第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

一般演題

[O8] 看護教育

2022年6月12日(日) 09:00 〜 10:10 第4会場 (国際会議場 21会議室)

座長:園田 拓也(一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院)

09:36 〜 09:48

[O8-04] 臨床判断モデルを活用したOJT研修の学習効果と課題

○藤井 絵美1,2、岩元 美紀1,3、佐藤 正和1,2、相良 洋1,2、西村 祐枝1,4 (1. 岡山市立総合医療センター 岡山市立市民病院 、2. 集中治療部、3. 救急外来、4. 看護部)

キーワード:看護教育、臨床判断能力、心理的安全性、OJT、タナーの臨床判断モデル

【目的】
クリティカルケアにおける臨床判断能力の向上をはかるための取り組みとして、双方向に学び合うOJT研修「クリティカルケア・バディ・ラーニング」(以下CBL)を構築した。今回、CBL研修における学習効果と課題について明らかにし、臨床判断能力向上のための教育方法について示唆を得たので報告する。
【方法】
CBL研修は、心理的安全性と『タナ―の臨床判断モデル』を参考に授業設計した。「導入」は管理者と受講者が心理的安全性や臨床推論などのe-learningの受講を行った。「展開」は一般病棟の看護師と救急・集中治療領域がバディとなって看護実践を行い、「まとめ」は学習ツールを用いて臨床判断した場面を振り返り、バディで症例シートを記述することとした。調査対象はCBL受講者25名と指導者12名とし、研修終了直後にCBLからの学びに関する自由回答形式の質問調査を実施した。調査は無記名で行い、回収をもって同意とみなし、A病院の倫理審査の承認を得た。自由記載で得られたデータはクリティカルケア領域のスペシャリストで5名で内容分析した。
【結果】
調査回収率はCBL受講者88.0%(22名)、指導者100%(12名)であった。受講生の平均経験年数は9.2年であり、ラダーⅠが6名、ラダーⅡが14名、ラダーⅢが2名で、そのうちクリティカル領域の経験者は3名であった。指導者の平均経験年数は14.4年であり、ラダーⅡが8名、ラダーⅢが4名であった。内容分析により、45のコード、14のサブカテゴリ―、5つのカテゴリ―が抽出された。カテゴリーは、「初期把握」「対処パターンの獲得」「情報の意味づけ」「看護介入」「看護実践能力の発展」であった。45コードのうち、患者主体のコードは0件であった。
【考察】
臨床判断プロセスは『気づき』『解釈する』『反応する』『省察する』から成り立っている。臨床判断の中で、看護師が何に気づき、どのように所見を解釈、対応したのかを振り返るには、状況・背景・関係性が影響する。今回、『タナ―の臨床判断モデル』に沿った症例シートを活用することで、「初期把握」「対処パターンの獲得」を認めた。このことから、OJTを強化にしたことで『気づく』能力の向上につながったと考える。また、心理的安全性の教育と共に学び合うバディ制度によって状況・背景・関係性に良い影響が働いたと推察できた。また、CBL研修で作成した学習ツールを使用したことは、双方向の思考プロセスの整理につながり、臨床判断プロセスを踏むことができたと考える。しかし、『省察』の大部分が、看護師自身の臨床判断に関する振り返りであったことから、CBL研修の課題として、患者の介入につながる意図的なリフレクションを促進する発問を取り入れることが必要である。
【結論】
心理的安全性を確保し、臨床判断能力のプロセスをふまえた一定の学習ツールを活用することはOJT研修の効果を高めることにつながった。今後、さらに学習効果を高めるために意図的なリフレクションが課題である。