第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

シンポジウム

13-4:難病

シンポジウム52:在宅医療の場で遭遇する「遺伝の問題」に気づき、逃げないために

2024年7月21日(日) 14:20 〜 15:50 第10会場 (会議室105)

座長:安中 正和(安中外科・脳神経外科医院)、中山 優季(東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター)

14:50 〜 15:20

[S52-2] 遺伝性疾患に対する診断と治療の現状 2024

*竹内 千仙1 (1. 東京慈恵会医科大学附属病院遺伝診療部)

1996年 東京女子医科大学医学部卒業
1996年 東京女子医科大学神経内科入局
2003年 東京女子医科大学神経内科助教
2010年 東京都立北療育医療センター内科医長
2022年 東京慈恵会医科大学附属病院遺伝診療部 講師
遺伝性疾患とは、ゲノム(遺伝情報の全ての意味)の変化がその発症に起因する疾患の総称であり、希少疾患の約8割が遺伝性疾患であることが知られている。従来、遺伝医療は少数の稀な遺伝性疾患を対象とする小さな専門領域とされてきたが、近年の遺伝医学・ゲノム医学の目覚ましい進歩により、common diseaseとrare diseaseの双方を対象とし、多くの疾患の診断や治療において不可欠な領域であることが認識されるようになってきた。その対象はがんや周産期領域のみならず、難病領域においても遺伝医療が実装され、臨床現場に拡充されてきている。指定難病の遺伝学的検査は、2006(H18)年に進行性筋ジストロフィー症のDNA診断として初めて保険収載され、2022(R4)年3月現在、145疾患が対象となった。実に指定難病に含まれる遺伝性疾患のうちの約8割で遺伝学的検査が保険収載されたことになり、今後もさらに増える見込みである。また、治療の進歩に関しては、核酸医薬、遺伝子治療などが次々と実用化され、「発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない」難病の概念が少しずつ変わろうとしている。さらには脊髄性筋萎縮症、ライソゾーム病などが拡大新生児スクリーニングの対象疾患となり、出生直後での診断が可能となってきたとともに、未発症の患者への治療が現実のものとなってきた。このような遺伝医療の進歩により、遺伝性疾患における家系内の正確なリスク評価と発症前診断の重要性が増し、十分な患者・家族支援や、長期フォローが求められ、さらには家族支援のあり方も変容が求められている。本講演では、遺伝性疾患に対する診断と治療の現状を確認し、すべての医療従事者が共通認識を持つべき課題について論じたい。