12:30 PM - 2:00 PM
[R7-P-06] High-Ti biotite in the alkali volcanic rock from the Akiyoshi Belt and its significance
Keywords:Akiyoshi Belt, Greenstone, Zircon U-Pb age, High titanium biotite
秋吉帯は西南日本内帯に分布するペルム紀付加体を主とする地質体であり,石灰岩台地を構成するような巨大な石灰岩体を特徴的に含む.この石灰岩は海山/海洋島起原の緑色岩類を基盤とする石炭紀からペルム紀にかけての礁石灰岩であり,緑色岩類と接する最下部層からは共通して石炭紀のVisean期まで遡ることが確認されている.したがって,これら岩石はパンサラッサ海の大洋域に起原を持つ海山/海洋島とその頂部に堆積した石灰岩からなる石炭紀からペルム紀にかけての海洋性の岩石であると解釈されている.
広島県東部の矢川地域に分布する白亜系関門層群相当層の稲倉層には,数十m規模の秋吉帯由来の石灰岩-緑色岩ブロックが含まれている.木村ほか(2012)はその石灰岩基盤の緑色岩類からジルコンを含むアルカリ火山岩を発見し,SHRIMP年代として350 ± 10 Maを報告した.またこのアルカリ火山岩を含む矢川地域の緑色岩類はホットスポット起原の全岩化学組成を示した.今回,LA-ICP-MSを用いてジルコンU-Pb年代およびジルコン微量元素組成を分析した結果,335.8 ± 1.6 Maの206Pb/238U年代が得られ,ジルコン微量元素組成はGrimes et al. (2007)の判別図ではcontinental zircon fieldにプロットされ,Grimes et al. (2015)の判別図においてはホットスポットタイプの組成を示す.continental zircon fieldにプロットされたのは分化した全岩組成に由来するものと考えられる.
含ジルコンアルカリ火山岩は,斑晶として斜長石と黒雲母を含む.黒雲母は粒子全体がほぼ黒雲母だけからなるものもあるが,多くは粒子中に黒雲母に加え石英と鉄酸化物を含む岩片として産し,これらが層状に配列し面構造を形成している.この黒雲母はTiを高濃度に含んでおり(TiO2 = 7.3–8.9 wt.%; Ti = 0.83–1.03 (O=22)),SEM観察では黒雲母内部で明るさが異なり,明るい領域の方が暗い領域よりもTi濃度が高い.また黒雲母中には極細粒なTi濃集鉱物(TiO2 = ~ 80%)が存在しており,離溶している.更に黒雲母の中にはキンクが見られるものがあり,キンク部分にも極細粒なTi濃集鉱物が集中する.SEM-EBSD分析では,黒雲母岩片中の石英の結晶方位が揃っているのが観察される.更に,ジルコン結晶中にもこれら黒雲母に類似の層状珪酸塩鉱物がインクルージョンとして含まれる.
このような黒雲母岩片の構成鉱物や内部構造から,この岩片は泥質結晶片岩由来の捕獲結晶の可能性が示唆される.このような泥質片岩は例えば沈み込み帯で形成され得る.しかし秋吉帯の礁石灰岩-海山起原緑色岩はこれまで,周囲に陸源砕屑物を供給するものがないパンサラッサ海大洋域で形成されたものと考えられており,秋吉帯からの火成弧起源の緑色岩の報告例もない.本講演ではこの黒雲母岩片の意義について議論する.
引用文献: 木村ほか(2012)日本地質学会第119年学術大会講演要旨,R2-O-5.Grimes et al. (2007) Geology, 35, 643–646. Grimes et al. (2015) Contrib. Mineral. Petrol., 170, 46.
広島県東部の矢川地域に分布する白亜系関門層群相当層の稲倉層には,数十m規模の秋吉帯由来の石灰岩-緑色岩ブロックが含まれている.木村ほか(2012)はその石灰岩基盤の緑色岩類からジルコンを含むアルカリ火山岩を発見し,SHRIMP年代として350 ± 10 Maを報告した.またこのアルカリ火山岩を含む矢川地域の緑色岩類はホットスポット起原の全岩化学組成を示した.今回,LA-ICP-MSを用いてジルコンU-Pb年代およびジルコン微量元素組成を分析した結果,335.8 ± 1.6 Maの206Pb/238U年代が得られ,ジルコン微量元素組成はGrimes et al. (2007)の判別図ではcontinental zircon fieldにプロットされ,Grimes et al. (2015)の判別図においてはホットスポットタイプの組成を示す.continental zircon fieldにプロットされたのは分化した全岩組成に由来するものと考えられる.
含ジルコンアルカリ火山岩は,斑晶として斜長石と黒雲母を含む.黒雲母は粒子全体がほぼ黒雲母だけからなるものもあるが,多くは粒子中に黒雲母に加え石英と鉄酸化物を含む岩片として産し,これらが層状に配列し面構造を形成している.この黒雲母はTiを高濃度に含んでおり(TiO2 = 7.3–8.9 wt.%; Ti = 0.83–1.03 (O=22)),SEM観察では黒雲母内部で明るさが異なり,明るい領域の方が暗い領域よりもTi濃度が高い.また黒雲母中には極細粒なTi濃集鉱物(TiO2 = ~ 80%)が存在しており,離溶している.更に黒雲母の中にはキンクが見られるものがあり,キンク部分にも極細粒なTi濃集鉱物が集中する.SEM-EBSD分析では,黒雲母岩片中の石英の結晶方位が揃っているのが観察される.更に,ジルコン結晶中にもこれら黒雲母に類似の層状珪酸塩鉱物がインクルージョンとして含まれる.
このような黒雲母岩片の構成鉱物や内部構造から,この岩片は泥質結晶片岩由来の捕獲結晶の可能性が示唆される.このような泥質片岩は例えば沈み込み帯で形成され得る.しかし秋吉帯の礁石灰岩-海山起原緑色岩はこれまで,周囲に陸源砕屑物を供給するものがないパンサラッサ海大洋域で形成されたものと考えられており,秋吉帯からの火成弧起源の緑色岩の報告例もない.本講演ではこの黒雲母岩片の意義について議論する.
引用文献: 木村ほか(2012)日本地質学会第119年学術大会講演要旨,R2-O-5.Grimes et al. (2007) Geology, 35, 643–646. Grimes et al. (2015) Contrib. Mineral. Petrol., 170, 46.