制が実施されているかを観察した。また、ガラス越しに全体を見渡し、状態を観察した。
【結果】A部署スタッフの腹臥位療法経験者は3名のみで、未経験者の不安もあったため、2症例ともに腹臥位療法開始前に医師1~2名、理学療法士・作業療法士1~2名、看護師1~2名がシミュレーションに参加した。その結果、未経験者の不安は解消され、実施者による十分な観察と適切な身体抑制使用により、挿入物の予定外抜去などのトラブルはなかった。2症例のうち、A氏はRASS=0~-1と浅鎮静、B氏はRASS=-3~-5と深鎮静で鎮静深度に差があった。腹臥位療法実施前後でSpO2値は横ばいまたは改善していた。また、腹臥位療法を継続実施することで呼吸器のウィーニングを行い、抜管できた。その後、罹患前のADLまで回復し退院された。
【考察】アンドレス・ロホらは「技術的及び非技術的なスキルの救急及び集中治療チームのトレーニングは基礎的」であり、「危機的状況に一歩先んじるために、トレーニングプログラムを開始する前に専門家のトレーニングニーズを考慮する必要がある」と述べている。腹臥位療法の経験値が浅く不安を抱いているスタッフのニーズは、安全な腹臥位療法を実施することであった。そのため、腹臥位療法に対する教育や、必要となるスタッフ人数・役割、立ち位置、輸液・動脈ラインの位置、手順について多職種で精度の高いシミュレーションを行い、実施前に不安を解消ができたことは、不安を抱くスタッフのニーズを満たし、安全な腹臥位療法に繋がったと考える。
これら2症例において鎮静深度が異なっていたが、どちらの症例も挿入物の予定外抜去等のトラブルがなかったことから、鎮静深度に関わらず安全に実施できる可能性が示唆された。しかし、現段階では症例が少なく、今後の検討課題である。
【結論】多職種で事前にシミュレーションを行い、関わるスタッフの不安を解消し、役割の明確化を行うこと、挿入物の予定外抜去や褥瘡などの合併症を併発することがないように観察を行うことが腹臥位療法を安全に実施できた要因と言える。また、鎮静深度は必ずしも影響しないことが示唆された。
【方法】研究デザイン:症例報告 倫理的配慮:本研究は対象施設倫理委員会の承認を得た上で実施した。研究対象者へは本研究の主旨について郵送による文書で説明を行い、十分な理解と承認を受けた上で同意を得た。
研究対象者: COVID-19と診断され、気管挿管し人工呼吸器管理を受けている患者。A氏:70歳代、男性、ADL自立、発症6日目に入院、8日目に気管挿管、11日目に腹臥位療法を開始。B氏:70歳代、男性、ADL自立、発症5日目に入院、11日目に気管挿管、14日目に腹臥位療法を開始。
看護の実際:腹臥位療法マニュアルを作成し、それをもとに腹臥位療法実施前に、医師・理学療法士・作業療法士・看護師の多職種メンバーでシミュレーションを実施。メンバー一人が患者役となり、体位変換時に必要となるスタッフ人数や役割、立ち位置、輸液・動脈ラインの位置、手順などを確認した。これを、シミュレーションを経験していないスタッフが加わるごとに繰り返し実施した。1日1回、約6時間腹臥位療法を実施し、実施中はバッキングの度に訪室し、吸引、皮膚トラブルの有無や適切な身体抑制が実施されているかを観察した。また、ガラス越しに全体を見渡し、状態を観察した。
【結果】A部署スタッフの腹臥位療法経験者は3名のみで、未経験者の不安もあったため、2症例ともに腹臥位療法開始前に医師1~2名、理学療法士・作業療法士1~2名、看護師1~2名がシミュレーションに参加した。その結果、未経験者の不安は解消され、実施者による十分な観察と適切な身体抑制使用により、挿入物の予定外抜去などのトラブルはなかった。2症例のうち、A氏はRASS=0~-1と浅鎮静、B氏はRASS=-3~-5と深鎮静で鎮静深度に差があった。腹臥位療法実施前後でSpO2値は横ばいまたは改善していた。また、腹臥位療法を継続実施することで呼吸器のウィーニングを行い、抜管できた。その後、罹患前のADLまで回復し退院された。
【考察】アンドレス・ロホらは「技術的及び非技術的なスキルの救急及び集中治療チームのトレーニングは基礎的」であり、「危機的状況に一歩先んじるために、トレーニングプログラムを開始する前に専門家のトレーニングニーズを考慮する必要がある」と述べている。腹臥位療法の経験値が浅く不安を抱いているスタッフのニーズは、安全な腹臥位療法を実施することであった。そのため、腹臥位療法に対する教育や、必要となるスタッフ人数・役割、立ち位置、輸液・動脈ラインの位置、手順について多職種で精度の高いシミュレーションを行い、実施前に不安を解消ができたことは、不安を抱くスタッフのニーズを満たし、安全な腹臥位療法に繋がったと考える。
これら2症例において鎮静深度が異なっていたが、どちらの症例も挿入物の予定外抜去等のトラブルがなかったことから、鎮静深度に関わらず安全に実施できる可能性が示唆された。しかし、現段階では症例が少なく、今後の検討課題である。
【結論】多職種で事前にシミュレーションを行い、関わるスタッフの不安を解消し、役割の明確化を行うこと、挿入物の予定外抜去や褥瘡などの合併症を併発することがないように観察を行うことが腹臥位療法を安全に実施できた要因と言える。また、鎮静深度は必ずしも影響しないことが示唆された。