2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Poster presentation

R7: Petrology, Mineralogy and Economic geology (Joint Session with Society of Resource Geology)

Fri. Sep 13, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R7-P-07] Estimation of the origin of SDW in the Horoman peridotite complex by analysis of micro-inclusions in the olivine

「発表賞エントリー」

*Masaharu Aketa1, Akira Miyake1, Norikatsu Akizawa2, Megumi Matsumoto3, Yohei Igami1, Itaru Mitsukawa1 (1. Kyoto University, 2. University of Tokyo, 3. Tohoku University)

Keywords:Horoman peridotites, olivine, inclusion, Electron Microscope, XnCT

幌満カンラン岩体はマントル由来の岩石で構成されており、大部分を占めるMain harzburgite-lherzolite suite (MHL)とそれに伴うSpinel-rich dunite-wehrlite suite (SDW)が特徴的である。高温メルトがMHLに貫入してMHLの岩相を改変しながら、SDWは形成したと考えられている[1]。MHLはMORBと同様の同位体組成を示し[2]、MHLとSDWは互いに調和的な変形をしているため両者が大規模な変位を被っていないとするとSDWも中央海嶺起源であると考えられてきた[2,3]。一方、Arai et al. [4] は黒色を呈するダナイト中のカンラン石(黒色カンラン石)中の磁鉄鉱と透輝石で構成される包有物がカンラン石中のOH面欠陥[5]を元に析出したとし、初生的なカンラン石中には77-430 ppmの水が存在したと推定した。これは、クラトン下のカンラン石中の水の量(最大300 ppm[6])と比較して多いため、SDWが沈み込み帯起源であると提案した。Aketa et al. [7] も SDWに産出する黒色カンラン石の包有物を研究し、磁鉄鉱・透輝石に加えて含水鉱物を新たに発見し、析出反応に水が関与していた確証を得た。しかし、初生的なカンラン石中の水の量を推定すると、11-27 ppmとなった。この値は [4] が報告した値よりもはるかに低く、SDWの起源を沈み込み帯とする議論は再検討が必要である。また、 [4,7] の研究試料はSDWの中央部に産出する黒色カンラン石のみであり、SDW全体での包有物やそれに伴う含水量の詳細な分布は未解明である。そこで本研究ではSDW内から新たにサンプリングを行い [7]と同様にカンラン石中の包有物の詳細観察を行った。分析には、X線CT(SPring-8、BL20B2,BL47XU)、走査型電子顕微鏡(JEOL社JSM-7001F)、透過型電子顕微鏡(JEOL社JEM- 2100F)を用いた。試料にはSDW中央部から採取した四試料(C1, C2, D, D2)と外縁部から採取した三試料(D1, D3, D4)を用いた。どの試料のカンラン石中にも包有物が多く存在し黒色カンラン石はSDW中央部のみならず外縁部にも広く存在していることが判明した。包有物をその鉱物組み合わせによりType 1, 2, 3に分類した。Type 1は磁鉄鉱・透輝石・緑泥石または角閃石・流体からなる包有物である(0.5-20 µmφ)。Type 1はD以外の全ての試料から発見された。Type 2はクロム鉄鉱・モンチセリ石・NaAlSiO4(構造未同定)からなる包有物(10-200 µmφ)で、その周辺には多数の微小磁鉄鉱包有物(1-2 µmφ)が分布する特徴を持つ。Type 2は試料C2, D, D3から発見された。Type 1,2は基本的に[7]と同様の結晶方位関係が認められる。Type 3は磁鉄鉱の単相包有物(0.02-1 µmφ)である。Type 3は全ての試料から発見された。Type 1はカンラン石の粒界には存在せず基本的に低指数の結晶方位や伸長方位の関係を持っているため、SDW全体として水を含むカンラン石が初生的に存在したことを示唆している。さらに、Type 1中の磁鉄鉱がカンラン石中に占める割合をX線CTによって計測した結果、SDW中央部で採取したC1, C2, D2でそれぞれ0.50, 0.43, 0.14 vol%であった。一方、SDW外縁部から採取したD4で磁鉄鉱の割合は0.03 vol%であった。[1,4]は分別作用により含水量がSDW中央部で増加することを示唆しており、今回得られたType 1の磁鉄鉱がカンラン石中に占める割合と、Type 1の各鉱物相の体積比はほとんど一定であることから、磁鉄鉱の割合に比例すると考えられる含水量[7]が中央部の方が外縁部より多いという結果は整合的である。つまり、SDW全体で考えれば、初生的なカンラン石中の水の量は中央部試料(C1)から推定した11-27 ppm[7]より低いと考えられる。よって、SDWの形成場所を沈み込み帯に求める必要はないと考えられる。 引用文献[1] Takahashi (1992) Nature, 359, 52-55 [2] Takazawa et al. (1999) J. Petrol., 40, 1827-1851[3] Akizawa et al. (2021) J. Geol. Soc. Japan, 127, 269-291[4] Arai et al. (2021) Lithos, 384–385, 105967 [5] Kitamura et al. (1987) Nature, 328, 143-145[6] Peslier et al. (2017) Space Sci. Rev., 212, 743-810 [7] Aketa et al. (2024) JpGU meeting abstract