2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Poster presentation

R7: Petrology, Mineralogy and Economic geology (Joint Session with Society of Resource Geology)

Fri. Sep 13, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R7-P-08] Fe-Ni-S-As minerals in the Imono peridotite body, Besshi area, Niihama city, Ehime prefecture.

「発表賞エントリー」

*Masato Kuniyoshi1, Satomi Enju1 (1. Ehime Univ.Sci and Eng.)

Keywords:Fe-Ni-S-As mineral, Serpentinite, Peridotite, Imono peridotite body

はじめに
 芋野岩体は愛媛県新居浜市の東赤石山南東地域の三波川変成帯に位置する超苦鉄質岩体であり,主にダナイトと蛇紋岩から構成されている(椚座,1984).芋野岩体のカンラン岩は椚座(1984)やTasaka et al.,(2008)によってカンラン岩の起源やカンラン石の動的再結晶について考察されているが,蛇紋岩や芋野岩体中の硫化鉱物及び金属鉱物の情報は少ない.カンラン岩や蛇紋岩中の硫化鉱物及び金属鉱物は岩体が経過した温度,圧力,酸化還元状態を推察する上で重要な要素となるため(北風, 1998;Klein and Bach, 2009),本研究では芋野岩体を構成するカンラン岩や蛇紋岩にみられた硫化鉱物や金属鉱物,砒化鉱物について記載するとともに,形成環境について推察を行う.
研究手法
 岩石試料採取は芋野岩体東部の露頭で行い,4地点に分けて採取した.採取した試料はRIGAKU製Ultima Ⅳを用いたX 線回折(XRD)実験による分析の他,偏光顕微鏡観察,Oxford製エネルギー分散型 X線分析装置(EDS)を搭載したJEOL製走査型電子顕微鏡(SEM)JSM-6510LVを用いて組織観察や各鉱物の化学分析及び同定を行った.
観察結果
 芋野岩体は主に部分的に蛇紋岩化した塊状カンラン岩から構成されており,一部ではほぼ完全に蛇紋岩化した蛇紋岩もまた,蛇紋岩は塊状のものと片状のものがみられた.
 カンラン岩中のカンラン石の粒径はむらがあり数百μm~2 mm程度の粗粒な結晶と,数十μmのやや細粒な結晶が, それぞれ集合をなし混在していた. 蛇紋岩中のものは変質しているためもとの粒形がわかりづらいが, 最も大きな部分はカンラン岩の粗粒部と類似していた.カンラン石の組成は一つの薄片内でも幅があるものの, 蛇紋岩中のもの(平均Mg# 89.59)の方がカンラン岩中のもの(平均Mg# 92.52)に比べFeに富んでいた.蛇紋石の種類は両方ともアンチゴライトが主であるが,少量のリザーダイトもみられる.蛇紋石は短冊状のアンチゴライトと,間を埋めるような細粒部からなる.蛇紋石のFeの含有量には幅があり(Mg#= 92.58~98.50),両岩で差は認められない.また,AlやCrをほとんど含まず,最大でもAl 0.80 wt%,Cr 0.60 wt%である.炭酸塩鉱物は,両岩ともにブルグナテライトがみられ,カンラン岩のみにハイドロタルサイトグループ鉱物がみられた.
 両岩ともにペントランド鉱((Fe,Ni)9S8)とアワルワ鉱(Ni3Fe)の共生組織が普遍的に存在する.この共生組織は蛇紋石脈中の磁鉄鉱に伴ってみられ,蛇紋岩ではクロンステッドタイト様鉱物が接する組織もみられた.ペントランド鉱は粒径5 µm以上の粒子であるが,アワルワ鉱は1µm以下の粒子の集合体として産する.ペントランド鉱はCoを含まないものから2.08wt%~12.17wt%程のCoを固溶するものまで幅がみられた.アワルワ鉱は両岩の蛇紋石脈内部に単独でもみられ,カンラン岩ではオルセル鉱(Ni5−xAs2 (x = 0.23))を置換する組織もみられた.オルセル鉱は微量のSbを含み,カンラン岩では蛇紋石脈中でしばしば観察され,蛇紋岩では磁鉄鉱内部で非常に細粒な結晶として稀にみられた.他にも蛇紋岩ではシャンド鉱((Ni,Fe)3Pb2S2)や自然銅が磁鉄鉱に伴い産出し,カンラン岩ではごくまれに蛇紋石脈中に硫砒鉄鉱 (FeAsS)が,クロム鉄鉱中に重晶石がみられた.
考察
 磁鉄鉱とアワルワ鉱,ペントランド鉱の共生組織からは,ペントランド鉱が最初に晶出あるいはアワルワ鉱とほぼ同時に晶出したのちに,磁鉄鉱がペントランド鉱とアワルワ鉱を囲むようにして晶出したと考えられる.また,ペントランド鉱とアワルワ鉱は還元的な条件で晶出する事,クロンステッドタイトはアワルワ鉱よりも酸化的な条件で晶出する事から,蛇紋岩でみられた磁鉄鉱,ペントランド鉱,アワルワ鉱,クロンステッドタイト様鉱物の共生組織の形成時には,より酸化的な条件へと酸化還元状態が変化していたと考えられる.芋野岩体の半径7 km以内に位置する超苦鉄質岩体である東赤石岩体や藤原岩体でも,アワルワ鉱やヒーズルウッド鉱,テオフラスタイトが産し(曽田ほか,2016;Arai et al., 2020),岩体の形成後に酸化的条件へ遷移したと推察されており, 本産地も同様の環境変化が起こったと考えられる.
 また、芋野岩体ではAsやSb,Baを含む砒化鉱物や硫酸塩鉱物がみられるが,藤原岩体においてAsやSb,Ba等の元素がスラブ由来の流体から供給された可能性について考察されており(Arai et al., 2020),芋野岩体でもスラブ由来の流体からの元素供給が起きたと考えられる.
R7-P-08