第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 腫瘍

2023年9月16日(土) 15:50 〜 16:40 D会場 (431講義室(4号館3F))

座長:工藤 保誠(徳大 院医歯薬 口腔生命)

16:00 〜 16:10

[O1-D-PM1-02] 神経ペプチド受容体VIPR2の二量体化の機能的意義

〇浅野 智志1、小野 亜美1,2、吾郷 由希夫1 (1. 広大 院医 細胞分子薬理、2. 広大 院医 矯正)

キーワード:GPCR、二量体、神経ペプチド受容体

血管作動性腸管ペプチド(VIP)受容体2(VIPR2)は、クラスBのGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。いくつかのGPCRはホモ二量体を形成することが報告されている。二量体GPCRは単量体とは異なる特性を持つ可能性があるが、生体において顕在的に二量体化している場合、一般に生理的条件では単量体に戻すことが困難であるため、単量体との機能的な違いの詳細は不明であることが多い。我々は最近、VIP-VIPR2シグナルが乳癌細胞の遊走や増殖に関与していることを明らかにした(Front Oncol 2022; Peptides 2023)。本研究では、VIPR2の二量体・多量体化を阻害する新たな方法を開発し、乳癌細胞遊走・転移、増殖における二量体の機能的意義について検討した。VIPR2の二量体化に必要なドメインを同定するため、いくつかの切断変異体を作製し解析したところ、VIPR2の膜貫通領域3~4(TM3-4)が完全長VIPR2と結合することを見いだし、VIPR2同士がTM3-4領域を介して結合することが示唆された。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)とプルダウンアッセイによる解析の結果、TM3-4ペプチドを発現させた細胞では、VIPR2同士の結合が抑制されることが明らかになった。また本ペプチドを安定発現する乳癌細胞では、増殖能や遊走能が低下し、リンパ節転移も抑制された。さらに、TM3-4ペプチドの発現はVIPR2とVIPやGαiとの親和性を低下させた。以上の結果は、TM3-4ペプチドなど、ホモ二量体形成に必須の領域に結合して競合阻害するペプチドがGPCRの二量体化を解除できることを示しており、GPCR研究の新たな発展に資する有力なツールとなる可能性を示唆するものである。また二量体VIPR2が、VIPによる癌細胞増殖や転移(遊走)を効果的に促進させる最小機能単位であると考えられた。