[P1-3-27] ラット口腔粘膜へのメントール滴下が疼痛関連行動に与える作用の解析
キーワード:メントール、TRPM8、鎮痛
メントールの鎮痛作用は医薬品に利用されているが、高濃度では疼痛を引き起こすとの報告もある。メントールは冷刺激受容イオンチャネルであるTRPM8を活性化させ、生理機能を発揮することから、種々の濃度のメントールによるTRPM8活性化が疼痛関連行動に与える影響を解析した。実験には300~500gの野生型Wistar系雄性ラットを使用した。ラットの下顎口腔前庭部に刺激溶液を滴下し、疼痛関連行動である顔面ラビング時間を5分間測定した。滴下溶液として、メントール、AITC、カプサイシンを1%DMSO に溶解して使用した。メントールの鎮痛作用を調べるために、メントールとカプサイシン、又はAITCを同時に滴下した。メントールはTRPA1も活性化するため、TRPA1ノックアウト雄性ラットを用いて同様の実験を行った。野生型ラットへの低濃度メントール(10, 100 mM)滴下では、ラビング時間の有意な変化は認められなかった。低濃度メントールと100 μMカプサイシン同時滴下により、カプサイシンによるラビング時間が有意に抑制されたが、100 mM AITCとの同時滴下では抑制が認められなかった。これは、低濃度メントールによるTRPM8の活性化がTRPV1を介した疼痛を抑制したことを示唆している。一方、高濃度メントール(1 M)を滴下すると、対照群と比較してラビング時間の有意な延長が認められた。TRPA1ノックアウトラットに高濃度メントールを滴下すると、野生型と比較してラビングに有意差は認められなかったことから、高濃度メントールはTRPM8の活性化を介して疼痛関連行動を誘発する可能性が示唆された。以上の結果から、高濃度および低濃度メントールは、TRPM8の活性化を介して、それぞれ疼痛誘発作用および鎮痛作用を示す可能性が示唆された。