第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:ポスター発表

ポスター展示

2023年9月17日(日) 09:00 〜 18:00 ポスター会場 (131講義室(本館3F))

[P2-3-12] サッカリン水摂取時の線条体背側部と腹側部での異なるドーパミン分泌動態

〇吉澤 知彦1、舩橋 誠1 (1. 北大 院歯 口腔生理)

キーワード:ドーパミン、線条体、ファイバーフォトメトリー

大脳基底核線条体の背側部(DS)と腹側部(VS)はそれぞれ目的志向行動と動機づけといった認知機能に関与しており、DS・VSがこうした機能を獲得するためにはドーパミン(DA)の存在が重要である (e.g. Yoshizawa et al., bioRxiv, 2023)。解剖学的にはDSへ投射するDAニューロンは中脳黒質緻密部に主に存在する一方、VSには腹側被蓋野のDAニューロンが主に投射しておりDS・VSでのDA分泌動態の差異が考えられる。本研究の目的はサッカリン水摂取時のDS・VSでのDA分泌動態を計測しDS・VSへ伝達される報酬情報を精査することである。マウスのDS (N=6)あるいはVS (N=5)のニューロンにDAセンサーdLight1.1を発現させてファイバーフォトメトリー法を適用した。DSまたはVSでのDA分泌を計測しながら頭部固定下でマウスにオペラント課題を実施させた。各試行ではLED点灯後にマウスが水スパウトをリッキングすると報酬としてランダムにサッカリン水2 µLが0.1 s間隔で2滴連続して与えられた。報酬獲得後シグナル強度が最大になる時間はDSがVSよりも有意に短かった(median, DS: 0.49 s, VS: 0.90 s, p=0.043, Mann–Whitney U test)。シグナル強度が半分になる時間もDSがVSと比較して有意に短かった(DS: 0.30 s, VS: 0.75 s, p=0.026)。そのためDSではサッカリン水を1滴摂取する毎に一過性のDA分泌が生じる二峰性の分泌動態となった。VSでは1滴目のサッカリン水摂取時にDAが一過性に分泌された後、2滴目の摂取によってDA分泌量の加重が生じて単峰性の分泌動態となった。これらの結果は、獲得した報酬の「回数」と「容量」に関する情報がDS・VSそれぞれに伝達されることを示唆する。