第18回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY13] 集中治療領域における医療安全

2022年6月12日(日) 13:50 〜 15:10 第3会場 (国際会議場 国際会議室)

座長:中村 美鈴(東京慈恵会医科大学医学部看護学科)
   榑松 久美子(北里大学病院)
演者:中村 香織(杏林大学医学部付属病院)
   春名 寛香(北播磨総合医療センター 看護キャリア開発支援室)
   白鳥 秀明(弁護士法人東京パブリック法律事務所)

13:50 〜 14:20

[SY13-01] 集中治療領域における医療安全 Safety-Ⅰのアプローチ

○中村 香織1 (1. 杏林大学医学部付属病院)

キーワード:医療安全

集中治療領域では生命の危機状態にある患者に対して、多数の医療機器や薬剤などを使用し高度な医療・看護を提供している。医療者は、刻一刻と変化する患者の状況をアセスメントしながら健康回復へ向けた介入を絶え間なく行っている。このような患者の治療課程において、医療・看護上の間違い(ヒューマンエラー)が発生すると患者の生命が脅かされる。ヒューマンエラーには、「すべきことが事前定義されている場合のエラー」(Safety-Ⅰ型のエラー)と、すべきことの詳細は事前に定義できない場合のエラー」(Safety-Ⅱ型のエラー)がある。ヒューマンエラーを防止・撲滅していくため、マニュアルや手順を作成しその通りに行うことや、エラー発生時に要因分析を行い改善に向けた取り組みを行う安全活動をSafety-Ⅰアプローチという。一方、医療現場では、対象となる患者や家族の状況は常に変化しており、対象にかかわる医療者の職種も多くどこでどのような変化が起こるか予測がつかない場合もある。また、患者の状況によっては時として手順通りに行うことでエラーが発生する可能性もある。そのため、医療者は必然と臨機応変な行動をとりエラーを回避している。この臨機応変さをレジリエンスといい、この活動をSafey-Ⅱアプローチという。Safety-ⅠとSafety-Ⅱともに臨床では重要であるため、ここではまずSafety-Ⅰについて触れていきたい。 Safety-Ⅰアプローチとは、ヒューマンエラーの防止・撲滅活動である。例えば医療機器の使用や薬剤作成・投与、患者の引き継ぎなどは誤りが起こらないよう、「正しいやり方」を手順に定めて、スタッフ全員がそれに従うことが求められる。そのためには以下の1~3の検討を順番に行うことが必要である。 1. 人を排除する。現在の業務プロセスを見つめ直し、無くせる部分はないのかを問いかける。 2. 作業しやすい現場をつくる。医療機器が使いにくい、モニターが見にくい、、廊下が通りにくい、など。人間の視力・聴力・記憶力などの作業能力には限界がある。そのため、スタッフ目線だけでなく患者目線からも「~しやすい」となるように改善する。 3. マニュアルを定め周知徹底する。現実実行可能なマニュアルを作成し周知徹底する。 今回、当ICUで薬剤投与に関する重大なアクシデントを経験した。患者への影響レベルが大きいケースであり、Safety-Ⅰのアプローチにより対策を講じた。その結果、それ以降同様のアクシデントは予防できている。しかし対策の徹底の難しさや安全文化を醸成するための課題が明らかとなったため報告する。