第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P1-3-33] マウス上皮機能におけるストア作動性Ca2+ 流入の減少が及ぼす影響

〇用松 果歩1、春山 直人1、宮崎 佳奈子1、高橋 一郎1 (1. 九大 院歯 矯正)

キーワード:ストア作動性カルシウム流入、皮膚、バリア機能

【目的】近年、細胞内Ca2+ 濃度調整機構であるストア作動性Ca2+ 流入 (SOCE) に関連したSTIM遺伝子の異常が、外胚葉異形成症の新たな原因であると考えられている。本研究の目的は、マウス上皮におけるStimの機能を解析することで、皮膚におけるSOCEの役割を解明することである。【方法】8週齢 (雌性) のStim1/Stim2両遺伝子を上皮特異的に欠失させたStim1/2K14Cre マウスを実験群、Stim1/2fl/flマウスを対照群として用いた。尾部からケラチノサイト (KC) を単離し、両群のStim1、Stim2のタンパク発現量をWestern blotting法 (WB) で比較した。皮膚組織を用い、H-E染色にて組織学的解析を行い、蛍光免疫組織化学法 (IHC) でStim1/2の局在を確認した。実験群のKCにおけるSOCEの変化を、蛍光カルシウム指示薬Fura2を付加後、分光分析装置にて確認した。両群皮膚組織における遺伝子発現量を定量的PCR法 (qPCR) で確認を行った。さらにマウス背部皮膚における経皮水分蒸散量 (TEWL) を測定した。【結果と考察】WBおよびIHCの結果、表皮におけるStim1/2の発現は対照群と比較して実験群で有意に低下し、実験群由来のKCでは、小胞体内カルシウム枯渇後に見られるSOCEが有意に低下していた。IHCでは実験群の表皮におけるStim1の局在を示すシグナルの低下を認めたが、組織学的な構造の違いは認められなかった。qPCRの結果、実験群表皮においてFilaggrinとその分解酵素Asprv1が上昇し、炎症性サイトカインであるTslpCcl17が有意に上昇していた。さらに実験群マウスにおいてTEWLの有意な上昇を認めた。以上より、Stim分子はSOCEを変化させることで炎症に関与し、皮膚のバリア機能を変化させていることが推察された。