第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD1] パネルディスカッション1

『救急看護の今とこれから』

座長 藤原 正恵(大阪青山大学 健康科学部看護学科 教授)
   山﨑 早苗(東海大学医学部付属病院 看護部 看護師長)

[PD1-02] 都市におけるドクターカー出動の問題点と今後の展望

○井上 佳世1 (1. 大阪市立大学医学部附属病院 救命救急センター )

キーワード:プレホスピタル、安全性、メディカルコントロール

当院は、2018年からドクターカー運用を開始している。大阪市医療圏は、人口密度が高い都市型医療圏であり、その中に多数の医療施設が密集して存在するため、傷病者が発生した場合、救急隊は比較的短時間で医療施設への搬送が可能である。その中でドクターカー出動のターゲットは、呼吸・循環動態に問題がある症例、急性期脳卒中、院外心停止、墜落や頸部・体幹部刺創などの緊急手術が必要となる場合、救出までに時間のかかる外傷症例である。これらの症例に対し、できるだけ早期に現場に出動して評価・治療にあたり、一人でも多くの命を救命することを主目的としている。そして、もう一つの重要な目的が現場におけるメディカルコントロールであり、重症であっても慢性疾患や積極的な治療を望まない患者であれば、十分な説明の上でかかりつけや二次救急施設を選択する、といった現場での判断が求められている。
 2019年度の出動件数は236件、その内容は呼吸・循環不全が131件、急性期脳卒中が41件、院外心停止が34件、緊急手術が必要となる外傷が10件、救出までに時間を要する外傷が4件であった。当院のドクターカー運用で成果と考えられることは、緊急処置が必要となる傷病者に対して迅速な処置を行い病院までの搬送時間を有効に使えるということやメディカルコントロールにおいて診察した上で傷病者に合った搬送先を決定できることである。これは、都市部の高齢化が進んでおり救急搬送件数が増加している中で、今後救急領域と地域が連携していくために必要なことであると考える。その一方で問題点として挙がっていることは、狭い路地や狭い家屋の中で救命処置ができる状況ではないこと、室内の汚染で害虫が存在し入室が危険であること、傷病者に結核などの感染が認められることである。また、当院でのドクターカー出動における看護師のストレス調査では、交通外傷や墜落の現場を目の当たりにするストレスや感染や危険のリスクに対してのストレスが挙げられている。さらに今日では新型コロナウイルスの感染のリスクも考えなければならず、プレホスピタルにおける危機管理が必要となっている。
 今後は地域の特性を理解した上でこれらの問題に対応しながら、高齢化社会に向けてプレホスピタルで求められる看護師の役割を検討していく必要があると考える。